大好評の対談連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」。作家の金原ひとみさんをお相手に迎えたおしゃべり第3弾。今回は、金原さんがゆっきゅんに、あるリクエストをして…? 本日も大盛り上がりでお届けします!

保護者会に行く前に聴ける強くなれる曲を作ってほしい。

ゆっきゅん(以下、ゆ):私、金原さんの言葉に最初に触れたのは、実はCharaの「きえる」だと思う。映画『蛇にピアス』の主題歌だったけど、R15+で当時は観られなくて、音楽が先でした。あの歌が入ってるアルバムを借りて、ずっとリピートしてました。

金原ひとみ(以下、金):Charaはもともと好きですか?

ゆ:それから、今でも好きですね。

金:私も中学生の頃からよく聴いてて、コラボの話をもらった時はすごく興奮しました。でも、苦労したんですよ。歌詞って難しくて。メロディに合わせる書き方だったんですけど、言いたいことを言おうとすると超字余りで。

ゆ:文字数が足りないですよね。

金:作詞ってすごい能力ですね。

ゆ:いやいや、小説ってすごい能力だと思います(笑)。

金:小説を書こうとしたことは?

ゆ:今のところは歌詞だけで表現できているからないですね。

金:書くとしたら私小説かな?

ゆ:絶対そう。作詞でもそのままではないにしろ自分自身を出し切ってるから。作品にすることで人生や見てきたものを整理してます。

金:私、昔は本が出る度に、出産みたいな感覚があって。自分が肥やしてきた怨念みたいなものを産み落として1冊の本にするというか。表現しないと納得できないものが小説の核になってるから、本ができてやっと何かが成仏する感じ。ものづくりをする人はみんなそういう感覚かもしれないですね。

ゆ:私もそういう核がしっかりある歌が好きです。自分がいつ音楽に救われてきたかっていうと、遅刻確定で電車に乗っている時とか、最悪な状況下なんですよね。あの時イヤホンがなかったら倒れてたって思う場面、何度もある。

金:わかる、日常的に救われています。

ゆ:だから音楽って一人で聴くものって意識があります。ライブに行っても自分だけに歌われている意識で聴いちゃう。一人でこの世界をどう生きていくか? という時に、必要なものなんです。

金:日常を支える音楽だ。

ゆ:出勤、退勤、勉強、執筆…。

金:いろいろ作ってほしいです。

ゆ:どういうシーンを支える曲が欲しいですか?

金:なんだろう、保護者会に行く前に聴ける曲とか欲しい。気が重くなるような出来事の前に、気高く、そしてすべてを蹴散らす気持ちになれる曲。

ゆ:強くなれる感じですね。日常の憂鬱を吹っ飛ばして踊れる、中島みゆきと太陽とシスコムーンが合体したような曲を作ります!

かねはら・ひとみ 1983年、東京都生まれ。作家。2003年『蛇にピアス』(集英社)ですばる文学賞を、翌年に同作で芥川賞を受賞。若い読者を中心に絶大な支持を受ける。近著に『腹を空かせた勇者ども』(河出書房新社)、『ハジケテマザレ』(講談社)。

ゆっきゅん 1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。2021年からセルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。インスタ、Xは@guilty_kyun

※『anan』2024年5月22日号より。写真・幸喜ひかり 文・綿貫大介

(by anan編集部)