ローマの中世芸術おすすめスポット①:サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂

Santa Maria Maggiore Front, Public domain, via Wikimedia Commons

サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂はローマ四大教会の1つに数えられ、カトリックの重要なセレモニーが行われる由緒正しい教会です。ローマの中央駅テルミニから徒歩7-8分の距離にあります。

5世紀に建立されたサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂は、長いときのなかで改修されていまにいたるため、さまざまな時代の芸術が混ざり合っています。しかし、教会建築の基本的な部分は5世紀のオリジナルの形を維持しており、現存するバシリカ様式(初期キリスト教時代の建築様式)の数少ない例の1つです。

RomaSMariaMaggioreArcoTrionfaleDestra, Public domain, via Wikimedia Commons

教会内に入るとまず身廊(メインホール)の上部の壁が美しいモザイクで飾られていることがわかります。この身廊のモザイクと主祭壇エリアの手前にある凱旋門型モザイクは5世紀からのオリジナルがそのまま残っており、後陣部分は13世紀に追加されたものです。

後陣とは:
主祭壇の後ろの壁の部分。教会のもっとも重要な装飾がほどこされることが多い。一般的には天上に向かって半円状の形になっている。

貴重な初期キリスト教時代のモザイクを鑑賞したい方だけではなく、きらびやかなローマカトリックの歴史を感じたい人におすすめのスポットです。

ローマの中世芸術おすすめスポット②:サンティ・コズマ・エ・ダミアーノ大聖堂

Santi Cosma e Damiano Rom, Public domain, via Wikimedia Commons

サンティ・コズマ・エ・ダミアーノ大聖堂は、フォロ・ロマーノのすぐ近く(内部?)にある教会です。教会への入り口はフォロ・ロマーノの外部に位置しているため、フォロ・ロマーノに入場せずに無料で入ることができます。

教会の歴史は6世紀までさかのぼります。教会の全体的な装飾は近代的な修復がされていますが、後陣モザイクは6世紀のものです。教会の名前にもなっている2人の聖人コズマと聖ダミアーノが、ローマの守護聖人である聖パウロと聖ペトロと一緒に描かれています。

天から降りてくる(もしくは昇天している?)イエスの周りには、カラフルな光が表現されています。パッと見るだけではモザイク画(宝石やガラスなどを埋めて作られた画)であることを忘れるほどの精巧でまばゆい作品です。

ローマの中世芸術おすすめスポット③:サンタ・プデンツィアーナ大聖堂

Apsis mosaic, Santa Pudenziana, Rome , Public domain, via Wikimedia Commons

サンタ・プデンツィアーナ大聖堂は、ローマに現存するキリスト教モザイク画のなかでももっとも古いものの1つが残っている教会です。テルミニ駅から徒歩10分ほどの好立地にありながら、ひっそりとした佇まいでいつも落ち着いた雰囲気があります。観光客はほとんどいません。

サンタ・プデンツィアーナ大聖堂の後陣モザイクは、玉座に座るイエスを中心に十二使徒が描かれる構図です。天上はカラフルな光でゆらめいており、背景には街のようなものが描かれています。

この作品は何度か修復を受けているものの、古代ローマ時代の写実的な芸術様式で描かれたキリスト教美術の例として、非常に見ごたえがあります。中心地にある教会なので、喧騒を離れてほっと落ち着いて美術鑑賞したい方におすすめです。

ローマの中世芸術おすすめスポット④:サンタ・プラッセーデ大聖堂

Rome Santa Prassede apse , Public domain, via Wikimedia Commons

サンタ・プラッセーデ大聖堂は、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂やサンタ・プデンツィアーナ大聖堂とすぐ近くのエリアにあります。これらの3つの教会は徒歩5分圏内にあるので教会巡りに最適です。

サンタ・プラッセーデ大聖堂にまつられている聖プラッセーデは聖プデンツィアーナと姉妹で、どちらも殉教者(信仰のために命を落とした人)です。サンタ・プラッセーデ大聖堂の後陣モザイクには、聖パウロと聖ヨハネに紹介される2人の姉妹が描かれています。

後陣モザイクは9世紀のもので、カロリング・ルネッサンス様式が特徴です。力強い色味と象徴的な表現は、天上の国を美しく、そしてわかりやすく表しています。全体的な保存状態がよく広域にわたってモザイク装飾がほどこされているため、見れば見るほど新しい発見がある面白い作品です。

後陣のモザイクもさることながら、サンタ・プラッセーデ大聖堂にはゼノ礼拝堂と呼ばれる素晴らしい小部屋があります。内部全体をモザイクで覆われているため、至近距離で石のきらめきが感じられる場所です。

Santa Prassede - Mosaic, Chapel of San Zeno, Public domain, via Wikimedia Commons

ローマの中世芸術おすすめスポット⑤:サンティ・クアットロ・コロナーティ修道院

Coronati Oratorio , Public domain, via Wikimedia Commons

サンティ・クアットロ・コロナーティ修道院は、コロッセオから歩いて10分程度のところにある教会と修道院併設の施設です。教会も独特の雰囲気があって面白いですが、修道院の一室のフレスコ画は中世に興味がある方必見の作品です。

サンティ・クアットロ・コロナーティ修道院のフレスコ画は壁を四方ぐるっと飾っており、部屋のなか全体が優しい色味に包まれています。ところどころ損傷はあるものの、13世紀のフレスコ画が残っているローマでは数少ない例です。

Frescos Santi Quattro Coronati, Public domain, via Wikimedia Commons

一連のフレスコ作品のなかでもとくに重要なのが、「Donatio Constantini(コンスタンティヌス帝の寄贈)」のシーンです。

「Donatio Constantini(コンスタンティヌス帝の寄贈)」とは:
4世紀初頭に書かれたとされていた “偽造” 文書で、コンスタンティヌス帝が当時の教皇シルベスター1世とその後継者にローマなどの土地の政治的な権力を譲渡したと記したもの。この文書を根拠に、宗教的な指導者だけではなく、ローマを含む教皇領の政治的統治者として治世に携わった。

サンティ・クアットロ・コロナーティ修道院のフレスコ画には、コンスタンティヌス帝が教皇シルベスター1世に権威を譲渡するようなシーンが描かれています。独特の色味と愛らしい人物の表情は中世好きにはたまらない作品です。

ローマの中世芸術おすすめスポット⑥:サンタ・サビーナ大聖堂

Rom, Basilika Santa Sabina, Public domain, via Wikimedia Commons

サンタ・サビーナ大聖堂はあまり有名ではないものの、中世美術における大きな価値のある教会です。テヴェレ川を見下ろすアヴェンティーノの丘にあり、5世紀からの歴史があります。サンタ・サビーナ大聖堂は、初期キリスト教時代の質素で謙虚な雰囲気が感じられる作りになっており興味深い建物です。

この大聖堂の一番の見どころは、間違いなく木製扉でしょう。主祭壇と反対側にある正面扉は、5世紀前半に作られた木材彫刻でできているのです。木材という保存が難しい材質の彫刻が古代から残っている例は極めて珍しいため、美術史研究において重要な作品です。(実は筆者の修論のテーマでもあります)

Santa Sabina Portal, Public domain, via Wikimedia Commons

扉はいくつかの28枚の小さなパネルに区切られており、それぞれが新約聖書と旧約聖書のシーンを示しています(10枚は消失しており現存するのは18枚のみ)。長い時代を生き抜いてきた木製扉は、誰でも無料でアクセスできる場所で一般公開されています。隣接するオレンジ公園(Giardino degli Aranci)からの眺めも素敵なので、ぜひ足を運んでみてください。