前編【「NYダウ」「S&P500」が最高値を更新! いまからでも“米国株”の恩恵にあずかるための「2つのポイント」を専門家が伝授】からのつづき

 アメリカの代表的な株価指数であるS&P500の株価は、1928年から現在までの間に“300倍”という驚異的な成長を果たした。2000年以降の日経平均とS&P500のトータルリターンを見ても、ドル換算で2.5倍ものパフォーマンス差がある。米国株が最強たる所以とは――?前編に続き、外国株投資のプロであるマネックス証券の岡元兵八郎氏に聞いた。

(前後編の後編/前編の続き)

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アメリカの驚異的な粘り強さ

 IMF(国際通貨基金)によると、世界各国の名目GDP(ドル建て)の内訳は、先進国が約6割で、新興国が約4割だが、アメリカ1国だけで全体の約25%を占めている。ちなみに日本は約4%という数字だ。

 興味深いのは、ゴールドマンサックスが作成した世界GDPランキングの未来予想図である。1980年と2000年の時点では、上位3カ国は1位アメリカ、2位日本、3位ドイツとなっていたが、2022年に中国が2位に入り、日本は3位にランクダウンしている。

 2023年にはドイツにも抜かれ、日本は4位に転落したわけだが、2050年のランキング予想ではどうなっているかというと、中国が1位になり、アメリカが2位にランクダウン。3位にはインドが入り、さらにインドネシア、ドイツと続いて日本は6位に転落する予想になっている。

 2075年の予想まで進むと、1位は中国のまま、2位がインド、アメリカは3位にランクダウンとなる。ちなみに日本は、パキスタンやエジプト、メキシコにまで抜かれ12位に。にわかには信じられないが、急激な人口減が進むことを考えれば、残念ながらあり得ない未来ではないのかも知れない。

 長期にわたる日本の凋落が憂慮される一方で、岡元氏は次のように指摘する。

「ここで注目すべきはアメリカの驚異的な粘り強さです。ゴールドマンサックスの予想に基づけば、1980年から約100年にわたって上位3位をキープし続けるということですから」

アメリカの人口が安定する理由

 アメリカが強者であり続ける理由は、いくつかのデータでも説明することができる。代表的なものを挙げてみよう。

 まずは石油の産出量と消費量。一般的に石油産出国と言うと、アラブ諸国のイメージが強いかも知れないが、実はシェア約20%でアメリカが断トツ1位を誇り、2位のサウジアラビアのシェア約11%を大きく上回る。一方、消費量の1位もアメリカが全体の21%を占めている。2位は15%の中国で、日本は4%なので、その差は歴然だ(米国エネルギー情報局の2021年のデータより)。

 食料自給率も高い。農林水産省が2019年に作成した資料によれば、アメリカの食料自給率はカロリーベースで121%。日本はわずか38%に留まる。

 防衛費予算も圧倒的で、Global Fire Powerの2023年の統計に記されたアメリカの防衛費は99兆円と、2位中国の30兆円の3倍以上。ちなみに日本は5.2兆円の11位である。

 加えて、安定した「人口」も強みだ。国連のまとめた資料によると、2023年に80億人を突破した世界人口は、2050年には97億人に達し、2100年には大台を突破して、104億人に達する、というのが予想の中間値だそうだ。

 国別のランキングで見ると、1990年時点の1位は中国で11.4億人、2位がインドの8.6億人、3位がアメリカの2.5億人。この順位は2022年も変わらないままで、2050年の予想値ではインドが1位となり16.7億人、2位が中国で13.2億人、アメリカは3位をキープし、3.8億人となっている。

「アメリカの人口が減らないのは、出生率の高さというより、“移民国家”であることの方が大きい。多様性を重んじる風潮は米国企業がイノベーションを生む源泉にもなっています」(岡元氏)

アメリカで1番ハイパフォーマンスな銘柄はリターン率約31万%!!

 国力の高さもさることながら、個別銘柄のパフォーマンスも群を抜いている。1989年末から今年の2月末までの期間で集計した、日米のパフォーマンス上位10銘柄を見るとその差は歴然だ。

 日本銘柄の1位は、半導体銘柄として知られる「東京エレクトロン」(銘柄コード8035)の6845%で、2位は「キーエンス」(6861)の6286%となっている。

 アメリカの1位は、地方の金融機関向けのシステムを手掛ける「ジャック・ヘンリー・アンド・アソシエイツ」(ティッカーシンボルJKHY)で、リターンは脅威の312008%となっている。2位は「マイクロソフト」(MSFT)で108663%。他の有名企業では、「アップル」(AAPL)の73272%、「アドビ」(ADBE)の46011%などがある。まさに“桁違い”である。

「象徴的なのが6位にランクインしている『ベスト・バイ』という会社。58666%のリターンを記録していますが、どういう事業かというと、日本で言うビックカメラのような家電量販店を展開する会社なんです。日本で家電量販店の銘柄がこんな爆発的な伸びを記録することは考えにくいですよね」(岡元氏)

アルファベット(Google)だけで日本の上位10社の研究開発費

 アメリカを代表するテクノロジー企業は、事業展開の規模もすごい。iPhoneやiPad、Apple WatchといったApple製品を使うユーザー数は全世界で約20億人。Googleが提供する検索サービスの月間訪問件数は1.687億回を数える。Amazonの月間サイト訪問者数は22.7億人だ。

「国内企業とのスケールの違いは研究開発費にも表れています。日本でトップのトヨタ自動車の年間の研究開発費は0.9兆円。SONYは0.8兆円です。一方、Amazonは12.8兆円、アルファベット(Google)は6.8兆円ものコストを投じて新製品や新しいサービスの開発を続けているのです」(岡元氏)

 日本で研究開発費の多い企業トップ10の合計が5.8兆円なので、アルファベット一社だけでその金額をカバーしていることになる。

「こうしたアメリカ企業のイノベーションに積極的に投資し、巨万の富と名声を手にしたのが“投資の神様”ことウォーレン・バフェット氏です。彼が率いる投資会社『バークシャー・ハサウェイ』は1988年を基準に現在までに約195倍という驚異的なリターンを実現させています。」(岡元氏)

 そのバフェット氏は、2019年のインタビューで、彼が亡くなった後の遺産について、自身の妻のために「財産の90%をS&P500に投資するように」と財産管理人に指示しているそうだ。

前編【「NYダウ」「S&P500」が最高値を更新! いまからでも“米国株”の恩恵にあずかるための「2つのポイント」を専門家が伝授】からのつづき

岡元兵八郎
マネックス証券の専門役員。専門である外国株のチーフ・外国株コンサルタントのほか、マネックス・ユニバーシティ投資教育機関のシニアフェローも務める。元Citigroup /米ソロモンブラザーズ証券のマネージング・ディレクター。外国株に30年以上携わるプロフェッショナルで、関わった海外の株式市場は世界54カ国を数える。海外訪問国は80カ国を超える。米国株はもちろんのこと、新興国の株式事情にも精通している。ニックネームは「ハッチ」。Xアカウント名 @heihachiro888

デイリー新潮編集部