男性シングルは親族との関係が希薄であるが、女性シングルは「ひとり暮らしに伴う経済的不安、孤独、犯罪に巻き込まれる不安、病気の不安を男性以上に感じやすい分、親やきょうだいと頻繁に連絡をとって、結婚によって築く親密圏に代わる親子関係を軸とする親密圏を築いています。」(前掲書、156頁)。

おそらくリスクに対する不安が男性よりも強いせいで、女性のほうが「家族に代わる多様な生活共同体(別居パートナー、コレクティブハウス、シェアハウスなど)」(前掲書、156頁)の形成についても、あるいは「趣味やレジャーで会う人や同窓生などの“柔らかい紐帯”を“固い紐帯”と共に築いている人が男性より明らかに多いといえます。」(前掲書、156頁)。

男性は親族のみならず仕事以外の友人・知人とのネットワーク形成にも未成熟である。だから、高齢期に病気になった場合にもケアマネージャーや行政に優先的に頼ろうとする。「日ごろから頼ることのできる家族的関係や友人知人関係を作っていない結果といえるでしょう。(……)ミドル期シングルの環境は、非家族的親密圏も中間圏も広く形成されている状態にはなく、孤立化するリスクを抱えているといえます。」(前掲書、157頁)その通りだと思う。

シングルたちはどう生きるか

親はいずれ死ぬ。きょうだいとの縁も薄くなる。仕事も退職する。そのあとにシングルたちはどうやって生きるのか。ただ「生きる」のではない。一人の市民として、尊厳を以てどうやって生きるのか。

本書では「ハンカーダウン(hunker down)」という言葉が使われているが、これは人々が「より私的な空間に閉じこもり、他者への信頼度が下がり、なるべくかかわらないようにしている」状態を意味するのだそうである。「引きこもり」である。要するに地域コミュニティにコミットしない状態のことである。もともと日本では地縁共同体が衰退しているうえに、「都会のミドル期シングルはあまり地域での関係を持つことに積極的ではない」(前掲書、162頁)。

しかし、地域コミュニティへのコミットメントは「孤立化」を防ぐ最も効果的な手立てである。どのようにしてミドル期シングルに対して地域コミュニティとの関わりを持たせることができるのか。それが実践的な課題になるのだが、アンケートに回答したミドル期シングルの8割は地域活動に参加していない。