日産の欧州法人は2024年4月17日、新型「キャシュカイ」を初公開しました。どのようなモデルなのでしょうか。そして日本導入の可能性はあるのでしょうか。考察します。

大幅刷新の新型「キャシュカイ」登場

 欧州で販売されている日産のクロスオーバー「キャシュカイ」が、4月に“新型”となりました。内容を見るところ、フルモデルチェンジではなく、内外装の変更と新機能の追加という、4年ぶりの大幅マイナーチェンジのようです。

 では、その“キャシュカイ”とは、どのようなクルマなのでしょうか。 

 歴史をさかのぼると、初代モデルは2007年に誕生。日本でも「デュアリス」の名前で発売されました。

 欧州ではキャシュカイ、北米では「ローグ」や「ローグ・スポーツ」の名前で発売されています。

 ミッドサイズのクロスオーバーであり、「エクストレイル」とプラットフォームを共有しています。

 現在のモデルは、2021年にフルモデルチェンジしたもので、1.3リッターのガソリン・エンジンのマイルドハイブリッドと、1.5リッターの3気筒VCターボ・エンジンを使うe-POWERハイブリッドという2つのパワートレインが用意されています。

 ここで、気になるのはプラットフォームなどを共有する「エクストレイル」との住み分けでしょう。

 まず言えるのはキャラクターの違いです。エクストレイルは、ボックス風のフォルムで、正統派のSUVというキャラクター。一方、キャシュカイはクーペ風のフォルムの都会派のクロスオーバーとなります。

 ライバルでいえば、トヨタの「RAV4」に対する「ハリアー」のような関係です。

 また、寸法も異なります。キャシュカイの寸法は、全長4425mm×全幅1835mm×1625mmでホイールベースが2665mm。エクストレイルと比べると、全幅は両車変わりませんが、ホイールベースでキャシュカイの方が短く、その分だけ全長も4660mmのエクストレイルより短くなっています。

 ちなみに、コンパクトSUVである「キックス」の全長は4290mmなので、キックスよりもキャシュカイの方が大きくなります。つまり、キャシュカイは、エクストレイルとキックスの間の寸法となります。

 キャラクターと寸法を鑑みれば、キャシュカイと、他の日産SUVとの間には、ちゃんと住み分けができているようです。ちなみに、欧州ではエクストレイルとキャシュカイの両方が販売されています。

 また、日本市場では、トヨタが正統派SUVのRAV4と、都会派クロスオーバーのハリアーを併売しています。

 つまりキャシュカイとエクストレイルは、キャラクターもサイズも異なります。ライバルであるトヨタも、同じような2つのモデルを販売しています。それを考えれば、日本で「キャシュカイ」が受け入れられる可能性は十分にあるのではないでしょうか。

 とはいえ、まったくブランニューの新型モデルの導入は意外に難しいものです。存在を周知するための広告の費用もかかりますし、パーツ供給などの目に見えない負担もあります。

 そして導入したからといって必ずヒットするわけでもありません。2020年に日産が新規導入したキックスは、2021年で年間販売ランキングが20位、2022年が28位、2023年が36位でした。ヒットしたとは、なかなか言いにくい数字です。

 そうした、コストとリスクを熟考した先に新規導入があるのです。予想以上に新規導入のハードルは高いのです。

しかも日産は、そもそも新規導入に慎重な会社です。2020年の「キックス」導入は、なんと10年ぶりのブランニューだったのです。

 最後に「Q」で始まるキャシュカイと言う名称は、日本では言いづらいかもしれません。それを回避するために「ローグ・スポーツ」なり、「デュアリス」などの違う名称を使う可能性もあるかもしれません。

 とはいえ、一人の自動車ファンとしては、販売車種が増えるのは嬉しいもの。なんとか日産が決断してくれることを祈るばかりです。