渋滞の際、前のクルマがやや流れ出しても車間を空けてゆっくり走るドライバーを見かけることがあります。これは「渋滞吸収運転」と呼ばれるひとつのテクニックである可能性もあります。

「渋滞吸収運転」という考え方がある。

 渋滞中、やけに車間を空けて走っているクルマを見かけることがあります。隣の車線が流れ出し、自車の前が空き始めても、一定の車間を空けてゆっくり走る行為――SNSなどでアップされた、そのような動画に対し「遅すぎる」などと非難する声もある一方、「それは『渋滞吸収運転』ではないか」と一定の理解を示す人もいるようです。

 渋滞吸収運転とは、自身もブレーキを踏まない、後続車にもブレーキを踏ませない運転です。渋滞は1台のブレーキが後続車へ伝播して発生するといわれ、車間が詰まっていれば、どんどんブレーキが踏まれ、全体の速度が落ちて渋滞を悪化させる場合があります。

 それを回避する最も大切な要素が、車間を十分に空けることです。

 この渋滞吸収運転は、東京大学の西成活裕教授とJAF、警察庁が行った実験でも効果が証明されています。渋滞吸収車の後から来たクルマは、車列の後方ほど速度が向上する結果が得られたとか。燃費アップや通過時間の短縮効果などがも確認されています。

 とはいえ、この運転を実際にやってみると、渋滞の程度によっても効果は異なってくることが分かります。停止時間の方が長いような詰まった場面では効果を発揮しようもありませんし、都内の教習所のインストラクターも「過度なノロノロ走行は全体の速度を下げてしまうことにもなる」といいます。

 それでも、割り込まれたくない思いで車間を詰めればブレーキを踏んでしまうことから、車間を空けていれば、対処がしやすいと話していました。

 また、東京都は2023年末から、渋滞を減らすための運転方法として、車間を広めに保持することや、早めの合図に加え、渋滞に入るときは早めにアクセルをオフし、抜けるときは速やかに加速するという「スローイン・ファストアウト」を提唱しています。渋滞の始めと終わりで余裕をもって状況に対処することが、全体の流れをよくすることにつながるのかもしれません。