――柴田さんは、ご自身の人生の最期について考えることはありますか。

親の人生の終盤に向き合ううちに、私自身のことも自然に考えるようになりました。

母は、なんべん転んでも、病になっても、あきらめずに「私はこうしたい」という望みを持ち続けているんですね。

「おいしいお酒が飲みたい」「自分の大好きな家で暮らしたい」「ご近所さんや子どもたちと触れ合いたい」。そういう希望を常に自分で見つけて、それに向かって前向きに努力するんです。その姿は、自分の親ながらすごいなぁと感心させられます。

それに母は、お世話になった看護師さんや施設の職員さんに、いつもニコニコしながら、「ありがと、ありがと」って言っているんですね。私も晩年は周りの人たちに笑顔で「ありがと」って言える人になりたいです。

介護離職はせず、自分の幸せを最優先に

――柴田さんが笑顔を振りまく姿は、目に浮かびます。

そうですか? うれしいなぁ(笑)。

親って本当にありがたい存在ですよね。自分を育ててくれて、人としての生き方を教えてくれて、最後は「人生のしまい方」を見せてくれている。人はこうやって死んでいくんだってことを、身をもって教えてくれる、「生きるお手本」だと感じます。

――最後に、親の介護に不安を抱えている人に向けて、メッセージがありましたら。

もし親の介護が始まったら、絶対に一人で抱え込まないほうがいいです。どんな親であっても、子どもの幸せを願わない親はいないと思うので、まずは自分自身が幸せだと思う環境をちゃんとキープしておくべきです。

専門家の先生たちも言っていましたが、介護離職はおすすめできません。経済的にも、精神的にも追い詰められ、退職したことをあとで後悔する人も多いと聞きます。

介護はプロに任せて、家族はその後方からサポートをしていけばいい。まずは自分自身の人生を最優先になさるのが一番だと思います。

著者:伯耆原 良子