勇壮な戦国絵巻を繰り広げる国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」は25日、福島県の相双地方で開幕した。猛暑による影響を避けるため、従来の7月から2カ月前倒しされ、初めての開催となった。
 相馬野馬追は1874(明治7)年から新暦の7月に行われていたが、前回の野馬追で熱中症による救護者が相次いだことなどから日程変更に向けた議論が進み、昨年11月に5月開催が正式決定した。今年は宇多郷(相馬市)、北郷(南相馬市鹿島区)、中ノ郷(同市原町区)、小高郷(同市小高区)、標葉(しねは)郷(浪江町、双葉町、大熊町)の各騎馬会から約390騎が出陣し、初夏の萌(も)える緑の中を駆け抜ける。
 総大将を擁する宇多郷は相馬市の相馬中村神社から出陣。総大将を務める相馬家33代当主相馬和胤(かずたね)さんの孫言胤(としたね)さん(15)は甲冑(かっちゅう)に身を固め、騎馬武者らと市街地へと繰り出した。初陣となる言胤さんのいとこ賀胤(よりたね)さん(17)は、りりしい若武者姿を披露した。
 本祭りの26日は南相馬市原町区の雲雀(ひばり)ケ原祭場地で甲冑競馬や神旗争奪戦を繰り広げる。同日、標葉郷の双葉町騎馬会は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から14年ぶりに町内で騎馬武者行列を復活させる。これで野馬追が展開される相双地方の5市町の全てで、震災と原発事故で休止していた関連行事が再開する。最終日の27日は同市小高区の相馬小高神社で野馬懸(のまかけ)が行われる。