県内地銀3行が14日、それぞれ2024年3月期通期の決算を発表した。山形銀行は増収減益だったものの利益が当初予想を上回り、荘内銀行は減収減益だった。きらやか銀行は減収減益になった上、純損益が244億円と過去最大の赤字を計上した。

【山形銀行】純利益35.1%減、債券関係損失が膨らむ

 山形銀行(山形市、佐藤英司頭取)の銀行単体は純利益が前期比35.1%減の21億3400万円だった。国内外の金利上昇を受けポートフォリオ(資産構成)の入れ替えを進める中で、外国債券を中心に債券関係損益を大きく減らしたことが主因。一般企業の売上高に当たる経常収益は貸出金利息や株式売却益が増えたため、9.1%増の486億4600万円になった。経常利益は31.4%減の34億1900万円。

 連結の経常収益は7.6%増の550億9700万円、経常利益は32.1%減の37億6200万円、純利益は39.4%減の20億8千万円。1株当たりの年配当は35円(中間、期末とも17円50銭)を継続する。

 単体では、本業のもうけを示す実質業務純損益は64億5900万円減り、17億8800万円の赤字になった。貸出金利息などの資金利益、法人関連手数料といった役務取引等利益が増え、経費削減も進んだが、国債金利の上昇を受けて債券関係損失が膨らんだ。債券関係損益を除いたコア業務純益は9.5%減の94億8100万円だった。本店と酒田支店の建て替えに伴い、固定資産処分損3億400万円を特別損失として計上した。

 与信関係費用は取引先の経営改善に注力したことで低水準に抑制されたものの、前期に戻入益を計上した反動で3億6千万円増えて1億5400万円だった。取引先の倒産に備える一般貸倒引当金は7億8500万円の戻し入れになった。その他有価証券の評価損は損切りをしたため、昨年3月末に比べ117億9600万円圧縮して143億9300万円となった。

 期末の預金残高(譲渡性を含む)は134億400万円増えて2兆8456億4900万円になり、個人預金や法人預金が増えた。貸出金残高は事業性貸し出しや国・地方公共団体向けが増え、1494億6200万円増の1兆9506億5500万円で、過去最高になった。

 金融再生法に基づく不良債権の総額は昨年9月末に比べ11億3800万円減の207億700万円で、不良債権比率は0.09ポイント改善して1.04%。担保や引当金による保全率は82.38%。単体の自己資本比率は0.11ポイント下がって9.90%。

 単体の25年3月期業績予想は有価証券関係損益の減少を見込み、経常収益を350億円、経常利益を41億円、純利益を25億円とした。連結は経常収益を417億円、経常利益を49億円、純利益を30億円と見通した。

執行役員制導入前に新体制発表

 山形銀行は14日、6月の株主総会後に執行役員制度を導入するのを前に、新たな取締役と執行役員の体制を発表した。取締役には長谷川吉茂会長、佐藤英司頭取、三浦新一郎専務、藤山豊常務、社外の井上弓子、原田啓太郎両氏が就く。代表権は引き続き長谷川、佐藤、三浦の3氏が持つ。

 常務執行役員には藤山氏が就くほか、常務取締役の長谷川泉、駒込勉、菅友和の3氏、笹浩行取締役常勤監査等委員、五百川満取締役本店営業部長が回る。執行役員には小松俊幸取締役融資部長のほか、四釜晴好監査部長、畔上治酒田支店長、石沢卓司経営企画部長、有海利至営業企画部長、後藤隆之人事総務部長、菊地智米沢支店長が就任する。

 取締役監査等委員は常勤の垂石卓朗氏、社外の五味康昌、押野正徳両氏を再任し、社外に岡本明子弁護士を新任する。

 常務取締役の小屋寛氏、社外取締役監査等委員の尾原儀助、松田純一両氏は退任する。

 執行役員制度の導入は取締役会による業務の監督と執行の役割を適正化するとともに、意思決定を迅速化することが狙い。

【荘内銀行】純利益59.7%減、資金利益の減少が響く

 フィデアホールディングス(HD、仙台市)傘下の荘内銀行(鶴岡市、松田正彦頭取)は経常収益が前年同期比11.9%減の214億6千万円だった。前期に計上していた投資信託の解約益が減少したことなどが主因。役務取引等利益が増加し、経費削減も進んだ一方、資金利益が減少したことで純利益は59.7%減の6億5600万円になった。

