有名人のライブだけでなく、列車にも発売と同時にほぼ売り切れるレアきっぷがあります。多くの人の憧れとなっている列車やその設備とは、どのようなものでしょうか。決して高額なだけではない点も見逃せません。

「時報打ち」でも取れない! プラチナすぎる鉄道きっぷとは

 かつて運行されていた寝台特急「トワイライトエクスプレス」の最上級設備「スイート」は、「プラチナチケット」と呼ばれていました。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は1度だけ乗ったことがありますが、東京駅の駅係員から「長年この仕事をしていますが、このきっぷは初めて見ました」といわれたほどの人気でした。
 
「幻」とまではいわなくとも、ある程度定期的に走っていながら、たいていは発売と同時に売り切れる列車の設備は現在もあります。今回はそうしたレア設備を取り上げていきましょう。

■東武鉄道 特急「スペーシアX」コックピットスイート
 浅草〜東武日光・鬼怒川温泉間を走る「スペーシアX」に1室だけある、1〜7人用個室です。設備名の通り運転席の後ろが個室になっており、10平方メートル程度の広さがあります。ソファが並び、3人用ソファは寝ころべるほどの長さ。1室1万8000円と高額ですが、一瞬で売り切れます。前面展望を楽しめる浅草行きがオススメです。

■えちごトキめき鉄道 観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」展望ハイデッキ
 新潟県のえちごトキめき鉄道を走る観光レストラン列車に1室だけ存在する、2〜4人用個室です。運転席の後ろにあり、前面展望、あるいは後方展望を楽しめます。側窓も屋根に回り込むほど大きく、床の位置も高いため、全方位の景色を楽しめる設備です。

 通常料金のほか1万5000円がかかり高額ですが、人気でほぼ売り切れています。

■JR東日本 特急「サフィール踊り子」グリーン個室
 東京・新宿〜伊豆急下田間を走る全車グリーン車の「サフィール踊り子」には、1〜4人個室と1〜6人個室が各4室設置されています。どちらも人気ですが、特に6人用個室は海向きにソファが並び非常に解放感があり、オススメです。個室料金は4人用が1室1万4800円、6人用が1室2万2000円で、ほかに運賃と特急料金がかかります。

近鉄は格安で豪華設備を堪能できる

■JR東海・西日本 寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」B個室寝台サンライズツイン
 東京〜高松・出雲市間を結ぶ寝台特急の2人用B個室寝台です。階下の広いツインルームで、1列車に4室しかないため人気があります。利用するには1室1万5400円+運賃+特急料金が必要で、1人で使う場合は2人分の特急料金が必要です。

 なお、1列車に6室しかない1人用A個室寝台「シングルデラックス」も非常に人気があります。こちらは1室1万3980円です。どちらも運賃と特急料金が別に発生します。

■近畿日本鉄道 観光特急「しまかぜ」洋風個室/和風個室
 大阪難波・近鉄名古屋・京都と、三重県の賢島とを結ぶ豪華特急です。窓向きにL字形ソファを備えた3〜4人用「洋風個室」と、掘りごたつに座椅子の3〜4人用「和風個室」が各1室あります。個室料金が1050円と格安のため、10時30分の発売と同時に売り切れます。

 筆者はどちらも乗りましたが、座席は洋風個室、高級感は和風個室に軍配が上がります。

■近畿日本鉄道 観光特急「あをによし」サロンシート
 大阪難波・近鉄奈良〜京都間を走る観光特急です。3〜4人用の簡易個室「サロンシート」は、側窓が鉄道車両で最大級に大きく、高級感と解放感を両立した空間です。所要時間34分の京都⇔近鉄奈良でもなかなか予約できませんが、1時間以上乗車できる大阪難波⇔京都の第1便・第7便はプラチナチケットで、駅窓口での「10時30分打ち」が必要と感じます。

 運賃+特急料金+特別車両料金210円で利用できるので、設備と比して格安もあります。

1両まるごと個室!?

■JR西日本 長距離特急「WEST EXPRESS 銀河」プレミアルーム
 京都〜出雲市・新宮間など、季節ごとに走る場所を変える長距離特急です。列車によっては夜行運転も行います。設備としては「寝られる」普通車指定席と、グリーン車という扱いが大半です(座席の普通車指定席もあり)。

 特に人気なのは、側扉のついた完全個室であるグリーン個室「プレミアルーム」で、1人用1室と2人用4室あります。どちらも人気ですが、特に1室しかない1人用はまさに“プレミアルーム”で、発売と同時の「10時打ち」をしたとしても予約できないことの方が多いです。

 グリーン個室料金は京都〜出雲市間で8450円(1人分)で、ほかに運賃と特急料金がかかります。

 なお、3〜4人用半個室普通車指定席「ファミリーキャビン」は約5平方メートルあり、寝転がれます。3〜4人なら運賃+特急料金で利用でき、格安でしょう。ただし昼行便は2室、夜行便は1室しか設定がありません。「プレミアルーム」「ファミリーキャビン」はインターネット予約「e5489」では買えず、また事前予約もできないので、予約難易度はで全国有数です。

■JR四国 観光特急「伊予灘ものがたり」フィオーレスイート

 松山〜伊予大須・八幡浜間で運行される「伊予灘ものがたり」は、3号車がまるごと2〜8人用グリーン個室となっています。利用料金は運賃+特急料金+1室3万3600円と高額ですが、ほかにはない「1両独占」のプレミア感のため、非常に人気があります。

 個室内にはゆったりとしたソファが海側に並んでおり、車両幅と同じ広さのスペースを独占できます。前面展望も楽しめるなど、解放感に溢れた設備です。

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 以上、8列車を取り上げました。いずれの列車も予約する労力に見合うほど素晴らしい設備です。キャンセル待ちで予約できることもあるので、空席状況を随時チェックしつつ、プレミアムな時間を体験していただきたいと思います。