上質な乗り心地と高い静粛性など、洗練された電気自動車=バッテリーEV(BEV)らしい走りが魅力のアウディQ8 e-トロン。ちなみに、2019年の発売当時(日本には2022年に導入)、e-トロンの車名で販売されていたが、本国では2022年、日本では2023年に行われたマイナーチェンジを機にQ8シリーズに組み込まれた。

e-トロン最長の619km

今回、「Q8スポーツバック55 e-トロン・クワトロSライン」に、一充電あたりの走行距離が619km(WLTCモード)まで伸張するパッケージ・オプション、「レンジプラスパッケージ」が設定された。ベースモデルの航続距離は501kmだからその差は118km。なお、619kmの航続距離はアウディのBEVとしては最長となる。

バーチャル・ミラーと低抵抗タイヤ&ホイール

「レンジプラスパッケージ」は、小型カメラを用いた「バーチャル・エクステリア・ミラー」のほか、風の流れを最適化するフラット形状を持つ「5アーム・エアロデザイン・グラファイトグレー(8.5J×19)」のアルミホイール、転がり抵抗の少ない255/55R19タイヤを組み合わせにより、走行時の摩擦抵抗を低減。効率が最適化することで、一充電あたりの航続距離を伸ばしている。

バーチャル・エクステリア・ミラーは、一般的なドア・ミラーに対して空気を低減させることが装着の目的だ。もちろん風切り音も低減されるので快適性の向上にも寄与する。また、夕暮れ時や夜間、悪天候時などでも鮮明な映像で後方を確認できるのもメリットのひとつだ。視界の位置や角度は、近接センサー付きタッチディスプレイに触れることで調整できるため、駐車時や右左折時、高速走行時など、シーンを問わず最適で高い視認性が得られる。

最新のバッテリー技術を搭載

フロア下に敷き詰められた駆動用バッテリーはベースモデルと同じで、114kWhの容量も変わらない。バッテリーは、前回のマイナーチェンジ時に製造方式をスタッキング方式と呼ばれる折り重ねるように配置される方法に変更。これにより、製造工程で生まれる電極材の隙間を極力なくし、先代からバッテリー寸法やモジュール数を変更することなくエネルギー密度を向上させることで、バッテリー容量の増加を実現している。加えて、セル内の化学物質の配合が変更されたことで、さらなるエネルギー密度の向上も果たした。また、エネルギー回生効率を上げることで空力性能やモーターの高効率化も実現している。

Q8スポーツバック55 e-トロン・クワトロSラインの価格は1317万円で、レンジプラスパッケージは36万円。航続距離を最重要視するのであれば、リーズナブルな設定といえるかもしれない。

文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)