◇26日 大相撲夏場所千秋楽(東京・両国国技館)

 角界の超新星が快挙をやってのけた。単独トップで迎えた新小結大の里(23)=二所ノ関=が関脇阿炎を押し出し、12勝3敗で初優勝を果たした。初土俵から7場所目の賜杯獲得は最速で、新三役の優勝は67年ぶり。初の殊勲賞と2度目の技能賞にも輝き、新入幕から3場所連続の三賞受賞は25年ぶりだ。7月14日に始まる名古屋場所(ドルフィンズアリーナ)では新関脇として準ご当所の土俵に上がる。

 祝福の拍手に包まれた土俵下で拭い続けた涙は、大の里が受け止めてきた重圧と湧き上がる喜びそのものだった。右を差した大の里が、一気に阿炎を押し出して12勝目を挙げ、史上最速の初土俵から7場所目での初優勝。新三役の優勝は1957年夏場所の小結安念山以来、67年ぶりの快挙となった。

 「(優勝の意識は)ずっとしていました」

 憧れるのは早々にやめた。重圧から逃げなかった。新入幕だった初場所に敢闘賞を受賞したことで、表彰式に備え取組後も待機。東の支度部屋で優勝した照ノ富士の万歳を目の当たりにした。

 「初めて見ました」と笑みも浮かべていたが、引き揚げる時には一変。口元をギュッと引き締めていた。「夢から目標に変わった」と、優勝インタビューで語ったターニングポイントだった。

 石川県津幡町出身。幕下付け出しの初Vでも、郷土の元横綱輪島の15場所を大きく上回った。相撲どころで生まれ育った誇りも、大の里の力。故郷を語る時は「相撲どころ」が常とう句。だから「たくさんの方が見てくれたと思う。最高の結果で終われてよかった」

 地元でも「大の里杯」創設で、期待で背中を押すプランが浮上している。今年で10回目を迎える年少から小学3年生を対象にした同町相撲連盟の大会では、大の里フィーバーもあってか参加申し込みが昨年の60人から90人に大幅増。大の里自身も、新潟へ相撲留学した中学時代に横綱白鵬(現宮城野親方)が主催する「白鵬杯」で、全国の頂点に立った経験がある。夢を与える看板大会は一流の証し。昇進など、タイミングを探っていく。

 師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と、現役では5組目となる師弟V。歓喜もそこそこに、14日目夜の師匠からの言葉を胸に刻んでいる。「これが目標じゃない」

 先場所の尊富士に続くちょんまげVは、新時代到来の号砲。「親方の言うことを守って稽古に精進し、上へ上へと頑張りたい」と大の里。まずは大関を目指し、トップランナーであり続ける。