レンガとシャベルで構成したインスタレーショ「Superstructure_1」(2024年)

 スイス在住のアーティスト、レト・エムヒュさん(62)の個展が、佐賀市のアートスペース「kenakian」で開かれている。マルクスが説いた概念「Superstructure(上部構造)」を手がかりに、インスタレーションやプリント作品など20点を展示している。

 エムヒュさんは1980年代から大規模なインスタレーションや彫刻、写真、絵画などを制作。空間や動き、水の要素に関心を持ち、さまざまなコンテクスト(背景や状況)を視覚化してきた。

 新作の一つは、人々が社会や家族の中で生活していることを示すインスタレーション。積み上げたレンガとシャベルが点在し、建築途中の構造物のようにも見える。

 上階に設けたインスタレーションは、水が雲や気体に変化していく循環を再現した。水が入ったペットボトルを積み上げ、壁には雲が流れる空の映像。窓の外に目を向けると、本物の空が広がっている。

 一連の作品は、私たちの世界はどのような構造なのか、何が見えるかと投げかけ、鑑賞者の価値観を揺さぶる。

 佐賀での展示は初めて。カバン一つで会場入りし、1週間の滞在で制作した。エムヒュさんは「人は大きなシステムやつながりの中にいる。今回の展示で一番伝えたいのは、私たちは一人ではないということ」と話している。(清川千穂)

 ▼個展「上部構造」は5月19日まで。午後1時〜同6時まで。月〜水曜は休み。問い合わせは同スペース、電話0952(97)5044。