「実は平日のボランティアが減って困っているんです」。能登半島地震の被災地である石川県七尾、珠洲市の両市長がこう話すのを聞き、京都府亀岡市は5月から市職員を一般ボランティアとして派遣している。被災地を見て公務員としての幅を広げてほしいと、通常の災害派遣ではなく「研修派遣」と位置づけた。

 対象は入庁2〜3年目の若手職員で、約60人。4人1組で1週間ずつ派遣し、現地のボランティアセンターの指揮下で倒壊住宅の後片付けなどを手伝っている。

 自治体職員の災害派遣は、災害救助法に基づき行われ、派遣にかかった諸経費は派遣元から被災した都道府県に請求する。後日、国と被災地の双方から派遣元に支払われる仕組みだ。

 これに対し、亀岡市の今回の派遣費用は、市が負担する見通し。京都府災害対策課によると、「自腹での派遣は聞いたことがない」という。

 桂川孝裕市長は「我々もいつ被災地になるかわからない。現場を知る職員は一人でも多い方がいい」。子育て中など事情のある者をのぞき、全員を派遣したいという。

 地震発生後、亀岡市は動く仮設トイレ「トイレトレーラー」を七尾市へ派遣。水道事情が改善した今は珠洲市に派遣中だ。桂川市長は5月、トイレトレーラーの視察で現地を訪れ、両市長と意見交換していた。(日比野容子)

■野鳥教室など子ども向けの体験学習を企画・運営している環境政策課の西田康平さん(27)

 片側がごっそり陥没したままの道路、着の身着のまま逃げたことが垣間見える民家など、復興が進んでいない現状を目の当たりにして衝撃だった。能登半島地震関連のニュースが減り、いかに自分が無関心になっていたかを思い知らされた。がれきの運び出しを手伝った民家で「避難所暮らしだが、命が今あることに感謝している」と明るく、気丈に振る舞う人々に出会った。東は福島、西は熊本から「恩返しがしたい」とボランティアに駆けつけた人々もいた。本当の心の豊かさって何だろうと考え続けている。

■新規就農者や就農希望者の支援を担当している農林振興課の川勝美咲さん(23)

 日本航空学園能登空港キャンパス(石川県輪島市)のテントに泊まり、珠洲市の中でも被害が大きかった大谷地区を中心に片付けを手伝った。はがれた土壁を土囊(どのう)袋に入れて集積所に運んだり、ガラスの破片を拾ったり。日が差すと、5月でももう暑かった。金沢に避難中の依頼主がおられ、ボランティア仲間が「集落の小学校でイベントがあるので気晴らしに行かれては」とおすすめしたが、「自分はふるさとを捨てて金沢に『逃げている』。合わせる顔がない」と言われた。「心の復興」というものに初めて思いを巡らすようになった。(日比野容子)