無料地図アプリのなかで圧倒的なシェアを持つのは「Google(グーグル)マップ」ですが、カーナビ用としては「Yahoo!カーナビ」も人気アプリのひとつです。そんなYahoo!カーナビに登場した新しいプラン「Yahoo!カーナビプラス」はどんなサービスが追加されるのでしょうか。月額250円の価値はあるのでしょうか。

取締り情報に経由地10カ所設定や広告非表示をプラス

 無料カーナビアプリの中で高い人気を集めているものといえば、「Yahoo!カーナビ」もそのひとつです。

 このアプリが人気を集める秘密は、日本で生まれたナビアプリだけに、日本の道路事情に合わせて最適化したルートガイドを実現していることでしょう。

 走行中は交通規制や渋滞などを考慮した最適ルートを案内するだけでなく、車線ガイドや速度規制、一時停止などの標識を表示し、オービスの位置を知らせてもくれます。しかもこれらが無料で使えるのですから、人気が出るのも頷けます。

 そんな中で、2023年12月13日に登場した新しいプランが「Yahoo!カーナビプラス」です。

 これは月額250円(初回のみ1週間無料)を支払うことで、「スピード注意情報プラス」「経由地10カ所設定(無料版は5カ所)」「自車アイコン」「バナー広告非表示」を4機能まとめたお得なオプション機能となっています。

 その中で、もっとも利用者の関心を呼びそうなのが「スピード注意情報プラス」でしょう。

 じつはYahoo!カーナビでは、これまでもこのサービスを単独の有料サービスとして提供していました。

 出没不詳と言われる「移動式オービス」を含む速度取締り情報、さらには検問(一時停止違反、進路変更禁止違反など)している場所などを、地図画面のアイコン表示と音声でドライバーに知らせるものとして提供してきたのです。

 間違ってはいけないのは、この機能はレーダー探知機のように、オービスやレーダー等を「探知」して知らせるものではないということです。

 これはネット上で投稿された情報をもとに、取り締まりポイントを地図上に反映するものとなっています。

 その情報源は「オービスガイド(全国オービス情報サイト)」を開発した「パソヤ」で、同社のサーバーにアップされた情報をリアルタイムで「スピード注意情報プラス」に提供することで機能は成り立っているのです。

 固定式オービスなら、あらかじめデータさえ整備すればアプリ上に反映できます。しかし、取締り情報は各都道府県警でおおよその内容が公表されるものの、詳細な場所や時刻までは不明なまま。したがって、移動式オービスや検問といった不特定の場所で不定期に行われる取り締まりに対しては、情報をリアルタイムでその都度更新することが欠かせません。

「スピード注意情報プラス」は、その情報を投稿ベースとして反映することで取締り情報の表示を実現したものなのです。

 ただ、「スピード注意情報プラス」だけを有料としたプランでは、思うように利用者は増えなかったようです。そこで、そのプランのテコ入れ策として「経由地10カ所設定」「自車アイコン」「バナー広告非表示」を加え、お得感を出して利用者数アップを狙っているのではないかと推察されます。

 なので、利用者がもっとも気になりそうな「スピード注意情報プラス」は従来と違いはないと考えていいようです。

 事実、「スピード注意情報プラス」情報提供元である「パソヤ」の大須賀克巳さんに話を聞くと、「表示内容は、可搬式速度違反自動取締装置(移動式オービス)や、警察官がレーダーなどで速度を測定し取り締まる定置式速度取締り、さらには検問(一時停止違反、進路変更禁止違反など)となっており、Yahoo!カーナビプラスで提供されている内容は従来と違いがない」と説明してくれました。

 では、その情報の信憑性はどうなのでしょうか。

 大須賀さんによれば、移動式オービスや検問などの取り締まり情報は、「オービスガイド」に備えた情報共有機能を反映したものを基本とし、そして、送られてきた情報はほぼリアルタイムでヤフー側へ提供され、その後はヤフー側で処理される段取りになっているそうです。

 一方、この情報を受け取ったヤフー側に以前取材したところでは、「完全なリアルタイムではないが、高頻度で定期的に更新して対応している(Yahoo!JAPAN広報部)」と話していました。そうしたことから基本的に反映スピードで問題はなさそうです。

 では、この情報の信憑性はどうやって高めているのでしょうか。

 大須賀さん曰く、そこにはパソヤがこれまで10年以上も前から培ってきたノウハウが活かされており、その情報精度には自信があると話します。さらにネズミ捕りや検問が行なわれる場所の傾向や特徴をある程度把握した上で、それにそぐわないものは手作業によって削除してもいるとのこと。システム上でも不審な投稿を削除することができるそうですが、具体的なノウハウは秘密とのことでした。

