フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)の2024年MotoGP第6戦カタルーニャGPでの優勝は、スプリントレースの転倒リタイアの翌日に飾ったものだった。バニャイアを支えるものは何か。そして、3位に入ったマルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)の現在の改善点とは。

バニャイア、スプリント転倒から決勝で優勝の要因

 カタルーニャGPを制したのは、フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)だった。一度はホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)に明け渡したトップの座を、残り6周で奪還した。

 それまでトップを走っていたマルティンは、前後ともにミディアムタイヤを選んでいて、タイヤをマネージメントしていた。そのメリットを最大限に生かそうとしていたが、「たぶん、十分にセーブできていなかったのかも」と言う。バニャイアも悩んだ末に前後ミディアムを選択している。ここはバニャイアのタイヤマネージメントが勝った、ということだろう。

 優勝したバニャイアだが、前日のスプリントレースではトップ走行中の最終ラップに転倒、リタイアを喫している。2024年シーズン、このような「スプリントでつまずいて、決勝レースでリカバリーを果たす」展開は、初めてではない。

 第4戦スペインGPでも、スプリントレースで転倒を喫し、翌日の決勝レースでは優勝している。第5戦フランスGPでは、Q2でのクラッシュによってスペアマシンで走ったスプリントレースでトラブルが発生し、ピットインをしてそのままリタイア。このとき、決勝レースは3位ながら、表彰台に立った。

 転倒、リタイアではなかったものの、開幕戦カタールGPのスプリントレースでは、タイヤの空気圧とチャタリングにより4位でトップ3を逃している。このとき、囲み取材でのバニャイアの表情がとても印象的だった。

 結果に、まったく動じていない様子だったのだ。翌日の決勝レースで見事に優勝を飾ったバニャイアに、落ち着き払った態度はそういうことだったのかと納得した。バニャイアは、現在の自分のポテンシャルとパッケージに全幅の信頼を寄せているのだろう、と。

 今回、決勝レース後の会見で、バニャイアはそんな「リカバリーの優勝」の心境について言及した。

「目的にすごく集中できているんだ。ミスをしたときもあるし、クラッシュをして、問題があったこともあるし、がっかりして、ナーバスになって、怒ったりしたときだってある……。それでも僕は、自分のポテンシャルをちゃんとわかっているんだ」

「問題がなければ、優勝争いができるとわかっている。そういうことが、戦いに備えるのにいつも役立っているんだ。土曜日が厳しい状況だったとしても、僕は日曜日にいい結果を得られる。ポテンシャルがあるからだ。チームもいる。バイクもある。全てのものごとが、僕を強く、速くしてくれるんだ。自分のパッケージに、すごく自信があるんだよ」

 そう語ったバニャイアがカタルーニャGPで飾ったのは、今季3勝目である。

今のマルケスに足りないもの

 マルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)は、カタルーニャGPで3位表彰台を獲得した。14番手スタートからの追い上げのレースだった。マルケスにとって、3戦連続の表彰台獲得である。

「モンメロで14番手から3位になれたのはうれしい。でも、もしこのふたり(バニャイアとマルティン)と争いたいのなら、予選とプラクティスを改善しなければならないね」

 会見でマルケスがそう語っていたように、気になるのは予選順位だ。得意のアメリカズGP、ウエットコンディションの予選だったスペインGPはフロントロウ、ポールポジションを獲得しているとはいえ、予選のパフォーマンスはスプリントレースや決勝レースと比べるとやや劣る。なぜか。マルケスはその理由を問われ、「何が起こっているのかはわかっているんだ」と説明した。

「マネージメントの方法を考える必要がある。例えば、僕の強みは、コーナー進入。新しいタイヤを入れたときに、リヤタイヤがフロントをプッシュするからコーナー進入でそれを生かせないんだ。タイヤを生かすために、僕たちの使っているセッティングを、すべてを考える必要がある」

 ホンダで培われたライディングスタイルによって、ドゥカティ デスモセディチGPで新品タイヤを生かしきれていないという。

「ホンダで10年以上、そういう風に走ってきた。でも、今のバイクはちょっと違っているから」

 つまり、そうした状況で、決勝レースですでに3度の表彰台を獲得しているということでもある。マルケスにはまだ、改善の余白がある。そして、マルケスはそれを埋めていくのだろうと思うのだ。