2025年シーズンに向けて各チームがライダーラインアップの検討を進めているが、最も注目を集めているのはドゥカティだ。今シーズンから陣営に加わったマルク・マルケス、そしてプラマックのホルヘ・マルティンのどちらをファクトリーチームに昇格させるのかで、それ以外のチームにも大きな影響がある。

 マルケスはグレシーニへ移籍してから素早くマシンに適応し、既にかつてのような速さを発揮。先日行なわれたフランスGPでも13番グリッドからスプリントレースと決勝でともに2位となるなど活躍。それだけにファクトリーチームへ昇格するのではないかという見解も根強い。ただ、彼には解決すべきスポンサー周りの問題がある。

 マルケスはレッドブルを個人スポンサーとしているが、ドゥカティはライバルブランドのモンスターエナジーがサポートしている。ドゥカティとモンスターエナジーの契約は2025年までは続くため、もしマルケスがファクトリーチームに入るのなら、レッドブルのことを切り捨てる必要がある。

 レッドブルとの契約について、マルケスはファクトリー入りが叶うのならば終了させることも厭わないと示唆していた。しかし、マルケスが“切る”必要があるスポンサーは、実はレッドブルにだけ留まらず、あと4つのスポンサーが競合している。

 1つ目はサムスンだ。ドゥカティは同じく電子機器系メーカーのLenovoをスポンサーに迎えているため、競合してしまう。

 2つ目はマルケスが主要な広告イメージを務めている保険会社のアリアンツで、これもUnipolSaiと競合する。3つ目はアイウェアでお馴染みのOAKLEYだ。ドゥカティはCarreraがサポートしており、この点でも競合してしまう。

 そして最後はエストレージャ・ガリシアとなる。マルケス兄弟を長年スポンサードしてきたこのビールメーカーだが、スパークリングワインの領域で、イタリアのコンタディ・カスタルディと競合関係にある。

 つまり、マルケスはドゥカティファクトリーでレースをするのなら、こうした個人スポンサーの関係を、少なくとも一時的には終わらせなくてはならない。

■サテライトチームでも良い。ただし最新型バイクに限る

 そして前述のような要素が理由となっているのかは定かではないが、マルケスの言説はフランスGPで少し方向を変えている。

 第4戦スペインGPで、マルケスはドゥカティ陣営でファクトリーサポートを受けているプラマックへの移籍は考慮されるかと訊かれたとき、次のように語っていた。

「プラマックは良いチームだ。だけどオフィシャル(チーム)ではない」

 しかしその2週間後に行なわれたフランスGPで2位となったあと、マルケスはあくまでも必要なのはファクトリーバイクとファクトリーからのサポートであると強調しており、”ファクトリーチーム”へのこだわりを緩和させている。

「来年だけど、僕はどのブランドだろうと、どの”色”だろうと、どのバイクであろうと、最新の進化(したバイク)を手にしたいと思っている」

 もしマルケスが完全なファクトリーサポートを前提にプラマックでの挑戦を良しとした場合、彼は長年支援してくれたスポンサーを切ること無く、7度目の最高峰クラスチャンピオンへの挑戦に向けた扉を開くことができる。

 そしてこれは、ドゥカティにとってもベストなシナリオになるはずだ。2023年はランキング2位、そして2024年シーズンもファクトリーチームのフランチェスコ・バニャイヤを抑えてリードするマルティンという重要なライダーを他メーカーへみすみす流出させることなく、さらにマルケスという破格のライダーを起用することができるのだから。