神戸で行われている世界パラ陸上は大会最終日を迎えました。
この日はトラックに近いS席が完売するなど会場は熱気に包まれました。

午前中に行われたのは東京パラで金メダルを獲得した佐藤友祈(34)の「得意種目」1500m。
前回大会でも金メダルを獲得した佐藤。
100m・400mと今大会すでに2冠のベルギーマキシムを「ぶち倒す」、この意気込みで臨みました。
スピードのあるマキシムが相手ということで先にマキシムに行かせて佐藤は最後で捉えるという戦法を考えていましたが。
マキシムはスタート後から佐藤の後ろにぴったりくっつきます。
レースが中盤に差し掛かったあたりで佐藤がスピードをゆるめ走路をあけ、マキシムに前に行くように促すも後ろについてきます。
「拍子抜けしました」と話した佐藤、終始引っ張る状況となってしまい体力を消耗。
最後マキシムがスパートをかけたとき佐藤には体力が残っていませんでした。
マキシムはこれで3冠獲得。
“元王者”となってしまった佐藤、大会前には競技用車いすが破損するアクシデントもありました。
「今用意できる自分の最高の準備はできた。応援してくれていた人たちに対しては金メダルを見せることができず申し訳ないが、ここまで何も問題も起きずに金メダルをとり続けていた。今回の負けは負けとしてしっかり受け止めて、パリパラリンピックではマキシムに土をつけたいなと思います。」と改めてパリでのリベンジを誓いました。

同日に行われたメダリストセレモニー後は家族との時間。
長男が佐藤を見つけると駆け寄り抱き着く場面も。
自身の膝の上に乗せ一緒にメダルをかける佐藤は父親の顔をしていました。

そして佐藤は今大会日本勢唯一の3つのメダルを獲得。
銀2つ、銅1つのメダルをかけた佐藤はマキシムのもとへ。
マキシムと握手し写真撮影しようとしたところ、マキシムは佐藤の3つのメダルを見て自身のバッグをあさります。
なんとその場で獲得した3つのメダルを出しました。
これを見た佐藤は「金メダル3つだよ…」と悔しそうなリアクション。
王者奪還への戦いが始まりました。

脳性まひのクラス円盤投げでは地元兵庫県出身の新保大和(23)が銅メダルを獲得。
自身初となる主要国際大会でのメダルとなりました。

そして、今大会の最終種目となったのが下肢障がいのクラス200m。
この種目、予選に3選手出場し、大島健吾(24)と田巻佑真(22)の若い2人が決勝に進出しました。
大島は良いスタートをきると中盤加速。
残り50m地点ではトップを走っていました。
「中盤から終盤にかけての伸びが足りなかった」と語った大島は3着でゴール。
その後、上位の選手に失格者が出たため繰り上がり銀メダルを獲得、
この結果パリパラリンピックの内定となりました。
大島は今大会を振り返り、「まだ世界と戦う上では足りないものがある。ただ、今大会多くの人にパラ陸上を現地で見てもらえた。今日も最後まで残ってくれて大きな声援の中で銀メダルを獲れたのは素直に嬉しかった」と感謝の気持ちを述べました。

また、一緒に走った田巻は7位も初めて世界の決勝の舞台に立ちました。
インタビューにも「初めてで緊張します」と初々しい姿を見せてくれました。
予選でアクシデントがあったもののこのクラスを引っ張ってきた井谷俊介、そして銀メダルの大島とお手本が近くにいる環境。
「まずは井谷選手、大島選手に追いつく気持ちで頑張りたいと思います」と決意を口にしました。

今大会日本は過去最多66人が出場しました。
フルエントリーの種目が増えたり、日本選手団ではただ1人、低身長のクラスでは山手勇一(25)が出場。
8位に入賞するなど様々な障がいを持つ選手たちが世界パラ陸上の舞台に立ちました。

メダルは銀メダルが9個、銅メダルが12個合計21個を獲得。
前回大会の11個より10個多い結果となりました。
一方金メダルは前回4個だったのに対して今大会は0。
パリパラリンピックに向けて日本全体の底上げを感じましたが、世界のレベルも上がっていることがわかる大会となりました。

〔今大会日本勢のメダル〕
金:0
銀:9
銅:12

※この映像にはナレーションはありません。ご了承ください。