フェラーリのシャルル・ルクレールは、期待をされながらも3位に終わったF1エミリア・ロマーニャGPの後、興味深い説明をしていた。
ホームレースのひとつであるイモラ戦に向けてフェラーリは、大規模なアップデートを行なってきた。既にこれまでレッドブルに肉薄するパフォーマンスを見せていただけに、その進歩には大きな注目が集まっていた。
実際にフェラーリは金曜のフリー走行で高いパフォーマンスを見せていたが、予選と決勝ではレッドブルとマクラーレンの後塵を拝する形となった。ただチーム代表のフレデリック・バスールは「予選で1-2になれば、レースでも1-2になれる」と強気な姿勢を見せていたし、ルクレールも「レースペースはかなり強力だったし、予選(でのパフォーマンス)が足りなかったんだ」と振り返っている。
予選でマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、オスカー・ピアストリ、ランド・ノリス(共にマクラーレン)に敗れて4番手となったルクレールは当初、ライバルに対してセクター1で改善の余地があったとしていた。そして彼は、これが「ここ数戦起きていること」だと感じていたという。それは開幕当初に言われていた、予選アタックに向けてタイヤを機能させることができていない、という問題の延長線上にあると思われていた。
しかしながらレース後にルクレールは、フェラーリが予選でうまくいかなかった点について口を開いた。曰く、電気エネルギーのデプロイメント(展開)の設定に問題があったというのだ。メインストレートが長く、トップスピードの速さがアドバンテージとなるイモラにおいて、これは痛手となる。
「なぜだか、マクラーレンやレッドブルと比べてパワーの戦略が若干違っていた。僕たちはターン2に向かうところで全てを失った」
そんなルクレールのコメントについて尋ねられたバスールは、ルクレールとは対照的にやや慎重な姿勢でこう答えた。
「(予選に関しては)確かにそうだが、理由は違う」
「主な理由は、マックスがスタート/フィニッシュラインからターン1にかけて大きなスリップストリームを得られていたということだ」
「しかし、予選ラップのターン1まで彼(フェルスタッペン)の方が速かったことは事実だ。我々はアプローチを変える必要がある」
ルクレールは以前のイベントでもこのような問題が発生したと主張していたが、今回の予選でパワー不足に悩まされていたという主張は正しいのか? ここでマシンのGPSデータを確認してみる。
イモラでルクレールは、予選で最速タイムを記録したアタックに入るタイミングで、時速4マイル(約6km/h)ほどフェルスタッペンから遅れていて、トップスピードでも時速6.2マイル(約10km/h)の差があった。しかしバスールが言うようにフェルスタッペンは前を走るニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)の後ろにつき、スリップストリームの恩恵を受けている。そのため比較対象をマクラーレンに移そう。
マクラーレンのピアストリとの比較では、ルクレールはラップ開始時に時速2.5マイル(約4km/h)、全体のトップスピードで時速2マイル(約3.2km/h)の遅れがあった。
ルクレールがフェルスタッペンに次ぐ予選2番手に入ったマイアミGPに目を向けても、ふたりの最速ラップでのスピードに違いがある。アタック開始のスピードはルクレールが時速1.2マイル(約2km/h)遅く、トップスピードはルクレールが時速193.2マイル(約311km/h)だったのに対し、フェルスタッペンは時速196.4マイル(約316km/h)だった。
フェルスタッペンは今季ここまで全てのレースで予選ポールポジションを獲得しており、年を跨いでの8連続ポールは、1988年〜1989年にアイルトン・セナが打ち立てた記録に並ぶ驚異的なものだ。そしてルクレールはイモラ、マイアミ以外でも毎戦のようにスピードトラップでフェルスタッペンに差をつけられていた。
また、ルクレールのチームメイトであるカルロス・サインツJr.のデータを見てみると、ルクレール対フェルスタッペンのデータと概ね同じような数値となっているが、2度だけルクレールと顕著に違いが出ているケースがあった。
