更年期不調や仕事など日々さまざまなストレスにさらされる50代。自律神経が乱れやすく、「だるい」「疲れやすい」「眠れない」などの不調に悩まされる年代です。そこで自律神経のお悩みに効く、毎日の睡眠や生活習慣について、クイズ形式で紹介します!

自律神経って何?体の機能を保つための“司令塔”

自律神経とは、呼吸や心拍、体温調節、消化吸収など、生きていく上で欠かせない機能をコントロールしている司令塔。活動時に働く「交感神経」と、休息時に働く「副交感神経」がお互いにバランスを取り合うことで、体の機能が正常に保たれ、日々健康に過ごすことができます。

ところが、日々の生活習慣や環境の変化、ストレスによって自律神経を酷使し続けていると、「だるい」「疲れやすい」「眠れない」など、さまざまな不調を招く結果に。

そこで、自律神経のお悩みに効く、正しい生活習慣(睡眠・食事・運動・入浴)をクイズ形式で解説!疲労医学が専門の「東京疲労・睡眠クリニック」院長・梶本修身さんに教えていただきました。みなさんも、自分の生活習慣を照らし合わせながら回答してみてください。

疲労回復・快眠に効く!自律神経のお悩み解決クイズ

疲労回復・快眠に効く!自律神経のお悩み解決クイズ

<休息の要!睡眠睡編>

Q1 毎日だる重。疲労がたまって日中に眠気が……。パワー回復のための昼寝の最適時間は、以下のAとBのどちら?

<休息の要!睡眠睡編>

A:ちょっと短め「30分」
B:しっかり熟睡「60分」
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A1 正解は、Aのちょっと短めの「30分」

自律神経が疲れやすい50代以降こそ、「昼寝」をして休息の時間を持つことは重要です。高まった交感神経がいったんオフになることで、自律神経のバランスが整い、疲労回復につながります。

ただし、夜の安眠を妨げないように、時間は30分以内に収めるのがベスト。昼寝の直前ににコーヒーなどのカフェインをとると、20〜30分後に覚醒作用が起き、すっきりと目覚めることができるので試してみてください。

Q2 最近、なかなか夜に寝つけず、眠りも浅い。寝る前に飲むといいものは?

Q2 最近、なかなか夜に寝つけず、眠りも浅い。寝る前に飲むといいものは?

A:ほどよい温かさの「白湯」
B:ほんのり酔える「ホットワイン」
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A2 正解は、Aのほどよい温かさの「白湯」

寝る前のホットワインは、一見リラックス効果が高そうですが、アルコールは覚醒作用があるため安眠を妨げやすく、せっかく眠りにつけても途中で目覚めてしまいことがしばしば。さらに、アルコールは脱水症状を起こしやすく、ますます眠りが浅くなる悪循環にもつながります。

寝る前は、「コップ1杯(200cc程度)の白湯か、常温の水」を飲むようにしましょう。交感神経を刺激しないためにも、冷たすぎず熱すぎない、ほどよい温かさの白湯を飲むのがベスト。

寝る前の水分補給によって血流が安定すると、副交感神経が優位になり、より深くぐっすり眠れるようになります。

Q3 いよいよ夏到来。冷え性が気になるけれど、睡眠時の最適なエアコンの設定温度はどれくらい?

Q3 いよいよ夏到来。冷え性が気になるけれど、睡眠時の最適なエアコンの設定温度はどれくらい?

A:ちょっと高めの「28℃」
B:ちょっと低めの「23℃」
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A3 正解は、Bのちょっと低めの「23℃」

50代女性の中には、エアコンの冷気が苦手で睡眠時の設定温度を高めに設定する人も多いです。しかし、室温が上昇すると体温調節のために自律神経が酷使され、脳の働きが低下してしまい、ぐっすり休息をとることはができません。

すると、だるさやめまい、集中力の低下など、さまざまな不調を招く原因に。室温が25℃以上になると、1℃上がるごとに2%ずつパフォーマンスが低下するという研究結果もありるほど。

脳にとって快適な環境は、室内温度が22〜24℃、湿度は50%程度。睡眠時のエアコンの温度も「22〜24℃」に設定し、朝までつけっぱなしにしておくのがベストです。

その場合、薄手のタオルケットだけだと体が冷えてしまうので、布団をかけるなどして調整しましょう。

頭は涼しく、体は暖かく。それによって睡眠の質が高まるだけでなく、自律神経や脳の疲労を防ぐことができるのです。

<体の資本 食事編>

Q4 最近、だる重疲れ気味。疲労回復にいい食事はどちら?

Q4 最近、だる重疲れ気味。疲労回復にいい食事はどちら?