 預貸金利息差益、役務取引等利益などが増えた一方、有価証券のポートフォリオの再構築に取り組む中で、資金利益の減少や外国為替売買損の増加により、経常利益は30.9%減の16億5100万円だった。実質業務純益は73.1%減の6億9900万円。コア業務純益は49.8%減の26億7900万円となった。

 与信関係費用は、個別貸倒引当金繰入額の減少により、32.7%減の7億4700万円となった。その他有価証券の評価損は3億2200万円で、昨年3月末の評価益から21億4100万円減らした。

 期末の預金残高(譲渡性含む)は昨年3月に比べ129億7千万円増加し1兆3667億3800万円で、個人預金、法人預金ともに増えた。貸出金残高は215億1700万円増の9697億2300万円。山形県内の事業性貸出が増えた一方、中央政府向けが減った。

 不良債権の総額は199億1100万円で昨年9月末に比べて1億300万円増えたが、分母となる総与信も増えたため不良債権比率は0.06ポイント改善して2.00%。保全率は90.43%。自己資本比率は10.57%で、昨年9月比で0.20ポイント上がった。25年3月期業績予想は経常利益を22億円、純利益を13億円とした。

 フィデアHD連結では、経常収益が2.8%減の499億4400万円、経常利益が35.6%減の35億6800万円、純利益が63.9%減の11億7800万円。1株当たりの年配当は75円(中間、期末とも37円50銭)。25年3月期業績予想は経常利益を49億円、純利益を32億円と見積もった。

 同じくフィデアHD傘下の北都銀行(秋田市)単体の経常収益は4.5%増の234億6800万円、経常利益が49.7%減の13億1200万円、純利益は91.0%減の1億3900万円となった。

【きらやか銀行】純損失244億2800万円、与信費用を前倒し計上

 じもとホールディングス(HD、仙台市)傘下のきらやか銀行(山形市、川越浩司頭取)は、純損失が244億2800万円(前期は83億3400万円の赤字)だった。取引先に対する経営改善・事業再生支援の方針を見直したことによる貸倒引当金の積み増しが主因。赤字決算は2期連続で赤字幅は過去最大。

 経常収益は0.7%減の172億7200万円で前期並みを確保したが、与信関係費用が前期を98億4700万円上回る185億400万円に膨らんだ。改善の見込みがない企業などについて、前倒しで引当金を計上したことが要因となった。有価証券関係損失81億円も計上し、経常損益は237億7800万円の赤字(前期は59億2100万円の赤字)だった。有価証券の評価損は、176億900万円から96億5500万円に圧縮した。

 実質業務純益は53億1600万円の赤字(前期は28億4800万円の黒字)。コア業務純益は0.5%減の28億5400万円だった。

 期末の預金残高(譲渡性を含む)は、470億2500万円減の1兆2300億9800万円。貸出金残高は消費者ローンや地方公共団体向けが増加し、10億6千万円増の9829億3500万円だった。

 金融再生法に基づく不良債権の総額は665億3千万円で、昨年9月末比で230億5200万円増。不良債権比率は2.24ポイント悪化して6.58%。保全率は83.57%。自己資本比率は2.46ポイント下がって7.70%だった。

 25年3月期のきらやか銀行単体の業績は経常利益が2億円、純利益が1億円と予想した。

 じもとHD連結の経常収益は、前期比1.3%増の379億4200万円。経常損益は223億2900万円の赤字、純損失は234億6200万円だった。配当は無配。25年3月期業績予想は経常利益を15億円、純利益を9億円と見積もった。

 同じく、じもとHD傘下の仙台銀行(仙台市)は純利益が0.8%増の11億6700万円、経常収益が2.8%増の151億1800万円、経常利益が13.5%増の16億9300万円だった。25年3月期業績予想は経常利益が13億円、純利益が8億円とした。