のんびりと横たわる1匹のコビトカバ。その色合いと形は、まるで……。

ひと目見ただけで、誰もが「あの野菜!」と言いたくなる写真がSNSで注目を集めています。

話題になっているのは、神戸市内の動物園「 神戸どうぶつ王国 」にいる5歳のコビトカバ・タムタム君の写真。ダニー・チャン( @danny_ne_jp )さんが4月30日に撮影しました。同日、X(旧Twitter)に投稿すると「ナスにしか見えない」と大きな反響を呼びました。

💬「でっけーナスビに見えた」

💬「立派なナスですね!」

💬「ナスやん」

💬「ちょっと色変わってるとことかリアルなすすぎる」

など、色合いや形から、野菜のナスを連想した人たちの声が集まっています。

確かに、このお姿は……どう見ても立派なナス!

ダニー・チャンさんのXより / Via Twitter: @danny_ne_jp

絶滅危惧種で、姿を見ること自体が希少なコビトカバ

投稿者さんによると、コビトカバはすごくかわいらしく「一般的にイメージするカバよりは確かに小さいです(ナスにしては大きいです)」という感想を抱いたそうです。

光の加減でナスに見えた何気ない写真なのですが…… 実はコビトコバはカバの祖先に当たる貴重な動物で、絶滅危惧種です。

東京ズーネット によると、生息する西アフリカの密林では開発などによって生息環境がせばめられ、数が減っているため、絶滅が心配されています。

神戸どうぶつ王国で飼育しているタムタム君  / 写真提供:神戸どうぶつ王国 / Via 写真提供:神戸どうぶつ王国

「神戸どうぶつ王国」さんによると、日本ではオスのタムタム君とメスのコウメちゃんの2頭がいる神戸どうぶつ王国を含め、わずか5園館13頭という飼育状況(※日本動物園水族館協会加盟園館内)。

いろいろな意味で、奇跡の1枚だったのです!

「われわれ人間たちが及ぼす影響によって数が減ってしまっているのはとても悲しいです……」と投稿者さんも語るほど、希少な動物になってしまった、コビトカバ。

よく考えたら、コビトカバについて知らないことが多すぎるのでは……!?

カバは『群れ』、コビトカバは『単独』

コビトカバについて知る貴重な機会。せっかくなので、BuzzFeedは「神戸どうぶつ王国」さんにお話を伺いました!

――普段、我々が一般的にイメージするカバと、コビトカバの違いについて教えてください。
「身体の大きさは、カバと比べると体長は約半分、体重は10分の1と言われています。生息地は、 コビトカバ が、リベリア・コートジボワール・ギニア・シオラレオネの森林地帯。カバは、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸。その他の違いとしては、カバは『群れ』、コビトカバは『単独』です」
――カバは近年だと力が強く、怒ると怖い一面もあるイメージもあります。コビトカバは、一般的なカバよりもおとなしい動物なのでしょうか?
「おとなしいわけではありません。のんびりしているように見えますが、種的に言うとカバ同様に縄張り意識も強くあります」
「基本的に単独行動をする動物で、通常は個別に飼育していて(展示スペースが別々)、繁殖期にはオスとメスの2頭の様子を見て同居することもあります」

神戸どうぶつ王国で飼育しているコウメちゃん(左)とタムタム君(右) / 写真提供:神戸どうぶつ王国 / Via 写真提供:神戸どうぶつ王国

「その時期以外だと闘争をする可能性があるので、飼育管理は慎重に行っています」

――コビトカバは、乱獲や水質汚染によって生息数が激減している絶滅危惧種に指定された生物で、日本でも見られる動物園が限られています。神戸どうぶつ王国さまでの、保護活動における取り組みなどを教えていただけますか?

「動物園水族館の役割はさまざまですが、中でも『種の保存』(繁殖)は大切な責務です。弊社でも、繁殖にチャレンジしています」

「他にも、コビトカバの野生下の現状を記載した看板を展示場前に設置したり、毎日行っているイベント『 カバカバトーク 』の中で、コビトカバの現状を含めた話をゲストに向け行っています」

「本来の住処である野生での環境をお話しさせて頂くことによって、来園者の『気付き』に繋がればと考えています。コビトカバだけでなく、野生動物の生息数の減少理由に、私たち人間が深く関わっているのは残念なことですよね」

タムタム君のお食事  / 写真提供:神戸どうぶつ王国 / Via 写真提供:神戸どうぶつ王国

――神戸どうぶつ王国さまに見学へ行ったときに、動物たちを見るうえで意識しておくと良いことがありましたら、教えていただけますか?

「ぜひ、じっくり観察する時間を! 餌を食べているようであれば、どのように食べているのか、例えば、 インコ たちだとエサのヒマワリの種を上手に殻をむいて食べています」

「 コツメカワウソ のように群れで生きる種は、個体間の動きや関わりなど、何気なく見ている行動でも、何をしているのか? 何のためにその行動をしているのか? ……など、じっくり観察してみると、さまざまな発見もあるのでより楽しめると思います」

「また、私たち飼育スタッフは、お客さまと動物との架け橋になるスタッフを目指しています。ほとんどの展示場には飼育スタッフが常駐しています。疑問に思う事などがあれば、ぜひ気軽に飼育スタッフに声をかけてください!」
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「神戸どうぶつ王国」さんからお話を伺い、あらためて「ナスに見えるコビトカバ」を撮影できること自体が貴重な機会だと気づかされました。

ちなみに神戸どうぶつ王国さんでは、コビトカバ以外にも、さまざまな動物を飼育しています。初めて見学に行く人が見ておくと良いオススメのイベントを訪ねたところ、「 ペリカンフライト 」をオススメしてくれました。

こちらは「翼を広げると約280mほどもあるペリカンが、ダイナミックに飛ぶシーンは貴重なシーンです」とのこと。

筆者も、いつか見に行きたいと考えています。