■高級コニャックを定義したパイオニア「ヘネシー」

 フランス国王ルイ15世に仕えていたアイルランド人将校のリチャード・ヘネシーが1765年に創業したコニャックメゾンのヘネシーは、良質なオー・ド・ヴィー(原酒)の造り手として瞬く間に世界的な知名度を獲得した。コニャック造りに対する妥協を許さない姿勢は、環境保全という新たな側面を加えて現代に受け継がれている。そんなヘネシーはコロナ禍を耐え抜き、2021年にいち早く復活したメゾンでもある。

 ヘネシーは「VSOP」[1]として知られる特別なブレンドのコニャックを1817年に発売した。1870年には、世界で初めて新たな格付け「エクストラ・オールド」とともにコニャック「ヘネシーX・O」を発売。ヘネシーX・Oは、1947年からは特別なデキャンタに収められて販売されている。

[1]コニャックの成熟度合いによる等級で、ベリー、スペリオール、オールド、ペイルの頭文字からなる。

 そんなヘネシーには、前作の品質を超える新商品を造るというポリシーがある。ヘネシーのコニャックはすべて数量限定のため、ボトルやデキャンタ、パッケージなどの見せ方においても、さまざまなイノベーションに挑戦できる。アーティストのジュリアン・コロンビエや建築家のフランク・ゲーリーがデザインしたボトルや、コンテンポラリーアーティストの「フェイス・フォーティーセブン(FAITH XLVII)」と「ヘネシーV・S」のコラボレーションは、メゾンのイノベーションへの取り組みを体現している。

 ヘネシーは1600軒のブドウ生産農家と提携しながらコニャック造りに取り組んでおり、ブドウ畑の総面積は約3万2000ヘクタールにも及ぶ。コニャック造りの最終工程であるブレンディングを任されているのは、200年以上にわたってヘネシーのマスターブレンダーを輩出してきたフィリュー家出身のマスターブレンダーである。ヘネシーにはブレンディングの専門家を集めた「テイスティング コミッティ」と呼ばれる委員会もあり、そこで毎日コニャックが試飲・選別される。こうして味わいと品質が保たれているのだ。