水俣病患者らの団体と伊藤信太郎環境相の懇談の場で、環境省職員がマイクの音を切るなどして団体側の発言を遮った問題をめぐり、伊藤氏は9日、患者らとの懇談を再設定すると明らかにした。同日の参院環境委員会で発言した。具体的な時期や方法は今後調整するという。

 伊藤氏は8日に熊本県水俣市を訪れ、団体側に「不適切な対応だった」として直接謝罪している。伊藤氏は9日の委員会の冒頭で、団体側に謝罪した際に懇談の再設定を求められたと説明。「私の責任で懇談の場を設けることを決定した」と述べた。

 一方、質疑では、自らの大臣の任期中に水俣病問題の最終解決をする意思があるかと問われ、「能力の限りにおいて最大限努力したい」と答えた。

 また、伊藤氏は同日午後、岸田文雄首相に対応を報告。伊藤氏は、岸田首相から、「二度と再発しないよう、厳重に注意してもらいたい」と指示を受けたと記者団に説明した。懇談の再設定については、「丁寧にご意見をいただけるような運営の仕方をよく検討してもらいたい」と求められたとも明かした。

 この問題をめぐっては、団体側はマイクを切られたことだけでなく、話す時間を3分と制限されたことなども問題視。懇談の場のあり方自体を強く批判していた。

 再設定を文書で要望していた「水俣病被害者・支援者連絡会」の山下善寛代表代行(83)は「要望に応えてもらったことはよかった」と話した。

 1日の懇談ではマイクを切られたが、そもそも例年の懇談も、団体側の意見表明が終わった後にまとめて大臣が答えるやり方に不満があったという。

 8日の謝罪の場では1〜2団体の発言の後に大臣が答えたため、やりとりが深まったと感じた。「聞きたいのは公式答弁でなく、大臣の生の声。今度の懇談は、双方向のやりとりをさせてほしい」。時期ややり方について事前に調整することを環境省には求めるという。

 9日夕には国会内で野党による環境省へのヒアリングがあり、マイクの音を切られたと主張しているが、環境省は切ったと認めていない水俣病不知火(しらぬい)患者会の岩崎明男会長もオンラインで参加した。

 岩崎氏は、8日の伊藤氏による謝罪の対象になっていなかったと説明。謝罪の場には「私はマイクを切られた人に入っていなかったから参加しなかった。馬鹿にされていると思って」と話した。

 岩崎氏は環境省に対し、「人間の血が流れていない。その結果が1日(の懇談の場)に出た」「今回の対応を一生忘れない」と批判し、懇談のあり方の再考を求めた。(市野塊、今村建二)