それはマイアミとバーレーン。どちらのケースも、サインツJr.はアタックラップ開始時のスピードで2マイル前後の差をフェルスタッペンにつけられているにもかかわらず、最終的なトップスピードでは追い付き、追い越している。つまりパワーのピークという点ではレッドブルに対して分があるのだ。
もちろんこういったスピードトラップには、PUのパワー以外の要素も絡んでくる。例えばアタックまでにタイヤを作動温度領域に入れないと、最終コーナーの立ち上がりでのグリップが確保できず、そこからのストレートスピードに影響する。そこは前述の通り開幕当初から顕在化していたフェラーリの問題で、ルクレールもその点に苦しんでいることを認めていた。
また、オーストラリアやジェッダ、バーレーンなど、スタート/フィニッシュラインが比較的ストレートの中間付近にあるコースは、RB20が高効率のDRSシステムによって得ているアドバンテージが顕著に出るため、データの読み取りには注意が必要だ。当然、アタック時に前にマシンがいたかどうかも重要だ。そのため、スピードトラップだけで断じることもできない。
とはいえ、これらのデータを見るに、全体的なトップスピードでレッドブルが上回っているという傾向があるのは確かと言えるだろう。フェラーリは今後に向けてトラクションを向上させるべくソフトウェア面で可能な限りの変更をするようだが、いずれにせよ週末のモナコGPはエンジンパワーが鍵ではないサーキット。ルクレールにとっては相性の悪いホームコースで勝利を掴むチャンスと言える。
フェラーリがレッドブルに勝てないのは、エンジンパワーで劣っているから? “完敗”したイモラ戦を終えて考察
関連記事
あわせて読む
-
ルクレール、スペインGPでレッドブルの復調を予想。これからは四つ巴の優勝争いが見られる?
motorsport.com 日本版6/16(日)12:09
-
【途中経過】2024年WEC第4戦/第92回ル・マン24時間 決勝12時間後
オートスポーツweb6/16(日)11:10
-
フェラーリカスタマーの83号車が首位。トヨタ8号車が3番手……夜と共に雨が襲来|ル・マン24時間レース:6時間経過
motorsport.com 日本版6/16(日)5:47
-
【途中経過】2024年WEC第4戦/第92回ル・マン24時間 決勝6時間後
オートスポーツweb6/16(日)5:33
-
2度の雨で荒れ模様。フェラーリ、トヨタ、ポルシェが上位を形成/2024WEC第4戦ル・マン決勝6時間後
オートスポーツweb6/16(日)5:30
-
【F1】メルセデスの要請か?スーパーライセンスを18歳から17歳に引き下げ、育成選手アントネッリの早期デビュー前進
中日スポーツ6/16(日)5:05
-
序盤から緊迫の接近戦。首位50号車フェラーリにペナルティ/2024WEC第4戦ル・マン決勝1時間後
オートスポーツweb6/16(日)0:12
-
次世代マシンの軽量化、フェルスタッペンにとっては“お話にならない”目標? 「100kg減は少なくとも欲しい」
motorsport.com 日本版6/15(土)20:51
-
真逆のマシン特性でレッドブルに挑んだメルセデス。サインツ、ペレスがハマった難関ターン6【中野信治のF1分析/第9戦】
オートスポーツweb6/15(土)20:30
-
-
《追記あり》7号車トヨタがレクサスとの接触でマシン破損【タイム結果】2024年WEC第4戦ル・マン24時間 ウォームアップ
オートスポーツweb6/15(土)19:37
-
2号車キャデラックが降格/2024年WEC第4戦ル・マン24時間 スターティンググリッド
オートスポーツweb6/15(土)12:46
-
ちょっと気が早すぎる!? ル・マン出場を望むフェルスタッペン、WEC複数チームからの「接触あった」と明かす
motorsport.com 日本版6/15(土)10:10
-
FIAがスーパーライセンス規則を変更、17歳でF1参戦が可能に。注目されるアントネッリのF1プランへの影響
オートスポーツweb6/15(土)7:54
-
木村武史、レクサスで挑む6回目のル・マン24時間に自信あり「ひさびさに手ごたえがありますよ」
オートスポーツweb6/15(土)7:03
-
レッドブルF1代表がメルセデスの皮肉に反撃「我々はダウングレードで彼らのアップグレードに勝った」
オートスポーツweb6/15(土)7:00
-
【英国F1レポーターが角田裕毅を分析】角田を起用しなかったのは、レッドブルにとっては大きな損失……でもRBにとっては最大の利益だ!
