■要約



アップルインターナショナル<2788>は、本体が日本からの中古車輸出を主要事業とし、連結子会社が日本国内で中古車買取販売事業のフランチャイズチェーン本部を、グループ会社が加盟店として買取店舗「アップル」直営店を運営し、持分法適用関連会社が、タイでオートオークション事業を展開している。変化の乏しい国内市場よりも、ダイナミックに変わる海外市場で知見を積み、自動車業界における大変革に対処する経営戦略を採る。



1. 2023年12月期の業績概要

2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比5.8%増の30,911百万円、営業利益が同24.7%減の1,098百万円、経常利益が同25.3%減の1,271百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同24.3%減の1,007百万円となった。期初計画では、自動車メーカーからの供給不安定により商品確保の見通しが不透明であったことから、売上高を21,664百万円、経常利益を601百万円と控えめな予想だった。円安傾向が続いたことから中古車輸出事業も増収基調を保ち、期中に通期予想を上方修正した。実績は増収減益であったが、期初計画以上の利益を実現したことから、1株当たり配当金を前期の5円から普通配当10円、特別配当5円、計15円に引き上げた。



2. 2024年12月期の業績見通し

2024年12月期の連結業績は、売上高が前期比4.4%減の29,563百万円、営業利益が同17.6%減の904百万円、経常利益が同17.5%減の1,048百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.4%減の781百万円を予想している。減収減益の予想は、自動車関連メーカーによる不正行為に伴う新車の生産停止と不安定な供給状況、中古車流通の停滞を懸念したことによる。同社は、中古車輸出事業の安定的な収益実現のため、消費者ニーズが充足されていないものを補うことで需要を喚起する。それらは、半導体不足により新車販売においても納車時にスマートキーが1個しか引き渡しされていない状況下、同社では独自にスマートキーを開発し中古車販売時に2個のスマートキーを納入、また純正が高額で入手不可能なエアロパーツなどの自動車部品、輸出車両向けのコネクテッド機能のデータ更新サービスなどの提供である。輸出先国の輸入許可書(AP等)の発給時期に合わせて前期末に積み増していた在庫が、2024年12月期に入り順調に捌けていることから、期初計画を上回る順調な滑り出しとなっている。2024年12月期も期初予想以上の業績を上げ、配当の上積みを目指す。



3. 成長戦略

電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)シフトは、欧米で見直しの機運が出ているが、タイやインドネシアなどの東南アジアでは異なる様相を呈している。タイ政府は、バッテリー式電気自動車(BEV)の時代になっても「アジアのデトロイト」の地位を確固たるものにするため、EV需要を喚起し、投資を促すための奨励制度を採っている。BEVの販売補助金を支給する条件として、輸入車の場合、後年に販売台数と同等かそれ以上をタイ国内で生産することを義務付けている。これらの制度を利用した中国のEVメーカーは値下げ攻勢をかけ、タイ市場で急速にシェアを拡大している。中国系自動車メーカーは、2024年にタイにおけるEVの現地生産を開始するが、日系4社もタイでのEVの生産体制構築のため、今後5年間で合計1,500億バーツ(約6,200億円)を投資する計画が明らかにされている。



同社グループ企業がタイでオートオークション事業を行っていることから、変化の速い市場で先進的な取り組みを試みており、2024年3月から人工知能(AI)査定システムの導入実証を行う。軌道に乗れば、データ登録の時間短縮、人的リソースの極小化、個人のノウハウに依存しない査定品質が実現できる。普及が日本より早いタイで、EVに関連するデータの集積及び活用を進める。HV・EVのバッテリー再生事業を行う際に、収集データが役立つであろう。新規の試みをタイで行い、成功したビジネスモデルを日本や他のアジア諸国に展開することを中長期の成長戦略としている。



■Key Points

・2023年12月期は減益ながらも、10億円を上回る経常利益を確保

・2024年12月期は期初計画を上回る好調な滑り出し

・基準とする年間普通配当は5円から10円に倍増



(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)