国内男子ツアー第6戦「〜全英への道〜ミズノオープン」は、木下稜介が通算12アンダーで3年ぶりのツアー3勝目を飾った。2打差の2位には韓国の高君宅(コ・グンテク)。3位タイには桂川有人、堀川未来夢、今平周吾の3人。木下、高、桂川は7月に開催される「全英オープン」の出場権を得た。

パワーヒッターに対抗するために鍛えたショートゲーム

◆国内男子ツアー<〜全英への道〜ミズノオープン 5月23〜26日 JFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山県) 7461ヤード・パー72>

 わずか1メートルのウイニングパットを慎重に沈めると、右手の拳を強く握りしめてガッツポーズをつくった木下稜介。目を閉じながら天を仰いだ後、ようやく笑顔を見せた。

 21年「ダンロップ・スリクソン福島オープン」以来のツアー3勝目を素直に喜んだ木下だったが、18番グリーンでインタビューを受けると、それまでこらえていた涙を抑えることができなかった。

3年ぶりとなるツアー3勝目を手にした木下稜介 写真:JGTO Images
3年ぶりとなるツアー3勝目を手にした木下稜介 写真:JGTO Images

「今年で33歳になりますが、中堅の立場で若手を見ていました。若い選手は本当に勢いがあって、自分はもう一度勝てるのだろうかとこの3年間ずっと考えていました。そんな思いがこみ上げてきて……」

 3年という年月をどのように感じるかは人それぞれだが、少なくとも木下にとっては相当長く感じられた。ひと昔前なら経験を積んできたことで30歳ぐらいから強くなる選手は多かったが、現在の国内男子ツアーはパワーゴルフが主流なだけに、技術だけでは太刀打ちできないシーンも多い。

 それだけに、木下が勝てなかった3年間で最も焦りを感じたのはドライバーの飛距離だった。3年前は木下も決して飛ばないほうではなかったが、次から次へと出てくる若手が自分のボールをオーバードライブしていく。

「今から10ヤードも20ヤードも伸ばすことは無理だと思っていましたが、妥協はしたくないので少しでも飛距離が伸びるトレーニングを続けてきました」。にもかかわらず、若手との飛距離はどんどん開くばかりだった。

「こんな選手たちを相手にどう戦えばいいのか」。そう悩んで出した答えが、アプローチを中心としたショートゲームのレベルアップだ。

 たとえバーディーを奪えなくても、ボギーを叩かないゴルフを目指そうとした。その結果、昨年84.985%(32位)だったパーキープ率が、91.049%(1位)にアップ。今大会でもボギーになりそうなところを何度もパーで切り抜け、通算12アンダーでの優勝に結び付けた。

 簡単なところから確実にパーを拾うことをテーマにしていたが、方向性が間違っていなかったことを証明できたのは大きい。今後はアイアンショットにも磨きをかけ、パワーヒッターに対抗していくつもりだ。

日本人は7人が全英オープンに出場

 今回の優勝で「全英オープン」(7月18〜21日 ロイヤルトゥルーン・英国)の切符も手にした木下。

「3年ぶりの出場になりますが、あの舞台へもう一度戻りたいと思っていたので非常にうれしいですね。前回は予選を通過するのに一杯一杯でしたが、今回は優勝を目指して全力で頑張りたいです」と気合が入る。

 また、優勝した木下だけでなく、2位に入った高君宅(コ・グンテク)、3位タイの桂川有人にも出場権が与えられた。上位3人に出場枠が与えられていたが、3位に複数人がいたときは、世界ランキングの最上位者が優先されるため桂川に決まった。

「チャンスをしっかりとつかめたことはうれしいですし、興奮しました」と桂川。高も「メジャー出場は初めて。世界のトップと競い合うことでいろんなことを学びたいです」と力を入れた。

 今年の全英オープンに出場する日本人選手は、21年マスターズ優勝の松山英樹、久常涼、岩崎亜久竜、星野陸也、中島啓太の5人。ちなみに、国内男子ツアーのメンバーとしてはマイケル・ヘンドリーがいる。

木下 稜介(きのした・りょうすけ)

1991年生まれ、奈良県出身。大阪学院大学を卒業し、2013年にプロ転向。転向後すぐには結果が出なかったが、18年に初シードを獲得。翌年19年のミズノオープンでは、ツアーで令和初となるアルバトロスを達成し話題を呼ぶ。21年の日本ツアー選手権でツアー初優勝を達成し、次戦のダンロップ・スリクソン福島オープンも制して2連勝。ツアー初優勝からの2連勝は日本人初の快挙となった。24年「〜全英への道〜ミズノオープン」で3年ぶりの勝利を挙げる。ハートランド所属。

e!Golf編集部