「もっと飛ばしたい」、「曲がりを減らしたい」など、ゴルファーの悩みをクラブで解決してくれるのが「フィッティング」です。今回はチーピンに悩むe!GolfスタッフのTが「キャロウェイ/トラヴィスマシュー青山店」でフィッティングを体験しました。

最初にマイドライバーを使って弾道計測&スイング分析

 ゴルフクラブは毎年新製品が発売され、市場にはさまざまなタイプのヘッドやシャフトがそろっています。これだけあれば、自分の悩みを解消してくれるクラブがありそうなものですが、数が多いだけにそれを見つけ出すのは困難です。そこで大きな助けになるのが「フィッティング」です。

平均スコア100のTさんがドライバーのフィッテイングを体験。チーピンの悩みを解消できるのか
平均スコア100のTさんがドライバーのフィッテイングを体験。チーピンの悩みを解消できるのか

 フィッテイングでは、専門知識を持つフィッターが、弾道計測器などを駆使してゴルファーのスイングを分析し、最適なヘッドやシャフト、スペックを提案してくれます。今回は、ゴルフ歴5年で平均スコアは100、ショットが大きく左に巻くチーピンが悩みというe!GolfスタッフTさんがフィッティングを体験。「キャロウェイ/トラヴィスマシュー青山店」(東京都渋谷区)のフィッティングスペシャリスト國廣凪紗さんが担当してくれました。

【Tさん】※以下【T】 最近、どのクラブも左に引っかけることが多くて悩んでいます。

【國廣さん】※以下【國】 まずはその原因がスイングとクラブ、どこにあるのかチェックしていきましょう。マイクラブで何球か打ってみてください。

 Tさんがマイクラブで打つと、國廣さんはアマチュアによくある傾向を指摘します。

【國】スイング軌道がアウトサイドインの傾向が強く、かなり外からヘッドが入っていますね。軌道に対してフェースを真っすぐ戻せれば強いフェードボールが打てるのですが、今はフェースを閉じ過ぎているので、ボールが左に飛び出して、左に曲がっているようです。そこを手先で調整しようとすると今度はフェースが開いてしまい、右に飛び出して、右に曲がるスライスも出ています。

【T】まさかそんな打ち方をしているとは思いませんでした。

【國】バックスピンがかなり少ないことも気になりますね。2000回転以下がほとんどです。Tさんの場合、左への引っかけだけでなく、スライスが出た時でもスピンが少なくなっているのは、打点がフェースの上の方で当たっているのが原因です。ここまでの情報を踏まえると、フェースを返しやすく、ロフト10.5度のヘッドが合いそうですね。まずはヘッドを選んでいきます。1本目は「パラダイムAIスモーク MAX D(以下、「MAX D」)」の10.5度を打ってみてください。

「パラダイムAIスモーク MAX D」と「パラダイムAIスモーク MAX」を試打

 まずはつかまりやすく、安定性もあるという「MAX D」を試してみます。

國廣凪紗さん。クラブやスイングに関して豊富な知識を持つキャロウェイのフィッティングスペシャリストだ
國廣凪紗さん。クラブやスイングに関して豊富な知識を持つキャロウェイのフィッティングスペシャリストだ

【T】すごく高さが出ますね。フェースが戻ってきてくれる安心感もあって、楽に振れる気がします。

【國】スピン量が2600回転くらいまで増えましたね。「MAX D」はヘッドの特性やライ角の設定でフェースが返りやすくなっていますので、スイングの力みが取れて軌道が良くなっています。安心して振れる分、ヘッドスピードもマイクラブより出ていますね。

【T】チーピンも減りましたね。つかまるヘッドなのにすごく不思議です。

【國】フェースが返りにくいヘッドで頑張って返そうとしていることがチーピンの原因です。返そうとしなくても、フェースが返るヘッドにすることで、悪い動きが出にくくなったわけです。例えば、同じシリーズの「パラダイムAIスモーク MAX(以下、「MAX」)」の10.5度を打ってみてください。

