2023年7月に打ち上げられたユークリッド宇宙望遠鏡。そのユークリッド望遠鏡の早期リリース観測の一環で撮影された画像が公開されました。上の画像は公開された5点のうちの1点で、銀河団Abell 2390が映っています。Abell 2390はペガスス座の方向、約27億光年の距離にあります。

銀河団は、多数の銀河が重力的に集まったものです。この画像には5万以上の銀河がみられます。銀河団は膨大な質量を持っており、その多くはダークマター(暗黒物質)の形をしています。正体不明のダークマターを直接的に観測することはできませんが、同じく正体不明のダークエネルギー(暗黒エネルギー)とともに、宇宙の大部分を占めていると考えられています。

画像には、銀河団の巨大な質量(重力)によってゆがめられた、遠方にある銀河の像がいくつか映っています。このように手前にある銀河団などの重力によって、遠方にある天体の像がゆがむ現象は「重力レンズ」と呼ばれます。

こちらは、冒頭の画像の中央付近のクローズアップです。非常に多くの銀河が映っており、円弧状にゆがんだ遠方銀河の像もみられます。この画像では、親銀河から引き離されて銀河間空間を漂う恒星による、非常に淡い「銀河間光」が強調されています。このような銀河間光もダークマターの分布を調べるために利用されます。

ユークリッド望遠鏡にはVIS(可視光カメラ)とNISP(近赤外線分光計および測光計)という2つの観測機器が搭載されています。それらは同時に動作して、空の広い領域を撮影することができます。また可視光から近赤外線までの範囲の光をとらえることで、可視光あるいは赤外線のどちらか単独で使用するより距離的に広い範囲の天体を見ることが可能になります。ユークリッド望遠鏡は、他の望遠鏡より深くて広い高解像度の画像を効率よく取得することができるのです。

6年間で全天の3分の1の領域を観測する

ユークリッド望遠鏡は、太陽・地球系の第2ラグランジュ点(L2)を周回する軌道から観測を行っています。L2は、地球からみて太陽の反対側、約150万km離れたところにあります。全天の3分の1の領域について、100億光年先までの銀河の形状や位置、距離などを測定し、宇宙の3Dマップを作成することが目的です。それにより、ダークエネルギーやダークマターの解明などを目指しています。

(参考記事)ユークリッド宇宙望遠鏡 銀河の精密な3Dマップを作り宇宙の「暗黒」の解明を目指す

2024年5月23日に公開された今回の5点の画像は、同日公開されたミッションの最初の科学データおよび、今後発表される10件の科学論文に伴うものです。データはわずか24時間の観測から得られたもので、可視光で1100万以上、赤外線でさらに500万以上の天体が明らかにされています。ユークリッド望遠鏡のメインミッションは6年間が予定されており、今後の成果が大いに期待されます。

(参考記事)
ユークリッド宇宙望遠鏡がとらえた星形成領域M78
ユークリッド宇宙望遠鏡がとらえた渦巻銀河NGC 6744
ユークリッド宇宙望遠鏡がとらえた「かじき座銀河群」

Image Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi

(参照)ESA(1)、(2)