コロナ禍のマスク生活もあってか、歯列矯正を希望する人が増えているそうで、歯列矯正の初診患者数は、2017年から2020年にかけて約3.6倍になっています(厚労省)。

最近では特に「インビザライン」などマウスピース矯正が注目されていますが、歯列矯正はどのくらい費用がかかるのでしょうか。また保険は利くのでしょうか。

■主な歯列矯正の方法は「ワイヤー」と「マウスピース」

歯列矯正は、噛み合わせや歯並びを良くする治療のことで、「ワイヤー矯正」や「マウスピース矯正」があります。

ワイヤー矯正は一般的な矯正で、1つ1つの歯に「ブラケット」と呼ばれる装置をつけ、ブラケットをつなげるようにワイヤーで固定する方法です。

メリットは治療のしやすさですが、デメリットとしては、比較的費用が高いこと、定期的に通院しなければいけないこと。ワイヤーが目立ってしまうことなどがあります(ワイヤーを歯列の裏側に装着する方法もあります)。費用は、歯科や詳細によりますが、60〜120万円ほどとされます。

これに対し、「マウスピース矯正」は、歯を型取りして作るマウスピースによる矯正です。1週間から2週間など、決められた期間マウスピースを装着し、次の期間に別のマウスピースを着けます。マウスピースは形が少しずつ違っており、少しずつ目指す歯並びに近づいていくわけです。

メリットとしては、比較的費用が安いことと、マウスピースが透明なため(ワイヤーと比べて)目立ちにくいことです。

ただし、1日20時間以上と長く装置をつけている必要があり、重度の症例には向かないとされています。

費用の目安は、部分矯正や軽度の症例は10〜50万円、全体の矯正は60〜100万円ほどです。

■保険は利く?どんな場合に?

このように、いずれの方法をとっても、数十万円から100万円はかかると見られるだけに、保険が利かないか気になるところですが、保険が使えるのは「(噛み合わせが悪いなど)健康や身体の機能性に影響が出るケースの治療」だけで、「見た目をきれいにするための“審美的な理由”の治療」には、基本的に利きません。

また、病気の治療ではないため、医療保険や生命保険など民間保険の対象にもなりません。

保険適用になるのは、「生まれつきの噛み合わせ異常がある」「顎変形症による噛み合わせ異常がある」「子供の永久歯の前歯が3本以上生えてこない」といった場合です。

自分や家族がどのケースに当てはまるのかは素人判断できません。気になるなら、必ず歯科医に相談しましょう。

■矯正で起き得るトラブルとは?

歯列矯正で気になるのはとかく、ワイヤーかマウスピースかといった“方法“と、”費用“がいくらかかるのか、”保険“は利くのかといった点でしょうが、診療である以上、想定外のことが起きることもあります。

特に最近注目されているマウスピース矯正は、安価に済む反面、トラブルも報告されています。

たとえば、マウスピース矯正が向かない重度の症例に、無理に治療を行う医院があることや、ワイヤー矯正と比べて通院回数が少ないため、医師によるチェックがおろそかになりがちであることです。

また、マウスピースの着用や管理を主に自分で行わなければいけないことも、トラブルの原因になり得るようです。

ただ、マウスピース矯正ではなくワイヤー矯正でも、トラブルが起きないわけではありません。

多くの歯科医によれば、歯並びや噛み合わせが悪いと、虫歯や歯周病になりやすかったり、頭痛や肩こり、めまいの原因になったりするそうです。口内、歯並びの状況は人によって異なるので、素人である矯正の経験者に話を聞いて自己判断をして決めるのではなく、信頼できる専門医を見つけて相談しましょう。

文・武藤貴子(ファイナンシャル・プランナー)
編集・dメニューマネー編集部