 ただ、それでもイタズラや誤った投稿などがすべて削除されるわけではないとも大須賀さんは話します。

 機能としては現在取り締まり中の場所を知らせることに重点を置いており、取り締まりが終わればこれらのポイントを含めて情報は比較的短い期間でサーバーから消滅していくそうです。つまり、仮に誤った情報があったとしても一時的に提供されるだけで、裏返せば、たとえ情報の間違いに遭遇してしたとしてもドライバーは運転を慎重にすればいいだけのこと。

 むしろ、情報がないままで取り締まられてしまうよりもはるかにマシ、とも言えるのではないでしょうか。

取締り情報の表示期間は12時間〜1か月まで任意設定可能

 とはいえ、その情報がどの程度反映されているのかは気になるところです。

 そこで実際に表示された情報と、取締りが一致しているかを確かめてみることにしました。

「Yahoo!カーナビプラス」をCarPlay上で展開させ、移動式オービスの情報場所を目的地にして走行

 まず「Yahoo!カーナビプラス」とするために、インストール済みだった無料のYahoo!カーナビを有料プランに変更します。

 すると地図上には、思いのほか多くの取締り情報が表示されました。こんなに取締りをやっているのか?と不審に思いながらアイコンをタップすると、「3週間前投稿」というふうに過去の情報が多く含まれている状況でした。

 これはデータの表示期間が長く設定されていたためで、メニューを開くとその表示期間が12時間/24時間/1週間/1ヶ月間の中から任意に選べることがわかりました。

 なぜ、こんな仕様になっているのかといえば、前出で説明したように、この情報はあくまで投稿データに基づいており、必ずしもすべての取締り情報が反映されているとは限らないからです。

 しかし、過去に取締りの実績があるということは、その後も取締りが繰り返されている可能性も十分あります。つまり、過去に取締りを行った場所を表示させておくことで、情報が必ずしもリアルタイムでなくても慎重な運転につながれば、それはそれでメリットにつながるというわけです。

 とはいえ、アプリ上の表示と取締りの実施状況の一致を確認することが目的です。そこで、表示時間を「12時間」に設定して直近の情報を探してみることにしました。しかし、GW期間に入っていたからでしょうか、近所での取締り情報はなかなか見つかりません。何度もチェックを繰り返すと、2024年4月30日の朝8時30分ごろ、ようやく「24分前投稿」で「移動式オービス」の情報が投稿されているのを隣町で発見。急ぎ、その場所へ向かうことにしました。

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 走ること約30分ほど。現地に着くと、ちょうど移動式オービスを片付けているところでした。

現地に着くと、移動式オービスを片付けているところだった

 移動式オービスでの取締りは、通勤通学の時間帯にピンポイントで行われることが多く、長時間にわたって展開されることはそう多くありません。この場所も状況からして、朝の通勤通学の時間帯に合わせて取締りが実施されたと推察され、これは情報がほぼリアルタイムで反映されていたと考えていいでしょう。

 この情報の反映について、「スピード注意情報プラス」の情報提供元である「パソヤ」の大須賀克巳さんに伺うと、「Yahoo!側での処理のためか、提供してから反映までに若干のラグが発生することもあるが、それも数分単位でのこと。ただ、情報が取締りのスタートに合っているわけではなく、その意味では時間差はどうしても発生する」とのことでした。

 要はこのアプリは、まさに“転ばぬ先の杖”とも言うべきもの。その意味で有効性は高いと言えます。

 とはいえ、月額250円は年額にすると3000円。無料版でも固定式オービスの案内はするわけで、この費用が高いとみるかどうかは個々で判断するしかありません。

 また、検問の中に「飲酒運転」の取締りは含まれていないことも知っておきましょう。大須賀さんはその理由について、「飲酒運転は確信犯です。“うっかり”違反してしまう他の違反とは性格が違うのであえて情報提供の対象としていない」と話していました。

 最後に「Yahoo!カーナビプラス」は、月額250円が課金されますが、解約はいつでも可能です。

 さらにひとつのIDにつき初回のみ1週間の無料期間が用意されていますから、その期間でサービス内容を体験し、その結果次第で課金を判断しても良いのではないでしょうか。

 ただ、不要だと思ったなら課金されないよう、用後1週間以内に解約手続きをすることを忘れないようにしましょう。