――「親の介護は子どもの務め」だと思っていたら、そうじゃないんですね。介護のプロの言葉だけに信憑性があります。

川内さんがおっしゃるには、「子どもが自分で親を介護すると、親は甘えが出たり、依存したりするようになる。子どもも親が思うように動いてくれなくて、ついつい感情的になってケンカになってしまう」そうなんですね。

それを聞いて、自分もちょっと思い当たることがありました。以前、実家を片付けたときに、「これは要らないだろう」と母の物を捨てようとしたんですね。そしたら、ひどく怒られたことがあって。

母がリハビリ施設から自宅に戻って一人暮らしを再開したときも、部屋が散らかっていたので、きれいにお掃除したことがありました。誰かが来たらみっともないし、母も歩きにくくて危ないだろうと思って。

部屋に母がつまずいたら危なそうな収納ワゴンがあったので、それを別のところに移動したら、次にまた実家に帰ったときに元の位置に戻っていたんですよ(笑)。それには少々びっくりしました。

子どもからすると、「親にはきちんときれいに、快適に暮らしてほしい」「危なくないように過ごしてほしい」と思ってしまいますが、それはこちらの勝手な期待なんだなと。

快適かどうか、危ないかどうかは、生活している本人が見極めればいいこと。たまに来る人間が勝手にいじっちゃいけないんだって、よくよくわかりました。

親の介護が必要になったらすぐに外部の支援を

――親子の間でも、線引きが必要なんですね。そういう意味でも親の介護を自分でするのは難しいと。

川内さんは、「親の介護が必要になったら、最初の段階から外部のサービスに頼るべきだ」とおっしゃっていました。

「まだ症状が軽いから」と、子どもが親の介護を担ってしまうと、親はそれに慣れてしまって頼り続けてしまう可能性があるそうです。

老いがさらに進行して、子どもの手に負えなくなっても、親はそのまま子どもに面倒を見てもらいたいと思ってしまう。外部のサービスを受けたがらなくなってしまうと言います。

――柴田さんは、早い段階から介護のプロに相談していましたか。

はい。うちの場合は、父が病気になったときに、かかりつけのお医者さんから「こういう介護サービスがありますよ」と教えてもらったんですね。それから地域のケアマネジャーさんに介護の相談をするようになって、ずいぶんお世話になりました。

母の介護が必要になったときも、同じケアマネさんに相談できたのでスムーズでした。母の性格もうちの家庭環境もよく知っている方だったので、安心でしたね。