在宅勤務は労働管理がしづらく、部下を管理する立場だと頭を悩ませる要因になることがあります。本記事では、間違って祝日に働いた部下に給料を支払う必要があるのか、ガイドラインや法律を踏まえて解説します。

在宅勤務での休日労働

厚生労働省が発表しているテレワークのガイドラインによると、休日労働は、労使協定や就業規則などで、特別の指示や事前の許可がある場合を除き、休日労働をしてはならない旨を規定して使用者の具体的指揮監督下で行わせるとしています。
 
事前許可のルールを徹底した上で、それでも休日労働が自発的に行われた場合に、少なくとも次の3つすべてに該当する場合は「労働基準法の労働時間」に該当しないとされています。
 

(1)使用者から強制されたり義務付けられたりしていない
(2)業務量が過大であったり、期限の設定が不適切であったりなど、労働をせざるを得ないような使用者からの指示がない
(3)休日にメールが送信されていたり、休日に仕事をしなければできないような成果物の提出がされていたりなど、休日に仕事を行ったことを客観的に推測できるような事実がなく、使用者が休日の仕事を知りえなかった

 
したがって、事前に就業規則等で許可なく休日労働をしてはならない旨を定めており、かつ(1)〜(3)すべてに該当していれば労働時間にあたらないため、給料を払わなくてもよい可能性があります。
 
ただし、実際に払わなくても問題ないかは社労士や弁護士に相談して確認することをおすすめします。
 
また、部下が実際に祝日に働いているかを確認するため、パソコンの画面の記録や仕事の進捗(しんちょく)確認などを行いましょう。
 

祝日労働の場合の割増賃金

祝日に労働をしており給料を払わなくてはならない場合、さらに割増賃金が発生する可能性があります。割増賃金が発生するかは、祝日が法定休日か、または労働日かなどでそれぞれ違います。
 
法定休日とは、労働基準法35条により、週に1日以上または4週間を通じて4日以上、労働者に対して与えなくてはならない休日です。
 
労働契約や就業規則に定めがある場合はその日、定めがない場合は日曜から土曜日までで一番後ろにある休日です。
 
例えば、土日休みであれば土曜日が法定休日です。
 
割増賃金は、原則として法定労働時間である1日8時間(労働基準法第32条)、1週間あたり40時間を超える労働をした場合、通常の賃金に対して25%以上増額した残業代を出す必要があります。月60時間を超える時間外労働については50%以上増額した賃金を払わなければなりません。
 
なお、法定休日に働いた場合、通常の賃金に対して35%以上50%以下の割増賃金を払う必要があります。
 

祝日が法定休日の場合

働いた時間全てに対して残業代が発生し、割増賃金として通常の賃金に対して35%以上の賃金を支払う必要があります。
 

祝日が法定外休日の場合

法定労働時間内の労働は残業代として通常の賃金、法定労働時間を超える部分には25%以上の割増賃金が発生します。
 

祝日が労働日の場合

所定労働時間を超える残業部分に対してのみ残業代が発生します。
 
法定労働時間内の残業であれば通常の賃金、法定労働時間を超える部分は25%以上の割増賃金となります。
 

まとめ

部下が間違えて祝日に働いてしまった場合、就業規則などで許可なく働いてはいけない旨があるかを確認しましょう。その上で、休日労働が必要なほどの業務過多になっていないか、むちゃな締め切りになっていないかを確かめ、社労士などの専門家に相談することをおすすめします。
 
給料を支払うのであればいくら支払う必要があるのかを算定するため、祝日が労働日であるか、法定休日であるかを確認しましょう。
 

出典

厚生労働省 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
厚生労働省 在宅勤務での適正な労働時間管理の手引
 
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士