デザイン、機能性、サステナブルな暮らし……。
北欧の住まい、暮らし方は、私たちが心地よいと感じるポイントがたくさんありそう。
その知恵、スタイルを取り入れている方々を取材しました。

今回お宅を拝見したのは・・・
小林 恭さんマナさん
夫婦で「設計事務所ima」を主宰。「マリメッコ」をはじめ、物販や飲食店のインテリアからプロダクトのデザインまで、幅広い分野で活躍中。


シンプルで無駄がなく機能的。
北欧デザインは和の意匠に通じるものがあります

壁一面のガラス棚が圧巻のリビング。石本藤雄さんの陶板をはじめ、貴重なアートをほこりや愛猫に落とされる心配なく飾れます。

「マリメッコ」をはじめ北欧ブランドの店舗デザインを手がける小林さん夫妻。フィンランドは仕事で何度も訪れ、そのたびに豊かな自然に囲まれた暮らしに憧れていたそう。

「いつかは自分たちも」と土地を探し、2016年、東京・三鷹市の井の頭公園の隣に、職住一体の家を建てました。

1階はオフィスと兼用で、2階がプライベートスペース。白が基調のリビングにはカラフルなアートが飾られ、大きな窓の向こうに公園の緑が広がります。

「木々の景色を窓いっぱいに愛でたくて、テラスの手すりはガラスにしました。春は新緑、秋は紅葉が見事ですよ」とマナさん。

「冬が長く、家で過ごす時間の多い北欧ではインテリアが想像以上に大事に考えられています。色使いもそうですし、照明もそう。日本はまだ部屋全体を照らす天井灯が多数派ですが、北欧は暗がりを味わう間接照明が主流。わが家も2階には天井灯を一切つけず、ほのかな灯りでくつろいでいます」と恭さん。

シンプルで無駄がなく、機能的な北欧流の住まいは仕事や家事がはかどり、片づけに手間がかからないのも魅力。

この家に越してから休日はきちんと取って、残業はほぼしないと言います。「人生を楽しむことも北欧の暮らしから学んだことですね」

心が楽しくなる美しいインテリア

「よく〝カラフルなおうちですね〟と言われますが、建物自体は至ってシンプル。
だからこそポップな色の家具やアートが映えるし、模様替えも簡単なんです」と恭さん。
リビングのガラス棚のアートは1年に1回総取り替えし、いつも新鮮な気持ちで楽しんでいるそう。

壁面の取っ手を引くと、なんと収納が登場。
「マリメッコ」をはじめとする北欧のテキスタイルや、リネン類がすっきり収まっています。

階段の踊り場にはイタリアの陶芸家、グイド・デ・ザンと鈴木マサルさんのオブジェをディスプレイ。訪れる人の目を楽しませています。

玄関脇の一室は打ち合わせ室兼ダイニング。仕事中は天井灯を使いますが、スタッフの帰宅とともにオフ。

「代わりにスタンドやポータブルライトを灯し、ビールを開けたらプライベート時間です(笑)」とマナさん。
お気に入りのポータブルライトは「TURN PLUS」。

無駄のない動線と機能性を考えたつくり

動線や間取り、収納計画によって職住をやんわりと分け、仕事や家事の効率をアップ。
公園の景色を優先して北向き開口にしたことから、断熱と採光計画は特に熟考したそう。
表面的なデザインだけではなく、使い勝手を計算し尽くした設計が快適な暮らしの基になっています。

キッチンが、オフィスと打ち合わせ室兼ダイニングをつなぐ通路を兼ねて省スペース。

2階にはランドリールームを設け、衣類を洗って干して畳むまで1室で完結します。
「洗面室に洗濯機を置かずに済み、取りこんだ洗濯物がリビングに散らばることもなく快適です!」

自然とともに暮らす、という心地よさ

「公園の中心付近はにぎやかですが、この辺りは人も少なく、園内も整備され過ぎていなくて雑木林みたい。木の葉の色合いから季節を感じられて贅沢ですね」とマナさん。
愛犬いちごちゃんの散歩に加えて毎日1時間ほどウォーキングし、豊かな自然を満喫しています。

春から秋はテラスで朝食を楽しむおふたり。
「野鳥が可愛いんですよ。食料の少ない冬だけエサ台を設置して、さえずりのお礼をしています」

リビングにはふたり共有のものだけ。
私物を持ち込まないのがルールです

恭さんのレコードや、マナさん好みのアートはそれぞれの部屋に収めて、リビングには持ち込まないのがルール。
「お互いの心の安定のためでもありますし(笑)、テイストの違うものを混在させないほうが、ものも空間もすっきり美しく見えますから」と恭さん。

USEN放送でDJも務めている恭さんの部屋。若いころから集めに集めたレコードはなんと8,000枚!
「以前の住まいではリビングに置きっぱなしにしたレコードが、よくケンカの種になっていました」

マナさんの部屋。ちょっぴりキッチュなアートはこちらが定位置。


撮影/大森忠明 文/早川誓子

※大人のおしゃれ手帖2024年5月号から抜粋
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