藤浪晋太郎(30)がメッツ傘下3Aシラキュースで苦しんでいる。今季メッツと契約したものの、オープン戦では防御率12.27と振るわず3Aに降格。そこでも、7日現在9試合の登板で防御率14.09と制球難に悩まされている。代理人のスコット・ボラス氏は現地の寒い気候を要因に挙げているが、現地からは技術的な問題を指摘する声も聞こえる。米球界で活路を見いだせないとなると、日本球界復帰が現実味を帯びてくる。(【前編】からつづく)

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 実際に手を挙げそうな球団はどこか。

「古巣の阪神に復帰する可能性は低いとみています」と言うのは、さる代理人筋。

「藤浪は阪神時代の住まいを引き払い、裸一貫で渡米したと聞いています。しかも、阪神時代はトレード願望があったともいわれている。今の阪神の投手陣はリーグ屈指。藤浪が入る余地はないでしょうし、藤浪自身も阪神以外の球団からオファーが来れば、そちらを優先するでしょう」

 候補に挙がりそうなのが日本ハムだ。

「新庄監督は喉から手が出るほど欲しいでしょう」と、日本ハムOBがこう続ける。

「2021年オフの監督就任直後に、OBの岩本勉氏のYouTubeチャンネルに出演。『俺、欲しい選手ひとりいる。阪神の藤浪君。俺のところに来たらもう化ける』と“ラブコール”を送っています。新庄監督はソフトバンクから獲得した田中正義を再生し、抑えに抜擢したように、伸び悩む選手の復活をアシストしたい。再生に自信を持っている。しかも日本ハムは新庄監督が就任する以前から、藤浪の獲得に関心を持っていましたから」

 一方で、「藤浪には指導者から手厚いサポートを受けられる球団がベスト」という声もある。前出の現地特派員が言う。

「藤浪は昨季、オリオールズで好投した時期があった。オ軍は近年、MLBのファーム組織ランキングで1位の常連。優れた育成力を支えるのがデータを駆使した『制球力改良プログラム』で、これが藤浪の復活をアシストした。ムダがない投球フォームを形成するためのトレーニングに加え、ブルペンではコーチが投手ごとに設定した『的』を目がけて投げる練習もある。22年に66試合で防御率1.40の好成績を挙げたリリーフ左腕のペレスは、制球難に苦しんだレッズ時代の21年(25試合で防御率6.38)から大幅に成績がアップ。昨季、抑えで33セーブをマークしたバティスタ(現在は右肘手術で離脱中)も、マイナー時代にこのプログラムに取り組んで制球力が向上した。メッツも24年開幕前のファーム組織ランクは13位と悪くないですが、藤浪には成果が出ていない。日本にこうしたメジャー式のプログラムを整えている球団があれば、藤浪も喜んで行くのではないか」

 その意味では、オリックスが最適かもしれない。

「昨季までリーグ3連覇を達成したオリックスの強みは育成力。中嶋監督とフロントによる育成計画を、メジャーでの指導経験がある中垣征一郎巡回ヘッドコーチが中心となって実践しています。今季、日本ハムからトレードされた吉田輝星は開幕一軍入りを果たすと、ここまで11試合で防御率6.75ながら、直球の球威やキレは着実にアップしている。藤浪もオリックスならもう一度、輝きを取り戻せるかもしれません。ちなみに、藤浪の代理人であるボラス氏は西川龍馬の代理人も務めている。球団とは太いパイプがあります」(オリックスOB)

 マイナーで復活を目指すか、それとも日本球界に活路を見いだすのか。トレード期限は7月31日。藤浪晋太郎の周囲が騒がしくなりそうな雲行きだ。

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 古巣復帰の可能性は低いと見られている藤浪だが、実は岡田監督は密かに藤浪獲得の補強プランを温めていた。制球難を抱える藤浪を自らの手で再生させたいとの意欲もあったそうだーー。

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