例年、大規模な水害を引き起こす台風シーズン。今年もついに突入となりそうです。

■“台風の卵”フィリピンで猛威

24日、フィリピン中部に位置するレイテ島で撮影された映像では、木々が激しく揺れ、大粒の雨が降っている様子が確認できます。

(撮影者)
『みなさん これが台風です!』 

25日現在、フィリピン付近を西北西へと移動している熱帯低気圧。まもなく台風1号に発達する見込みとなっており、来週には関東に近づく可能性もあります。“台風の卵”はすでに、フィリピン東部の多くの場所で、猛威を振るっていました。フィリピン大統領府直轄のラジオ局も大雨の様子を投稿。フィリピン北部・ルソン島の港では、少なくとも乗客3200人、船舶17隻が立ち往生したと、現地メディアが伝えています。

一方、今週梅雨入りした沖縄でも、梅雨前線による大雨で道路が冠水。茶色く濁っているため、どのくらいの深さなのかもわからない状況です。並んでいた車は次々と左側へ。やむを得ず、歩道を走り、冠水部分を避けようとしていました。熱帯低気圧が台風1号に発達した後も、日本列島に上陸する予報はないものの、日本に警報級の大雨をもたらす可能性が高くなっています。その理由は台風と梅雨前線の同時発生です。

(荒嶋恵里子 気象予報士)
『台風の北上に伴って暖かく湿った空気が列島にどんどん流れ込むと、梅雨前線の活動が活発になるため、線状降水帯が発生する恐れがあります』

懸念されるのは、去年6月の台風2号と状況が似ていることです。この時は6人が死亡し、1万棟以上の住家被害が出ました。台風2号も日本列島には上陸しなかったものの、本州付近には梅雨前線が停滞していました。この梅雨前線へ、台風から非常に暖かく湿った空気が流れ込み、梅雨前線の活動が活発化。その結果、線状降水帯が6つの県で合計11回も発生するという、異例の事態となりました。九州から関東にかけて広範囲で豪雨となり、72時間雨量が500mmを超えた地点も出ています。

(荒嶋恵里子 気象予報士)
『去年6月の台風2号は、台風1号に発達する見込みの熱帯低気圧と進路が似ています。さらに日本列島に梅雨前線が伸びているという条件も似ているため、同じくらいの影響が出る恐れも考えられます』

最新の予報でも、暖かく湿った空気が、熱帯低気圧のある南側から、梅雨前線が停滞する日本付近へ流れ込む見通しとなっています。

■線状降水帯 変わる予測情報

気になるのは、どこで線状降水帯が発生するのか?です。サタデーステーションが向かったのは、気象庁。

(仁科健吾アナウンサー)
『ありました、「気象防災オペレーションルーム」と書かれています。結構広々としているんですね。そして今まさに、天気図などの映し出されたモニターをじっくりとみなさんが見ながら、作業を進めています』

日本の天気予報の中枢では、まさに来週から線状降水帯の予測が変わろうとしていました。

(気象庁 気象リスク対策課 橋本徹 地域気象防災推進官)
『これが今回新たに活用する技術になります』

従来の手法で出された予報と新たな手法で出された予報です。同じ時間帯を予測したものですが、比較すると、予想降水量やその範囲が大きく異なります。

Qどういった違いがある?
『より細かな計算を行うと、地形の効果を考慮することができるようになるため、より強い雨を精度よく予測することができるようになる』

これまでの予測の最小単位は5キロ四方でした。しかし、今後は、2キロ四方にまできめ細かく予測することが可能になると言います。気象庁はこれまで、線状降水帯が発生するおそれが高まった場合は、発生の半日前に、「東海地方」「四国地方」といった、地方単位で警戒を呼びかけていました。しかし今後は、「愛知県」「静岡県」など、都道府県単位での呼びかけが可能になります。

(気象庁 気象リスク対策課 橋本徹 地域気象防災推進官)
『絞り込んで情報を出すことで、住民の方に“我が事感”を持っていただいて、より適切な避難行動に繋げていただくことができるのではないかと考えています』

線状降水帯は、海から水蒸気を多く含む暖かい空気が運ばれ、激しい雨を降らせる積乱雲が連続して発生、それらが帯のように連なることで生まれますが、メカニズムは未解明な点も多く、発生を予想することが難しい事象です。その線状降水帯の予測精度向上に貢献したのが、今年3月から運用を開始した、次世代のスーパーコンピュータです。去年導入された、線状降水帯の予測に特化したスパコンと合わせ、従来のおよそ4倍の計算能力になると言います。予測の運用が切り替わるのは28日から。ちょうど、線状降水帯の発生に警戒が必要な日と重なっています。

(気象庁 気象リスク対策課 橋本徹 地域気象防災推進官)
『九州など、西日本を中心に線状降水帯が発生するおそれがあり、警戒が必要です』

■アンダーパス冠水対策に“エアー遮断機”

自治体による豪雨対策も急ピッチで進んでいます。去年9月、台風13号による豪雨で、市役所の地下が浸水した茨城県日立市では、庁舎前の川底を深くして、高さ1.5mの堤防を設置することを検討しています。

冠水被害が起きやすく、度々、死亡事故も発生しているアンダーパス。ここでも、未然に防ぐ対策が始まっています。サタデーステーションが向かったのは静岡市。

(藤澤愛ディレクター)
『こちらのアンダーパスには、冠水を感知し、自動で通行止めにするシステムが設置されています』

一見すると、何も変わったところはありません。しかし、アンダーパス内の水位が上がってくると、即座にセンサーが感知。格納BOXからバルーンが飛び出し、20秒ほどで膨らみ、いち早く通行止めを知らせます。メーカによれば、ここ数年で全国の自治体から設置の要請が相次いでいるといいます。去年この場所に設置した静岡市の担当者は…

(静岡市道路保全課 小松正人 課長補佐)
『令和4年(2022年)9月の台風15号の雨で、深夜、通行止め水位を超えたため、現地の電光掲示板で車両通行止めを周知しました。冠水している状態に気付かず侵入した車2台が水没したことから、「エアー遮断機」を設置しました』

現場に職員が到着する前に通行止めにできるため、迅速な対応が可能になったといいます。

(荒嶋恵里子 気象予報士)
『台風1号の発生が5月下旬まで遅くなったというのも特徴のひとつ。これは比較的珍しく、統計史上7番目の遅さです。遅れた年は今後、ハイペースで台風が発生する傾向があります。1号の発生が7月にずれ込んだ2016年は週1ペースを上回る台風発生となり、8月には4つ連続で上陸しています。今年の台風シーズンも油断はできません』