motorsport.com 日本版6/14(金)18:36
-
【F1チーム代表の現場事情:マクラーレン】新人ボス、ステラの2年目の進化。ドライバーからの批判も真摯に受け止め
オートスポーツweb6/14(金)17:40
-
ポルシェが最後の最後に大逆転でポール獲得! キャデラック、フェラーリら及ばず|ル・マン24時間ハイパーポール
motorsport.com 日本版6/14(金)9:08
-
スポーツ アクセスランキング
-
1
緊急降板の山本由伸は上腕三頭筋の張り 球団発表 ブルペンで右腕気にする様子も
デイリースポーツ6/16(日)10:48
-
2
「敵をつくるのは嫌いなので…」 7勝目の今永昇太、米記者の質問に“絶妙返し”
Full-Count6/16(日)7:15
-
3
ブレイキングダウン公式レフェリー、鬼木貴典さんが死去 妻が報告 5月ステージ4の癌で余命2カ月告白 格闘技界追悼 朝倉海「僕らが勇気もらいました」
デイリースポーツ6/16(日)9:39
-
4
【父の日】慶大・清原正吾は父清原和博氏を想像もつかない呼び名で呼んでいる 父に寄せた直筆
日刊スポーツ6/16(日)8:08
-
5
山本由伸が2回無失点ながら緊急降板 中7日も右上腕張りのアクシデント、球速も伸びず
スポーツ報知6/16(日)10:37
-
6
古賀紗理那から夫へ「愛してるぞー!」の返事を「超期待してた」 無言で首振る圧に大反響「日本一推せる夫婦」
THE ANSWER6/16(日)5:13
-
7
女子バレー日本に顔面スパイク直撃 直後に咄嗟の気遣いで「ウルッ」「人柄の良さ」大反響のワンシーン【ネーションズリーグ】
THE ANSWER6/16(日)6:13
-
8
「挑発された」長谷部誠が衝撃告白! 本田圭佑が「性格悪い」と非難したDFと喧嘩した過去を明かす!「まだ相当若かった」
SOCCER DIGEST Web6/16(日)6:15
-
9
「奇跡を起こしたぞ!」世界1位・トルコに大逆転勝利を収めた中国女子バレーに地元メディアが熱狂!「ただ、日本が迫っている」と警戒も【ネーションズリーグ】
THE DIGEST6/16(日)4:55
-
10
バレー福岡会場で異例の光景 日本戦関係なしでも…選手は口々に感謝「キテクレテ、アリガトウ」
THE ANSWER6/16(日)5:43
スポーツ 新着ニュース
-
【東京3R・3歳未勝利】素質馬オオタニサーンが過去5年最速タイの1分24秒2で勝利 三浦皇成騎手「完勝です」
スポーツ報知6/16(日)12:24
-
大谷翔平の打席で球場オルガン奏者の粋な演出 あの大ヒットドラマのテーマソングが…
日刊スポーツ6/16(日)12:23
-
山本由伸緊急降板 ドジャースベンチに戦慄走る 投手コーチが慌ててロバーツ監督のもとへ→表情曇らせる
デイリースポーツ6/16(日)12:22
-
3打席快音なしの大谷翔平のかわりに?オオタニサーンが東京競馬場でホームラン 3戦目で待望の初勝利/3歳未勝利
東スポ競馬6/16(日)12:19
-
大谷翔平、4打席目四球で2戦連続出塁…山本由伸は右上腕張りで緊急降板
スポーツ報知6/16(日)12:19
-
【阪神】木浪聖也が出場選手登録抹消 前夜9回に背中に死球受ける
日刊スポーツ6/16(日)12:17
-
chay 8・10ロッテVSオリックス戦でライブ&始球式「熱い気持ちで」
