車を運転する上で欠かせない、眼から得た視覚情報。それを脳に伝達し、身体を動かすことで人々は車を運転しているわけだが、その眼、脳、身体の連動機能を高める「ドライビングビジョントレーニング」が、一般向けサービスとして5月10日から提供されることになった。

 このドライビングビジョントレーニングを考案したのは、視能訓練士の国家資格を持つ新井啓介氏。眼科で働く傍ら、眼と脳と身体の連動機能を高めるビジョントレーニングの指導をスタートさせ、これまでにはプロボクサーの村田諒太や井岡一翔選手といった有名アスリートの他、レーシングドライバーでもJujuや加藤寛規の指導実績があるという。

 ドライビングビジョントレーニングでは、主に空間把握力、周辺把握力、判断連動力という3つの「見る力」を伸ばしていく。例えば空間把握力を鍛えれば、障害物や他の車両との距離感が測りやすくなり、周辺把握力が向上すれば、視野が広がることで信号や標識を認識しやすくなる。また判断連動力が身につくことで、咄嗟に素早いハンドル操作ができるようになる。

 こういった視覚機能が高まることで、危険を回避することができ、事故の予防、安全運転に繋げることができる。それだけでなく、こういった要素はレーシングドライバーがレースを戦う上でも活かされる。例えば実際にドライビングビジョントレーニングを受けたJujuは、スタートシグナルへの反応が向上したり、他車の動きが見えやすくなったというフィードバックをしているという。

 今回展開されるドライビングビジョントレーニングでは、上記の「見る力」を鍛えるための様々なトレーニングが用意されている。その一例を紹介する。

 まずは、距離の異なる場所にある点に目線を移し替えながら、瞬時にピントを合わせる「スイッチフォーカス」。これは眼の内部の筋肉を強化し、距離感や立体感、空間認知に繋げられるということで、レース前に実践しているレーシングドライバーもサーキットで見受けられる。

 他にも、3色に塗り分けられた三又の器具を投げられ、それをキャッチするようなトレーニングを見かけたことはないだろうか。これは3色の中から指定された色の棒を掴むトレーニング。動く対象物から情報を素早く取り入れ、どのようにして掴むかを瞬時に判断しなければならないことで、連動機能を鍛えることができる。その他、岩佐歩夢などが実践しているジャグリングも、視野拡大や空間認知に効果があるという。

 さらには手を近づけると光が消えるトレーニング器具「Fitlight」を使ったトレーニングもある。これは光ったFitlightに瞬時に反応して手足を使って消していくことで、空間把握力、周辺把握力、判断連動力の全てを総合的に高めることができる。

 筆者も上記のようなトレーニングを体験した結果、シミュレータを使ったハンドル操作やブレーキ操作の反応速度チェックで、トレーニング前と比べてコンマ1秒弱の反応速度向上が見られた。わずかな差に感じられるが、このわずかな差が一般道やサーキットでの危険回避に繋がることも大いにあるだろう。

 ドライビングビジョントレーニングは、3回分のトレーニングがセットになった基本メニューと1回分メニューがあり、企業や団体向けの6〜15人のグループトレーニング(基本メニュー50万円、1回分20万円)、少人数向けの2〜5人のミニグループトレーニング(基本メニュー25万円、1回分10万円)、個人でのパーソナルトレーニング(基本メニュー6万円、1回分2万5000円)に分かれている。出張形式のトレーニングサービスのため、専用フォーム(外部リンク)から予約する形式となっている。