日本を訪れる外国人たちを空港で勝手に出迎え、アポなしインタビュー! そのまま密着取材を行う「YOUは何しに日本へ?」(月曜夜6時25分〜)。今回のテーマは、「メンタル強メンなウーメンの勝負麺!YOUの人生を変える本場の麺SP」。麺に縁のあるYOUが続々登場する90分で、はたしてどんな面白YOUに出会えるのか?

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空港で「僕の奥さん、北朝鮮から来た人なんですけど面白くないですか?」と声をかけられ話を聞いたのは、韓国から来たヨンヒさん(33歳)と、日本人のご主人・勝又成さん(34歳)。ヨンヒさんは、祖国の北朝鮮から6年ほど前に脱北した…という衝撃の過去を持つ。川を泳いで中国に渡り、一度は捕まりながらも28時間後になぜか釈放され、奇跡的に脱北に成功した。北朝鮮→中国→ラオス→韓国というルートによる、4カ月間の孤独な逃亡劇だった。

【動画】韓国ドラマを観た罪で知人が…脱北を決意したYOUが日本で北朝鮮料理店を開くまで

韓国ではソウルの北朝鮮料理店(実母の店)で働いていたヨンヒさんだが、今回は日本で店を出すために来日した。レシピはもちろん、すべて手作り主義の母の直伝。成さんは、「彼女たち家族の生き様が全部詰まった店。新しいスタートになった店なので、ちゃんとした本場の味が楽しめる店にしていきたい」と夢を語る。北朝鮮料理店のオープンにぜひ立ち会いたいとお願いすると、快諾してもらえたので密着決定! 日本での生活が落ち着いた頃、再会を約束した。

それから半年後、自宅にお邪魔すると、2歳の息子さんも歓迎してくれた。ヨンヒさんは3カ月前に在留カードを取得し、家族3人で幸せに暮らしている。
さっそく車で千葉県稲毛に開店する新店舗『ソルヌン』へ。日本語にすると縁起の良い『正月の雪』という意味で、本場の北朝鮮料理と韓国焼肉が楽しめる。5日ほど前に内装が完成したばかりの店内には客席が24席ある。木目をたくさん取り入れたデザインは、すべてヨンヒさんのこだわりだ。開店資金は2000万を超え、家族や親戚から借金をしたからがんばるしかない、と話す。ヨンヒさんの実母(59歳)も同じく脱北し、ソウルで料理店をオープンした。夫婦はそんな母の元で、秘伝のレシピを3年間修業。例えば冷麺のスープは調味料を使わず、たっぷりの牛スネ肉から抽出した旨みでコトコト出汁をとるのがオモニ流だ。

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店の看板メニュー「平壌冷麺」(1,200円)は、北朝鮮式のそば粉で作る本場の味だ(韓国冷麺は、いものでんぷん)。麺は、牛スネ肉や野菜でとったスープに浸していただく。ちなみに冷麺の発祥は150年以上も前の平壌で、韓国に伝わったのは1950年以降といわれている(諸説あり)。

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一方、北朝鮮版サムゲタンの出汁は、“漢方の木”からとるそうだ。鶏肉や木を3日間じっくり煮込み、スープに使った出汁とり用の鶏肉は、このサムゲタンに似た北朝鮮オリジナル料理「平壌温飯(おんばん)」の具材としても利用する。この温飯は冷麺同様、北朝鮮の代表的な伝統料理で、一般家庭でも結婚式でも食べられる万能飯だ。

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とにかく笑顔で明るいヨンヒさんだが、なぜ故郷から脱北しようと考えたのか。

2010年、父・ウィユンさんが他界する2週間前、家族で撮影したという唯一の写真を見せてくれた。北朝鮮での日常生活について聞くと、浴室にバスタブはなく、冷たい水のシャワーのみだと教えてくれた。電気がつくのも朝の2時間、夜は5時間のみ。食料も少なく、ヨンヒさんが幼い頃には大飢饉も発生し、数百万人が亡くなったそうだ。
そんな過酷な生活に苦しむ中、さらに痛ましい出来事が…。中学時代の友だちのお母さんが、韓国ドラマを観た罪で公開処刑されることになったのだ。見なければならなかったが、ヨンヒさんは目を開けられず、その後恐怖で3日ほど眠れなかった。

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そんなこともきっかけとなり、2017年に脱北を決意。しかし家族全員で捕まることを恐れ、たった1人で国境の川を泳いで渡り、飲まず食わずで山道を40時間以上歩き続けた。水が飲みたくても川は軍隊だらけ、食料はなく飢餓感で死を覚悟するほどだったという。そして時にはトラックの土砂に紛れて移動しながら5000㎞以上を南下し、最後はラオスの韓国大使館に助けを求めた。そこから飛行機で韓国のインチョン空港に向かったが、万一北朝鮮へ向かっていたら…と思うと疲れているのに眠れなかったそうだ。

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その後、母と弟も脱北に成功。こうして家族でたどり着いた韓国・ソウルで、知人と行った焼肉店で働く成さんと運命の出会いを果たすことに。成さんは、「ヨンヒの笑顔が好き。ヨンヒが笑っているのを見ると、『ああ、良かったなぁ』って思います。自分の(脱北の)苦労や大変だったことを表に出さない。尊敬もするし、『できることはやってあげたい』という気持ちにさせてくれる」と語る。そんな2人は出会いからわずか100日後、成さんからプロポーズして結ばれた。

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開店目前の3日間は、朝9時から深夜2時まで仕込みが続く。たくさんの人に食べてもらいたいと、値段を抑えるため当分は2人で切り盛りする予定だ。ただ広告はSNSのみでチラシなどを配っておらず、集客がちょっと心配…。

ついに3月22日のオープン当日。朝9時、「ドキドキで爆発しそうです」と不安MAXのヨンヒさんが店に到着した。厨房では成さんが「味がしない」など、ジョークで妻をリラックスさせつつ、「ヨンヒの家族の思いと歴史が詰まっているので、いろんな方に食べていただきたい」と想いを語る。スープの味に納得したところで、いよいよ開店5分前!

すると、店外にはもう人が並んでいた。ヨンヒさんはお客さんに声をかけ、少し早めながら案内した。青森からわざわざ来店した方に話を聞くと、X(旧Twitter)でオープンを知り、ぜひ本場の冷麺を食べたくてやって来たという。食べてみると、「出汁がきいてますね。口の中にお肉の出汁がフワ〜っと広がって食べやすいです」と高評価。気づけば店内は満席、ランチ営業は「平壌冷麺」が大人気だ。

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さて夜営業は…? 夜限定メニューの韓国焼肉・地元千葉県産の豚肉と牛肉の炭火焼きなどが大好評。200gで1,500円の大きな「デジカルビ」にも「美味しそー」と注目が集まる。シメには「平壌温飯」や「ユッケジャン」(1,200円)も大人気! ヨンヒさんは「いつでも行けるような温かい店、お客さんとも仲のいい、そんな店にしたい」と夢を語った。初日の来客数は57人。オープン早々に大忙しだったが、お客さんが帰りにエールを贈ってくれたのが力になったようだ。密着はここまで!

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密着終了後、なんとご夫婦揃って番組スタジオに平壌冷麺を届けに来てくれた! バナナマンもこれまで食べたことのない味と極細麺に「ちょっと美味すぎるって!」と舌鼓。お店は大忙しで順調だそうだ。ヨンヒさん、成さん、これからも商売繁盛でがんばってくださいね〜!