SNSやインターネットの普及により、以前に比べて不法行為を非難する声が耳に入るようになったと感じる方も多いでしょう。中には、昔は知らない人に非難されるほどではなかった行為が、現在ではどう受け取られるのかを気にしている方もいるはずです。   そこで、本記事では神社の大杉への火災を想定して、慰謝料が発生するのか解説していきます。加えて、慰謝料や損害賠償、不法行為などの周辺知識についても解説します。   昨今で身近になってきた慰謝料や損害賠償、不法行為などについて理解を深めることで、日々の生活をもう一度見直すきっかけになるかもしれません。

慰謝料とは?

慰謝料とは損害賠償の1つで、不法行為によって被った精神的苦痛に対する賠償金のことです。注意すべき点は、精神的苦痛を被った理由が不法行為かどうかにあります。当事者が精神的苦痛を受けていても、不法行為ではないと判断されれば慰謝料の請求は難しいようです。
 
一般的に、損害賠償は人的損害と物的損害に分けられます。人的損害の中にも身体的な被害により生じる財産的損害と、精神的な被害で生じる非財産的損害があります。慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償のため、該当するのは非財産的損害です。
 
物的損害は物に対して発生した損害のことで、物的損害も財産的損害と非財産的損害に分けられます。物を壊したことによる精神的苦痛が認められれば、物的損害でも慰謝料が発生しますが、非常に稀なケースです。
 

故意の火災は慰謝料の対象?

慰謝料は精神的苦痛に請求される賠償金のため、物である大杉への損害で発生するとは考えにくいでしょう。物的損害での精神的苦痛が認められ、慰謝料の請求を課せられた事例もあるようですが、非常に稀といえます。
 
慰謝料ではありませんが、物的損害における損害賠償として賠償金の請求をされる可能性は十分にあります。状況を考慮すると慰謝料の対象からは外れそうですが、慰謝料が属する損害賠償の対象にはなり得るでしょう。
 
しかし、火災における損害賠償は失火責任法によって適用されない場合があります。失火責任法とは、損害賠償請求を認める民法第709条に関連して、失火の場合は損害賠償責任を問わないことを定める法律です。ただし、故意性や重大な過失があった場合は適用されません。なお、失火とは過失によって引き起こされた火災のことです。
 
つまり、今回の神社での火災が失火と認められた場合は慰謝料を含め、損害賠償請求はされないことになります。もちろん、詳しい状況次第で損害賠償の請求対象になる可能性はあります。
 

不法行為において、時代は関係ない

法律の改正や時効などはあるものの、不法行為の善悪に時代は関係ありません。昨今はSNSやインターネットの発達により、不法行為に対して厳しくなったと錯覚する方も多いでしょう。しかしより正確にいえば、不法行為に厳しくなったのではなく、不法行為が可視化されるようになったということです。
 
不法行為の定義や断定は難しいですが、常日頃から不法行為と断定されないような振る舞いを意識することは可能です。人間には誰にでも失敗の可能性があり、いわゆる過失を犯してしまうことはあるでしょう。重要なのは、故意性や重大な過失の有無です。
 
いずれにせよ、悪意を持った行動は、損害賠償などの責任を問われる可能性があるということです。
 

慰謝料の発生は考えにくいが、損害賠償の対象にはなり得る

慰謝料とは損害賠償の1つであり、不法行為が原因で精神的苦痛を被った場合に対する賠償金のことです。精神的苦痛の原因が不法行為であったかどうかが争点の1つになり、不法行為と認められなければ慰謝料を請求できないこともあります。
 
神社の大杉に対する火災で精神的苦痛を被ったとは判断されにくいため、慰謝料を請求される可能性は低いでしょう。しかし、物的損害による損害賠償の対象には十分になり得ます。失火責任法により損害賠償を免れる可能性もありますが、故意性の有無や過失の大きさによって適用されないこともあります。
 
慰謝料の発生は考えにくい行為ですが、状況次第で損害賠償の対象になる可能性は十分にあるといえるでしょう。
 

出典

e-Gov民法 不法行為
e-Gov 明治三十三年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー