東京商工リサーチ金沢支店は、2023年度の北陸3県の企業倒産状況(負債額1千万円以上)を発表した。倒産件数は前年度より25件多い計170件で、負債総額は約74億円増の計約279億円。大口倒産が少なかったこともあり、件数、負債総額とも近年では少ないレベルだが、今後、能登半島地震の影響が出る可能性があるとみている。

 3県別の内訳は、倒産件数が富山79件(前年度比16件増)、石川60件(同15件増)、福井31件(同6件減)で、負債総額は富山87億円(前年度比12億円増)、石川153億円(同70億円増)、福井39億円(同7億円減)。過去20年でみると倒産件数は3番目に少なく、負債総額は4番目に少なかった。

 負債額が10億円以上の大型倒産は、金沢市の食品運送業・アペックス(約92億円)と富山市の美容室経営・ロルドコミュニケーションズ(約13億5千万円)の2件。前年度より2件減り、全体として小口倒産が中心だった。産業別では建設業35件、卸売業と小売業が各23件で、原因別では販売不振が計142件で最多だった。

 同支店は「能登半島地震からの復興には相当の年月がかかる」として、「経営者の事業意欲の低下が懸念され、倒産や休廃業の増加は避けられない」とみている。(樫村伸哉)

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 東京商工リサーチ金沢支店は、能登半島地震に関連して破綻(はたん)した全国の企業の件数をまとめた。富山、石川両県の計4社が破綻したといい、同支店は「今後は事業を継続する意思が失われ、廃業するケースが出てくる可能性もある」と注視する。

 経営が破綻し、裁判所から破産開始決定を受けて倒産したのは、富山県射水市のスーパー運営「新湊商業開発」。コロナ禍などで客足が落ち込んだところ、地震が追い打ちとなって客足の減少に拍車がかかり、1月31日付で富山地裁高岡支部から破産開始決定を受けた。

 破綻して倒産の準備を進めているのは石川県中能登町の繊維製造加工「シュクタニ」と関連会社「アルファーテック」、同県能登町のイカ加工販売「石川県いか釣生産直販協同組合」。

 シュクタニは大手繊維商社の下請けとしてナイロンやポリエステルの織物を製造し、アルファーテックは原糸などを製造していた。地震で工場や設備が被災し、修繕費などの資金繰りの見通しが立たなくなり、1月末で全従業員を解雇した。

 石川県いか釣生産直販協同組合は震災による津波や断水の影響で休業を余儀なくされ、5月2日付で事業を停止した。

 東日本大震災では発災4カ月で177社が破綻し、熊本地震では6社だった。

 同支店の担当者は「震源地が企業の少ないエリアだったため、今後、急激に破綻が増える可能性は低いだろう」と指摘。その上で、「漁港や農地の復旧、復興がなかなか見通せなかった場合、経営者が事業を継続しようという意欲を失い、廃業してしまう可能性がある。行政をはじめ包括的な支援が急がれる」と話している。(安田琢典)