国がプラットフォーム事業者に対して、クチコミ等の内容を法律で規制しようとすれば、表現の自由の保障に対する侵害や、検閲の禁止に抵触しかねないという問題が出てくる。そのため、国がクチコミを直接的に法律によって規制することや、プラットフォーム事業者に対して削除を義務づけることは極めて難しい。

もっとも、法律による義務づけはできないとしても、国もGoogleなどのプラットフォーム事業者が日本国内において活動する以上、一定の規律はあるべきだと考えている。具体的には、投稿された書き込みなどのコンテンツ投稿を、事業者で監視するモニタリング業務(これは「コンテンツモデレーション」といわれる)の在り方について、ルール作りが検討されている。

位置情報と店舗の情報がセットで表示されるGoogleマップは、私たちの生活の中に自然と浸透しており、民的サービスとして利用されている以上、サービスを提供しているGoogle側も、何らかの対策が必要ではなかろうか。

最近では、医師・歯科医師が、「Googleクチコミ被害者の会」を立ち上げてGoogleに対して裁判をすることで、問題意識を広げようという取り組みもされているようであるが、ハードルは決して低くない。

冷静に判断するきっかけになる「反論」

それでは、事業者はどのように自衛すればよいか。対策としては、ポジティブなクチコミを投稿してもらえるよう受付や会計時などに呼びかけたり、QRコードのポップを用意してその場でクチコミ投稿がしやすい状況を整える、といったことが一般的だ。ポジティブな投稿をしてくれる人を逃さず、その数を増やせば、ネガティブなクチコミで溢れて悪いイメージが固定化されてしまうというリスクを避けることができる。

強力なファンがついている場合、ネガティブなクチコミに対して自主的に反論をしてくれるケースも目にする。クチコミを書かれた事業者が、自分で反論をしている場合は、「攻撃的な人だ」といったネガティブな印象を与えてしまうおそれがあるが、利用者という第三者からの反論は、クチコミを見ているユーザーが冷静に物事を判断するきっかけになる。

クチコミを書かれること自体は止められず、削除も簡単にできない以上、自身・自社のファンを作るということが重要であるといえるだろう。

著者:清水 陽平