少ない材料で手早く作れるとか、時間はかかるけれどシンプルな手順で仕上がるとか。2024年5月20日発売の特集「」では、家庭料理ならではの気楽さとアイデアが詰まった、料理上手たちのひと皿を集めました。ここでは、ファッションコーディネーター・中小企業診断士の重松久惠さんが教えてくれた、ヨルダンの炊き込みご飯〝マクルーバ〞のレシピを紹介します。

鶏肉はスプーンをあてるとほろほろとほぐれるほど軟らかくなる。じゃがいもにはとろみが。直径50㎝ほどある(!)マクルーバ専用の大皿は現地で購入し、持ち帰った。

大勢でいただく、〝同じ釜〞のひと皿。

専用の大皿の上で、重松久惠さんが裏返しになった鍋をそっと持ち上げると、中からもうもうと湯気を立てながら、熱々の炊き込みご飯が現れた。骨付き肉をのせたまま、丸い山型を保つのを見て、周囲から歓声が上がる。

 国内外を旅し、旅先で食したおいしいものを自宅で再現するのが、重松さんのルーティン。このマクルーバは、ヨルダン旅行の思い出の味だとか。

「『アラビアのロレンス』と『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』のロケ地なんです。映画に出てくる神殿や砂漠が見たくてひとり旅へ。遺跡も素晴らしかったけれど、料理も最高! 特に、現地で『ひっくり返す』とい
う意味の名がついた『マクルーバ』のスタイルと、野菜のとろみ、優しい味に感激し、慌てて現地で料理教室を探し、作り方を習ってきました」

 野菜はなす、カリフラワー、じゃがいもが入るが、どれも素揚げしてからご飯と一緒に炊くため、炊き上がりはトロトロホクホク。なすはもはや溶けだす勢いで形をなさないほど柔らかい。その舌触りも一緒に堪能する。

「たくさん炊いて、皆で料理を囲み、『せーの』と手を伸ばし、スプーンで崩しながら食べるのが、ヨルダンスタイル。ファミリーって感じよね」

スープのだしを取るのにも使うため骨付き肉がいい。バスマティ米はネットなどで調達可能。もちろん日本の米でもOK。
「試しに野菜の素揚げをせずに炊いてみましたが、カリフラワーやじゃがいものほろほろ感が出ず、違和感が。このひと手間を惜しんではダメみたい」
鍋の縁に沿ってそっとスープを流し込むと、形が崩れにくくなる。
内側にはりついた肉やご飯が剥がれるように底をスプーンなどでコンコンとノックしてから、鍋をあける。
フェタチーズとパセリの春巻き、〝シガール〞を前菜として。
    材料(6〜8人分)
    バスマティ米…1.5カップ 
    なす…3本 
    カリフラワー、じゃがいも…各1個 
    骨付き鶏肉…1㎏ 
    玉ねぎ…1個 
    にんにく…2かけ 
    オリーブオイル…大さじ2 
    クミンシード…小さじ1  
    水…4カップ 
    松の実…20g程度 
    A(クミンパウダー…小さじ1  ターメリックパウダー、パプリカパウダー、シナモンパウダー…各小さじ1/2 コンソメ、塩、黒胡椒…各適量)
    米を洗って30分浸水し水をきっておく。鍋にオリーブオイルとクミンシードを入れて火にかけ、香りが出たらみじん切りの玉ねぎ、にんにくを加え炒め、さらに鶏肉を加え焼き色をつける。そこに水を入れ沸騰したら灰汁を取り、Aを加え蓋をして40分間煮る。なすは皮をむき大きめのさいの目切りに、カリフラワーは乱切りに、じゃがいもは皮をむいて5 ㎜厚の輪切りにし、素揚げする。鍋から鶏肉を取り出し、スープと分けておく。別の鍋に、底から順に鶏肉、素揚げ野菜、米を入れ、スープを注ぎ蓋をして中火で40分間煮る。米が炊けたら火を止め15分程度放置。蓋を開け、大皿をかぶせて鍋ごとひっくり返し、中身を皿の上にあける。松の実を散らす。

重松久惠 Hisae Shigematsuファッションコーディネーター・中小企業診断士

編集者、アパレル勤務を経て独立。〈D&DEPARTMENT〉では商品開発コーディネート、東洋大学では教壇に立つなど、アクティブに活躍。

photo : Shuhei Tonami edit & text : Marika Nakashima

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