モータージャーナリストの大井貴之さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ、ロタース・エミーラV6ファースト・エディション、メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス、プジョー408GTハイブリッド、ルノー・メガーヌR.S.ウルティムに乗った本音とは?


日本人は真面目過ぎる?

絶好の天気に恵まれたことにより、相模湾と箱根の絶景と共にガイシャを堪能するというクルマ好き、走り好きにとっては最高の時間となった2024年のガイシャ大試乗会。助手席に乗るEPCメンバーがどんどん笑顔になって行く。今年もしっかりガイシャから元気を頂きました。メンバーと共にドライブしたのはプジョー408GTとメルセデスAMG S63という2台。408からは日常の景色を変えるガイシャの威力を、63からは文字通りのパワーと究極とも言えるテクノロジーを思い知らされた。日本車だって走りはもちろん、デザインだってどんどん良くなって来ているが、本能に忠実と言えるような進化を続けていると感じる最新のガイシャ達に出会うとその存在感の強さに日本車はまだまだだなぁと痛感。日本人は真面目過ぎるのかなぁってつくづく思う。




ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ「爆発寸前って感じのヤバさ」 

ド派手なエクステリアは流石ランボルギーニ。搭載しているアウディ製V10自然吸気エンジンは最高出力640PS/8000rpm、最大トルク565Nm/6500rpmを発生。本家のアウディR8より20ps高出力。注目は、その集大成と言えるウラカンのファイナルモデルであるテクニカが2WDで登場したことだ。2WDとしたのは、バッテリーを搭載しどんどん車重が重くなる近未来を見据えて軽量モデルを残そうと考えたのか。それとも4WDのR8とキャラを分ける販売戦略か、理由はともかくスペック的にヤバいことは間違いない。 しかしこのクルマ、実際は普通に乗れる。意外なほど視界は良いし、4WSのお陰でビックリするほど小回り。V10独特の心地良いサウンドを響かせながらONもOFFもアクセルに対して100%忠実に反応するから扱いにくさはゼロ。やっぱNAだ。ミッドシップのトラクション性能は驚くほど高いとは言え、4WDのR8と同じ加速をさせたとしたら遥かに刺激的。これからの時代もっと速いクルマは出るだろうが、爆発寸前って感じのヤバさを楽しめるクルマは最後かも。




ロタース・エミーラV6ファースト・エディション「最後のエンジン車たる完成度」

エヴォーラの進化モデルとして登場したエミーラだが、2+2だったエヴォーラに対してエミーラは2シーター。ホイールベースもエンジン搭載位置も変わらないが、後席スペースを作り出すために追いやられていたバルクヘッドは正しい位置へ。エンジン・ルームには余裕が出来て、シート後方に荷物が置けるスペースも残っている。エヴァイヤを連想させる空力デザインも素敵。試乗車はトヨタ製V6スーパーチャージャーを搭載する6段AT。3.5リッターの過給機付きは全域でトルキー。6段MTが用意されているのも大きな魅力。ハンドリング的には重心が低いメルセデス製の超ハイパワー2リッターターボと8段DCTを搭載したバージョン上陸への期待は大きいが、サーキット・レベルで攻め込まなければどちらを選んだとしても不満を感じることはないだろう。ラグジュアリー過ぎたエヴォーラとスパルタン過ぎたエキシージの間を取ったようなちょうど良いバランスは、ロータス最後のエンジン搭載車たる完成度。V6の2ペダルを日常の足として使うなんてカッコイイです。




メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス「これはもう魔法だ」

インテリアは真っ赤。インパネからドアへと回り込むパネルはピアノブラックにメタリックなピノストライプ入り。この内装色はこの個体に限っての話だが、AMGには高級かつ硬派なイメージを持っている63歳の筆者には眩し過ぎるインテリア。ゴールドのボディカラーもパナメリカーナ・グリルもSクラスAMGのユーザー層が変わってきていることを感じる。 このクルマには802ps! 1430Nmのパワーが与えられているからたまげる。足元を見ると巨大なキャリパーにカーボンセラミックの大径ブレーキローター。ホイールはセンターロック。「凄い」を全部投入してみました的なクルマの走りに興味が沸く。 走り出すと恐ろしく静か。しかし、アクセルを踏み込むとV8ツインターボが目を覚ます。決して吠えはしない。強烈だが、ジェントルな速さ。ワインディングでは、有り余るパワーできつい上り勾配であることをドライバーに感じさせない。コーナリング中の路面のうねりを意に介さない安定感。2690kgという重さを感じないトレース性の良さ。これはもう魔法だ。


プジョー408GTハイブリッド「日常がオシャレになる」

全長も全幅もトヨタのハリアーと同じくらいだが、全高はハリアーの1660mm(このクラスのクルマたちはほとんど同じような全高)に対しプジョー408GTの全高は1500mmと圧倒的に低い。このタテヨコ比とファストバックデザイン、そしてグラマラスなフェンダーの造形がこのクルマをカッコ良く、スマートに見せている。それでいて2790mmというロングホイールベースによって後席も広い。しかもトランクスペースは奥行きも高さも充分にある。この408GTには1.2リッターターボモデルもありそれがまた排気量の小ささを感じさせない走りをするのだが、1.6リッターターボ +モーターのハイブリッドとなるとさらに走りは静かでスムーズ。優しい乗り心地だ。プジョーお得意の小径ステアリングの操作性もその上側に配されたメーターの視認性もとても良いだけでなく、高級感もある。しかもワインディングの走りはしなやかかつ軽快! 電動パワステの制御に若干の違和感があったが、ちょっと慣れればワインディングのドライブが楽しめる仕上がり。今まで通りの日常をオシャレに変えてくれる魅力がある。




ルノー・メガーヌR.S.ウルティム「意地とプライドを感じる」

今回の原稿では「最後の」がやたらに登場するが、このクルマは最後のR.S.(ルノー・スポール)、1976台の限定モデル。先代からシビック・タイプRとニュルブルクリンク北コースのラップタイムを競ってきたFWDスポーツモデルだ。今回のモデルにはフルストローク時の安定性を確保するダンパーインダンパーのメカニズムを採用。その分、通常のストローク域では従来よりソフトなセッティングを可能とした。そしてもう1つの武器が4WS、後輪操舵だ。通常は60km /hまで。しかしスポーツ・モード、レース・モードでは100km /hまで後輪が前輪と逆方向にステアする。これは後輪に駆動力が無いFWDだからこそだが、慣れるまでは違和感の塊! を覚悟していたが、違和感などまるっきり無い! 試乗会場に設定されたスラロームでもワインディングでも違和感を感じることはなく、4輪が一体感のある仕事をする。ルノー・スポールのエンブレムを持つ最後のモデルとしての意地とプライドを感じるFWDとして異次元のコーナリングマシンに仕上がっていた。元気になれる1台!

(ENGINE2024年4月号)