WEC世界耐久選手権のトップカテゴリーに参戦しているフェラーリは、101周年を迎える今季2024年のル・マン24時間において、シリーズの開幕戦よりも多くのメーカーが優勝争いに参加することを期待している。ハイパーカークラス参戦2年目となるフェラーリAFコルセは、2023年に499Pで獲得した歴史的な勝利の防衛を目指し、6月に開催される伝統の一戦に臨む。

 フェラーリ、ポルシェ、トヨタはシーズン序盤の3戦でそれぞれがトップチームであることを証明しており、ポルシェはカスタマーチームであるハーツ・チーム・JOTAの1勝を含む計2勝、トヨタも1勝を挙げている。フェラーリはイモラとスパの両レースで純粋なペースでは最速に思われたが、勝利を逃している。

 これら3つのブランドはマニュファクチャラーズランキングで4位のアルピーヌを大きくリードしており、フェラーリ、ポルシェ、トヨタ以外のドライバーによる選手権ランキングでは35号車アルピーヌのシャルル・ミレッシとポール・ループ・シャタンの11位が最上位だ。

 しかし、フェラーリのパフォーマンス&レギュレーション・マネージャーであるマウロ・バルビエリは、前年のレースだけでなく2024年シーズンの序盤戦の結果からも、今年のル・マンでの争いを三つ巴の戦いとは見ていない。

「もっと大きくなると思う。昨年はキャデラックのサプライズもあったし、プジョーもある瞬間には非常に競争力があった」とバルビエリ。

「昨年はレース中のさまざまな瞬間に、さまざまなクルマがコース上で速く走るという素晴らしいレースだった。今年も同様に、この“ルーレット”に加わるマシンが増えるかもしれない。誰かを排除するつもりはない」

「トップクラスにこれほど多くのマシンが参加することは滅多にないことだし、これまで以上に良いショーになると確信している」

 イモラとスパでの499Pのパフォーマンスは、フェラーリにル・マンでの強さを確信させたが、バルビエリは、ハイパーカーのパフォーマンスバランスが判明するまでは、フェラーリのチャンスを正しく評価することはできないと認めている。

「昨年の結果とパフォーマンスは、ル・マンに特化した自信を与えてくれるが、いくつかの環境条件を定義する必要があるね。それを正しく評価するにはまだ1カ月ある」

「499Pはル・マンに特化して開発されたのに対し、トヨタはハイダウンフォース、スプリント・サーキットのために開発されたと言えるかもしれない。その明確な証拠はないが、ル・マンでのパフォーマンスは、WECの最初の3戦での予想よりも少し良かったと思う」

「今年もそうなることを願っているが、この答えにもう少し自信を持つためには、多くの環境条件を定義しなければならない」

 BoP(性能調整=バランス・オブ・パフォーマンス)が未知数であることに加え、ハイパーカー・チームはタイヤウォーマーを使用せずにル・マンに挑むことになる。

 バルビエリは、チームがタイヤウォーマーを使用せずに1年以上の経験を積んだ今、これが大きな問題になることはないと考えているが、ミシュランの3種類のコンパウンドのうち、もっともソフトなものがより多く使用されることになりそうだと指摘する。

「もしかしたら、路面温度が通常より低い時には、タイヤの選択がソフトコンパウンドにシフトするかもしれない。普段は夜間に使用されるソフトが、土曜日の早い時間帯と日曜日の朝方に使用されることになるだろう」

「どの程度かはまだ分からない。しかし、デグラデーション(劣化)が低く、摩耗の少ないサーキットなので、タイヤ選択はよりソフトコンパウンドにシフトするだろう」

「通常はソフトとミディアムの中間で、夜間はソフト、日中はミディアムだ。ウォーマーがなければ、これまではソフト寄りだった」

 タイヤウォーマーがないことでフェラーリとライバルのバランスが変わる可能性について尋ねられたバルビエリはこう答えている。「いや、それはみんな同じだよ。適応して、今あるものでベストを尽くすしかない」