5月8日に出そろった5大総合商社の2023年度決算。資源市況下落の影響を受けたものの、円安効果や資産売却もあって全体としては高い利益水準を保った。

そのような中で目を引いたのは三井物産と住友商事の決算だ。三井物産は「業界の雄」である三菱商事を追い抜き、1999年度以来24年ぶりに純利益額で1位となった。一方の住友商事は対照的に巨額の減損を出した。

三井物産の2023年度の連結純利益は1兆636億円。三菱商事が堅持できなかった1兆円台に踏みとどまった。原料炭価格は下落したが、エネルギー事業の配当収入や資産除却債務取崩益、事業売却や円安が利益を下支えした格好だ。

「当期利益は2年連続で1兆円超えを達成した。統合的なリスク管理、既存事業の良質化につながる『ミドルゲーム』(中盤戦=事業育成)への注力など、さまざまな取り組みが一定以上のレベルで機能した結果実現した」。決算会見で堀健一社長はそう胸を張った。

物産の株主還元策では満足させられず

決算発表に併せて、三井物産は2024年度の配当予想を30円増額の200円(7月の株式2分割前のベース)とし、配当額の下限を150円から引き上げた。

さらに上限2000億円の自己株買いも実施すると発表。運転資金の増減などを除いた「基礎営業キャッシュフロー」に対する株主還元(配当と自己株買い)の比率である総還元性向目標を2023年度以降3年間累計で「40%超」に引き上げた(昨年5月公表時点では37%超)。

ただ市場関係者からみると、この株主還元策は満額回答とはいかなかったようだ。大和証券の永野雅幸シニアアナリストは、「総還元性向を引き上げたことは評価するが、40%を大きく超えることを期待したい」と話す。