【T】これはちょっとチーピンが出やすい感じがあります。

【國】またアウトサイドインの傾向が強くなっています。「MAX」は慣性モーメントが高くミスに強いモデルですが、ヘッドの外周にウエートがある分、他のモデルよりもフェースが戻りにくくなっています。そのため、手先でフェースを返そうと力んで、右肩が前に出て、アウトサイドインのスイング軌道になってしまうのです。Tさんの場合、「MAX」はあまりタイミングが合わなそうですね。ちなみにTさんはどんな弾道が理想と考えますか。

【T】曲がり幅の小さいドローを打てるようになりたいです。

【國】わかりました。目指す弾道によっても最適なクラブは変わってきますので、また違ったタイプのヘッドを試してみましょう。今度は「パラダイムAIスモーク トリプルダイヤモンド(以下、「トリプルダイヤ」)」の10.5度です。「右に行ってもいいや」という気持ちで、インからヘッドを下ろすように打ってください。

「パラダイムAIスモーク トリプルダイヤモンド」を試打

 チーピンが悩みのTさんですが、ミスに強い「MAX」よりも、つかまりやすいヘッドの「MAX D」の方が合っていたようです。次は「トリプルダイヤ」を試します。

「パラダイムAIスモーク トリプルダイヤモンド」の10.5度を試打するTさん
「パラダイムAIスモーク トリプルダイヤモンド」の10.5度を試打するTさん

【T】右プッシュになるかと思いましたが、むしろ少しつかまって、ドローボールになっています。

【國】「トリプルダイヤ」はヘッドが小ぶりでウエートも前めにあるので、フェースがターンしやすいんです。インから下ろすことに集中してスイングしても、フェースがスクエアに戻りやすくなっています。打ち出し方向がターゲットよりも右になって、そこから戻ってきていますので、理想としているドローにかなり近くなったはずです。

【T】「トリプルダイヤ」と言えば、一番難しいヘッドというイメージですが、「MAX」よりもやさしく感じました。

【國】一番大事なのはスイングとの相性です。「MAX」を使うことで弾道が安定する人もいますが、Tさんの場合、小ぶりでフェースがターンしやすい「トリプルダイヤ」の方が適していて、振りやすく感じるのでしょう。

【T】「MAX D」も打ちやすかったですが、飛んでいるのは「トリプルダイヤ」ですね。

【國】どちらをおすすめすべきか悩みましたが、「MAX D」はフェースの返りにバラつきがありましたし、高さが出る分、飛距離をロスしている印象がありました。Tさんのベストは「トリプルダイヤ」の10.5度だと思います。

ヘッドが決まると、次はシャフトのフィッティングへ!

 ヘッドが「トリプルダイヤ」に決まったTさん。次はシャフト選びに入ります。

國廣さんにシャフトの説明を受けるTさん
國廣さんにシャフトの説明を受けるTさん

【T】今までは先端が動くタイプのシャフトを使ってきましたが、スイングとの相性は良くないですか。

【國】Tさんはトップで少し止まってから切り返すクセがありますので、動きの少ないシャフトの方が安定してインから下ろせるようになるはずです。今、使っているシャフトは動きが多いタイプなので、タイミングが取りづらく、アウトサイドインの原因になっています。「トリプルダイヤ」はしっかりフェースがターンしますので、先端を締めて動き過ぎを抑えた方が、引っかけが出にくくなるはずです。まずは三菱ケミカルの「Diamana WB」の53Sを打ってみてください。

【T】同じ5Sなのに結構硬く感じます。かなりしっかりしていますね。

【國】トップで止まった時に余計な動きがないので、インパクトでヘッドが戻ってきやすいはずです。Tさんのようなクセを持つゴルファーは、ラウンドで疲れてくるとどんどんトップで止まる時間が長くなるので、しっかりしたシャフトの方が球筋が安定します。しかし「Diamana WB」だと先端がかなりしっかりしているので、Tさんには少し硬くフェースを戻し切れなくなるかもしれません。今度はグラファイトデザインの「TOUR AD VF」の5Sを試してみましょう。

