5月6日に東京ドームで開催される4大世界戦の公式会見が4日、横浜市内のホテルで行われ、出場8選手がそれぞれ抱負を語った。メインを張るのはスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(31、大橋)が元2階級制覇王者のルイス・ネリ(29、メキシコ)を迎える防衛戦。ネリはWBC世界バンタム級王者時代に山中慎介氏とのタイトル戦で体重超過を犯し、事実上の永久追放となった。減量の進行具合が最大の懸念材料だったが「すでにリミット内に落とした」と注目発言。関係者の証言によると、本当に計量を前日に控えて55.34キロのスーパーバンタム級のリミットをクリアしているという。歴史的一戦のゴングが無事に打ち鳴らされそうだ。

 井上尚弥「とてもない試合ができると確信」

 34年ぶりの東京ドーム決戦での“最大の不安”が払拭された。
過去の過ちから体重が落とせるかどうかが焦点だったネリが公式会見で「すでに体重はリミット内に落とした。問題はない」とハッキリと断言したのだ。
大橋会長は冒頭の挨拶で「試合より緊張する計量が明日残っている」と冗談を交えて発言したが、その心配も杞憂に終わりそうなのである。
ただ“悪童”ネリのことだからその言葉を鵜呑みにはできない。
2018年の山中氏とのタイトル戦では、前日計量で2.25キロもの体重超過の失態を犯し、再計量でも1.3キロオーバーで計量をパスできずに失格、王座剥奪となった。当日の体重に制限をつけることで試合が実施され、山中が2回TKO負けを喫し、JBCは事態を重く見て無期限の活動停止処分を科した。その後、再起したネリは懲りずに翌年11月にも体重超過を起こした。今日4日に大阪で西田凌佑(六島)の挑戦を受ける現IBF世界バンタム級王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトルコ)と、WBC世界バンタム級挑戦者決定戦を行う予定だったが、前日計量で体重超過し、ネリは再計量を拒否、違約金を払って試合実施を求めたがロドリゲス側が拒否して試合は中止となった。スーパーバンタム級に上げてからは、計量失格はないが、大橋会長は「1ポンドでもオーバーしたら試合を行わない」と公言。ネリが失格となった場合の予備選手として第1試合に元IBF世界同級王者のTJ・ドヘニー(アイルランド)のカードを組んだほどだった。
だが、関係者によると、来日以来、毎日、マッチメイクを任されているプロモーターサイドがネリの体重をチェックしており、「本当にリミット(55.34)を切っている」という。ネリはWBCが命じた14日前、7日前の事前計量もクリアしており、関係者は「最近いろんなところで問題となっている大幅な水抜きもせずに減量をしているので心配はない」と太鼓判を押した。
残る不安は、ドーピング検査だけ。ネリは、山中氏との2017年の最初の世界戦でドーピング違反疑惑を起こしている。すでにここまで5度VADAの抜き打ち検査をクリアしたが、試合前後に最終検査が行われる予定。懸念材料が100%なくなったわけではないが、関係者は、「ネリは初めてと言っていいほど真剣に時間をかけて練習してきているのでまず大丈夫でしょう。陣営は今までとは違うネリが見られると本当に自信を持っている」と明かした。

 試合成立をネリ自身も確信できているのだろう。
黒のサングラスに黒のコーデで会見に登場したネリは表情を変えずにKO勝利を宣言した。
「この戦いを長年待ってきた。メンタルも完璧。練習もパーフェクトにやってきた。メキシカンのボクサーとしての雄姿を見せたい。死を覚悟して戦いに挑む。井上がどんなボクサーかをわかっている。その上で勝利の確信がある。KOで必ず勝ちたい」
対する井上は、今回の試合に向けて作った黒と白のツートンカラーのジャージで会見に臨み、ネリに、体重超過の不安がなくなったことを、こう受け止めた。
「いよいよこの日が来たなという思いでここに並んでいる。事前に(ネリの)体重が仕上がっていると聞き安心しているが、改めて目の前で見て非常にいい状態に仕上がっているなと思った。明後日は、とてつもない試合ができるんじゃないかと確信している。この試合はドームのメイン。エキサイティングな試合を見せたい。その中で必ずKOする姿を見てもらいたい」
いらぬ雑音に振り回されることなく歴史的な東京ドームのリングに立てることが、モンスターにとって、なによりの朗報だろう。
会見終了後に設定された恒例のツーショット写真の撮影が終わると、井上からネリに目を合わせて先に右手を差し出した。ニンマリと笑った井上に対してネリは無表情だったが、4団体王者に敬意を示してサングラスだけは外して握手に応じた。