A:スタミナがつきそうな「うなぎ」 
B:ダイエッターご用達「鶏むね肉のサラダチキン」

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A4 正解は、Bのダイエッターご用達「鶏むね肉のサラダチキン」

「疲れたときこそ精をつけよう!」と、うな重や焼き肉などの、いわゆる「スタミナ食」を食べる人が多いですが、こうした脂肪分が多い食事は、胃腸への負担がかかり、かえって疲れがたまる原因にもなります。

一方、鶏むね肉には、自律神経の中枢を修復する「イミダペプチド」という成分が豊富に含まれ、体の疲労回復だけでなく、脳疲労の軽減にも優れた効果を発揮してく れます。

鶏むね肉の1日の摂取量の目安は100g。コンビニなどで売られているサラダチキンは100g程度なので、忙しいときはサッと食べられておすすめです。

<健康づくりに!運動編>

Q5 疲労に負けない体をつくりたい。運動するならどちら?

Q5 疲労に負けない体をつくりたい。運動するならどちら?

A:少し早歩きの「ウォーキング」
B:少し息が上がる「ランニング」
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Q5 正解は、Aの少し早歩きの「ウォーキング」  

心拍数が上がるような、ペースが速めのランニングやジムでの激しい筋トレは、自律神経を酷使してしまい、さらなる疲れを引き起こしかねません。

自律神経の衰えが気になるオトナ世代は、息が上がらない程度の少し早歩きのウォーキングがおすすめ。自律神経に負荷をかけることなく、体力を維持・向上させることができます。

20分程度、歩くだけでも十分、運動効果アリ。足の筋肉を動かすことで血流が良くなり、自律神経のバランスが整いやすくなります。特に春から夏の時期は、目から入る紫外線によって自律神経を疲れさせてしまうので、サングラスの着用もお忘れなく。

<リラックスする入浴編>

Q6 一日バタバタで疲労困ぱい。だる重疲れを取るのに最適なお風呂の温度は?

<入浴> Q6 一日バタバタで疲労困ぱい。だる重疲れを取るのに最適なお風呂の温度は?

A ちょっと熱めの「42℃」
B ちょっとぬるめの「39℃」 
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A6 正解は、Bのちょっとぬるめの「39℃」

熱いお風呂は疲れが一気にとれるイメージがありますが、体温を調節するのに自律神経に負荷がかかり、余計に疲れがたまってしまいます。さらに長湯をして汗をかくのも自律神経を疲弊させる原因に。

疲労を感じた日こそ、ぬるめの38〜40℃のお湯にさっと浸かるのが最適。湯船に浸かる時間は、汗をかかない程度に10分以内(夏場は5分程度)にとどめておくといいでしょう。体がほどよく温まると副交感神経が高まり、眠りにつきやすくなります。

50代からは「がんばらない」ことを意識して

50代からは「がんばらない」ことを意識して

自律神経のお悩み解決クイズ、いかがでしたか?

疲労回復や快眠のために良かれと思って取り組んでいた生活習慣が、かえって自律神経に負荷をかけてしまうこともあります。

「24時間休みなく働いている自律神経は、体の中で最も老化が激しく、その機能は加齢とともにどんどん低下していきます」と、梶本さん。50代になると20代の頃に比べて3分の1まで機能が低下してしまうと言います。

「自律神経の老化は、目に見えないだけに日常生活でついつい無理をしてしまいがち。働きすぎ、食べすぎ・飲みすぎ、運動しすぎなど、自律神経に負荷をかけると、さらに老化のスピードを早めてしまいます」(梶本さん)
特に更年期を迎える50代は、女性ホルモンの分泌量が急激に減少。その影響により、自律神経のバランスも乱れやすくなり、さまざまな症状が出てきやすくなります。

更年期に突入し、「イライラが激しくなった」「眠りが浅くなり、寝汗やいびきもひどくなった」など体の不調が気になり始めた場合は、婦人科医と相談し、「ホルモン補充療法」を取り入れるのも一つの手です。

「ホルモン補充療法によって更年期のつらい症状を改善することで、眠りの質が高まり、疲労回復をはじめ、自律神経の修復にもつながりやすくなります」(梶本さん)

50歳を超えたら、とにかく「無理をしない」「がんばらない」ことが肝心。自分にストレスを与えず、常に心地よさを大事にすることが、自律神経の働きを高め、活力をアップさせてくれます。

次回は「脳の疲労をスッキリ回復させる睡眠術」をご紹介します。 

教えてくれたのは梶本修身(かじもと・おさみ)さん

教えてくれたのは梶本修身(かじもと・おさみ)さん

かじもと・おさみ 東京疲労・睡眠クリニック院長。医師・医学博士。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。1962(昭和37)年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年から産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。主な著書に『すべての疲労は脳が原因Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(集英社新書)など。

取材・文:伯耆原良子 構成:鳥居史(ハルメク365編集部)