【T】右にすっぽ抜ける感じで打っても、しっかりつかまりますね。

【國】「TOUR AD VF」は手元調子系ですが、先が少し動くので右に曲がるミスは少ないはずです。ただちょっとフェースの閉じ具合が大きくなり過ぎましたね。今、Tさんは力まずインから下ろして、ヘッドの性能でボールをつかまえる一番距離が出やすい振り方ができています。あとはシャフトでミスの度合いを小さくして、コースでより安心して振れるクラブにしたいので、次は三菱ケミカルの「TENSEI PRO BLUE 1K」の5Sを打ってみてください。全体的にしっかり感がありつつ、少しだけフェースを戻してくれますので、良いバランスになると思います。

 Tさんは「トリプルダイヤ」と「TENSEI PRO BLUE 1K」の組み合わせで、この日最長の飛距離260ヤードを記録しました。

【T】ここまで飛ぶようになるとは思いませんでした。飛距離は大満足ですし、すごく安心して振り切れます。

【國】他のシャフトはいい球も出るけど、ミスした時の曲がりも大きくなりがちでしたが、「TENSEI PRO BLUE 1K」は軽いドローで安定しましたね。打ち出し角も、スピン量も、ボール初速も、全てTさんのヘッドスピードに対して最適な数値がそろいました。この組み合わせがベストです。

フィッティングはクラブを選ぶだけでなく、自分を知ることにもつながる

 ドライバーのフィッティングを終えたTさんは、理想的なクラブを見つけられた喜びと共に意外な発見があったと話します。

悩みを解消できて、自分にピッタリ合うドライバーを見つけることができたTさん
悩みを解消できて、自分にピッタリ合うドライバーを見つけることができたTさん

「豊富な知識を持つフィッターさんにスイングを見てもらうことで、なぜチーピンが出るのか、どうすれば飛ばせるのか知ることができました。最初はなぜ左に曲がってしまうのか全く分かりませんでしたが、アドバイスをもらいながら、いろいろなクラブを試すことで、いかに自分がインパクトで突っ込んでいたのかよく分かりましたし、しっかり右サイドで待って、インから下ろす感覚もつかめました。ちょっとしたレッスンを受けた気分です」(Tさん)

 これについて、國廣さんは次のように話します。

「フィッティングはクラブを選ぶだけではなく、自分を知ることにもつながります。ボールが曲がる理由を解説しながらフィッティングを行うことで、『練習の参考になる』と喜んでいただけることも多いですし、スイングチェックを目的に来る人もいます。スタジオでは計測器を使って、ヘッドの入りやインパクト時のフェース向きやロフト角など、さまざまなデータを取ることができますので、スイングの変化を感じ取りやすくなっています。ゴルフに何かしらの悩みをお持ちなら、ぜひ気軽にフィッティングを受けていただきたいですね。ゴルフを始めたばかりの人でも、自分の力に合ったクラブの重さや硬さを知るだけで上達の度合いが変わってきますよ」(國廣さん)

 自分に合っていないクラブを使い続けていたら、スイングに変なクセがついてしまって、上達できずに苦しむことになるかもしれません。よりゴルフを楽しむためにも、フィッティングを利用しない手はなさそうです。

「キャロウェイ/トラヴィスマシュー青山店」では、1コマ40分、5500円(税込み)でフィッティングを受けられます。公式Webサイトから予約が可能で、2コマ連続で予約をすることで、ドライバーとアイアンの両方のフィッティングを一度に受けることもできます。また、「キャロウェイゴルフ東京本社」や「キャロウェイ心斎橋店」でもフィッティングを実施しています。

取材協力・キャロウェイ/トラヴィスマシュー青山店東京都渋谷区神宮前3丁目1番25号 神宮前Ikビル

田辺直喜