スポニチアネックス6/16(日)12:16
-
戻ってきた大谷翔平が「なんか心配な表情」 ド軍ベンチのバタバタが物語る“緊急事態”
Full-Count6/16(日)12:16
-
山本由伸、異変は明らかだった… 2イニング緊急降板、4日前に首脳陣が緊急会談→急きょ先発変更していたが
中日スポーツ6/16(日)12:13
-
数々の記録を打ち立ててきたクレバーなドリブラー。藤野あおばは今、最も旬な選手だ【パリ五輪の選ばれし18人】
SOCCER DIGEST Web6/16(日)12:13
総合 アクセスランキング
-
1
生理周期を把握する義母、“肩もみ”をしてくる義父…妻たちを悩ませる「義父母からのセクハラ」の生々しい実態
オトナンサー6/16(日)8:10
-
2
寺尾聰と破局、結婚生活は6年で破綻、台湾では王貞治と並ぶ存在…ジュディ・オング(74)の“魅せる人生”
文春オンライン6/16(日)6:00
-
3
ロシア戦闘機がスウェーデン領空侵犯 NATO加盟後初
朝日新聞6/16(日)5:03
-
4
緊急降板の山本由伸は上腕三頭筋の張り 球団発表 ブルペンで右腕気にする様子も
デイリースポーツ6/16(日)10:48
-
5
『花咲舞が黙ってない』最終回 半沢直樹参戦の胸熱ラストに称賛続々「スカッとした」(ネタバレあり)
クランクイン!6/16(日)6:00
-
6
薬丸裕英 “干されて”熟した…「意地張っちゃいけない」意識変え「はなまる」で一躍朝の顔に
スポニチアネックス6/16(日)5:00
-
7
「敵をつくるのは嫌いなので…」 7勝目の今永昇太、米記者の質問に“絶妙返し”
Full-Count6/16(日)7:15
-
8
テレ朝「霜降りバラエティX」 6月いっぱいで放送終了 霜降り明星が番組内でサプライズ発表
スポニチアネックス6/16(日)3:19
-
9
【激白】「正直、今も衝動はある」25年にわたり“性加害”経験者が語る『日本版DBS』の希望と課題
読売テレビニュース6/16(日)8:00
-
10
ブレイキングダウン公式レフェリー、鬼木貴典さんが死去 妻が報告 5月ステージ4の癌で余命2カ月告白 格闘技界追悼 朝倉海「僕らが勇気もらいました」
デイリースポーツ6/16(日)9:39
東京 新着ニュース
東京 コラム・街ネタ
-
「エムバペより俺はイケメン(笑)ニンジャタートルズには見えないぜ」フランス代表FWテュラムが言ったワケ
Qoly6/16(日)12:00
-
「歩くのは難しい」1歳息子に言われた残酷な言葉 しかしその後、息子に奇跡が 小さい体で闘う息子とその家族に迫る
ほ・とせなNEWS6/16(日)11:30
-
元日本代表の前園真聖さん、中学にサッカー部がなかった話を明かす 「陸上部で県の大会とか出てたんですけど…」
Qoly6/16(日)11:30
-
ブラジル代表批判のロナウジーニョ、広告キャンペーンだったと認める 「あの発言はしていない」
Qoly6/16(日)10:45
-
極右政党RNに勝たせてはいけない…フランス代表FWテュラムが持論を訴える 「デンベレも…」
Qoly6/16(日)10:00
特集
記事検索
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
©2024motorsport.com Japan