炎上案件などのまとめ投稿を発信する滝沢ガレソさんのポストが議論を呼んでいます。

内容は「超有名女優とドラマ共演して電撃結婚した男性歌手」が「某NHKアナとW不倫」をしたが、「男性歌手の所属事務所が10億円を支払って」もみ消したというもの。

5月22日夜に投稿されたこのポストは、その男性歌手が星野源さんではないかという指摘のもと、瞬く間に拡散されました。

しかし、約5時間後に星野さんの所属事務所・アミューズが声明を発表。「星野源において当該投稿にある事実は一切なく、また当社が記事をもみ消した事実も一切ありません」と一連の臆測を否定しました。

また、名誉毀損などの違法行為については、法的措置を含む対応を検討しているとのこと。

今回の件では、「臆測・デマ」が注目を集めましたが、一般的に、臆測やデマにはどのような問題点があるのか。法的観点から弁護士の鬼沢健士が解説します。

■デマを流したときの罰則
前提として、臆測、デマというものは法的に明確に定義されているわけではなく、それぞれ国語的な意味では「根拠なく推測すること」「事実に反する虚偽」であるといえます。

一般的に「臆測のままにデマを流す」ということは、具体的な根拠がないにもかかわらず、真実であるかどうか分からないことを流す意味であると考えられますので、ここではこの意味で解説します。

まず、デマを流した場合についての罰則ですが、「名誉毀損罪」及び「信用毀損罪」が考えられます。

名誉毀損罪(刑法230条)は、事実を摘示し、公然と、人の社会的評価を低下させた場合に成立します。

なお、ここでいう事実は「真実」のことではなく、具体的な内容といった意味合いであり、真実でも事実無根でも成立します。法定刑は、3年以下の懲役、もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

事実を摘示しない「バカ」などの表現では名誉毀損罪は成立せず、侮辱罪(刑法231条)が成立します。

信用毀損罪(刑法233条)は、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損させた場合に成立します。こちらは真実を流布した場合は成立しません。法定刑は、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金です。

また、デマを流されたことによる損害賠償責任を負うことにもなります。

■「Aさん」仮名・伏せ字でも罪に問われる可能性
主にインターネット上での誹謗中傷のケースでは、誹謗中傷される対象者がはっきりと特定される形ではなく、仮名や伏せ字を用いた方法であることがあります。

例えば、「Aさん」などの伏せ字でデマを流したとします。この場合、「Aさん」と人物を特定していないからといって名誉毀損罪などが成立しないわけではありません。

一般閲覧者の観点から、誹謗中傷されているのが誰であるか特定できる可能性があれば、誹謗中傷の対象者を明示していなくとも名誉毀損罪が成立します。

また、投稿から対象者が誰であるのか特定できる閲覧者がおり、そこから不特定多数の者に伝わる場合でも同定可能性(※)は肯定されます。

閲覧者が多かったり、主にファンが閲覧するSNSであったりすれば同定可能性は肯定されやすいということです。

※投稿内容が誰のことを指しているのか、他人から見て分かること

▼鬼沢 健士プロフィール慶應義塾大学卒業。平成24年、茨城県取手市「じょうばん法律事務所」を開設。主に労働者側の労働事件(不当解雇など)やインターネット詐欺被害救済(サクラサイト、支援金詐欺など)を取り扱う。All About 暮らしの法律ガイト。

鬼沢 健士(弁護士)