トヨタのミドルクラスミニバン「ノア/ヴォクシー」は、2023年度(2023年4月から2024年3月まで)に2モデル合わせて16万8007台を売った超・大ヒットモデルです。同年度の「シエンタ」(12万2706台)よりも多くの人たちから支持を集める理由について、使い勝手の面から探ってみます。

めちゃ売れ「ノア/ヴォク」のスゴさを「使い勝手」から探ってみた!

 日本を代表するミドルクラスミニバンとして、大人気モデルとなっているトヨタ「ノア/ヴォクシー」。2022年1月のフルモデルチェンジでおよそ20年ぶりくらいにプラットフォームを一新したり、先進のパワートレインを搭載したりと、走りや乗り心地が抜群によくなっていますが、やはりミニバンを選ぶときに気になるのは室内の使いやすさ、便利さでしょう。

 そこで今回は、試乗記ならぬ“使用記”ということで、ノア/ヴォクシーを実際に使ってみてどうなのかについて、筆者(カーライフ・ジャーナリスト まるも亜希子)が徹底的にレポートします。

 自販連(日本自動車販売協会連合会)の調べによると、ノア/ヴォクシー兄弟は2023年度(2023年4月から2024年3月まで)に2モデル合わせて16万8007台を販売しており、ミニバンのなかでももっとも売れているモデルといって良いでしょう。

 そのなかで今回試したのは、「ハイブリッド S-Z」(FF/消費税込み価格:374万円)に「快適利便パッケージ(High)」というメーカーパッケージオプション(14万8500円高)が装着されたヴォクシー。

 3列シート7人乗りで、2列目がキャプテンシートとなるタイプです。

 快適利便パッケージ(High)は「ハンズフリーデュアルパワースライドドア」や「パワーバックドア」、「ナノイーX」、「ステアリングヒーター」、2列目キャプテンシートのシートヒーターやオットマンなどがセットされています。

 まず1列目シートから座ってみると、先代より低くなった着座位置で乗用車感がアップしており、視界はAピラーが細くなった恩恵もあって広々としています。

 ベースグレードの「X」以外には標準装備となるディスプレイオーディオがインパネの中央に置かれ、そこからのびるセンターコンソールの運転席側にシフトレバーやスイッチなどの操作系がまとまって配置され、助手席側にはスマートフォンが置けるトレイがあります。

 これがアイディアもので、トレイがパカっと取り外しできるようになっており、その下にUSBポートが2個あって小物ポケットとして使えます。

 しかもトレイには充電用コードが出せる穴もあるので、USBにコードを挿した状態でトレイに置いておくことができるのもスマート。

 ちょっと心配なのは、取り外したトレイをどこかに置いているうちに紛失しそうだな……というところでしょうか。

 そして助手席の前には深さのあるオープントレイがあり、お財布や手帳などはもちろん化粧ポーチやエコバッグといったものまで置きやすいスペース。

 カップホルダーは左右の端に1つずつあり、飲み物を置かない時は小物入れとしても使えます。

 グローブボックスは一般的な大きさですが、ドアポケットが大きくて太めのペットボトルも入り、そのほかにサングラスケースなどの小物も収納できました。

 また、運転席と助手席の間にはフロア近くに小さめのポーチが置ける程度の収納トレイと、カップホルダーが2つあり、センターアームレストの下も収納スペースになっています。

 ボックスティッシュなどの大きなものをどこに置こうかな、とちょっと悩みそうですが、収納スペースそのものは多彩にあると思います。

2列目シート周りの充実ぶりに圧倒されまくり!

 続いて2列目シートに座ってみました。

 座面も背もたれもたっぷりサイズで、アルファードの2列目ほどではないとしても、ミドルクラスではゆったりと座れるキャプテンシートだと感じます。

 標準装備でもストレート超ロングスライドなので、最後端にしたら足元スペースがガラーンとして前席に届かないほど遠い位置。

 リクライニングができて、両側にアームレストがついており、そのままでもリラックスできますが、パッケージオプションで装備されているのが、足をのばすことができる「オットマン」。

 座面と真っ平になるほどは上がらないのですが、それでもふくらはぎが支えられてラク。さらにアームレストも角度調整付きに変更となるので、これは贅沢です。

 寒い時なら、天井に後席用のオートエアコンスイッチがついていて、さらにシートヒーターも使えてホカホカに。

 最近は子どもも寒がりだったり、チャイルドシートを装着したら付き添いでパパかママが2列目シートに座ることも多いので、後席にシートヒーターがついているのは嬉しいところです。

 そして、キャプテンシートの内側に備わる折りたたみ式の大型サイドテーブルを引き出せば、カップホルダーが4個もついており、USBもあってスマホやタブレットなどが置けるトレイとして使えるのが便利でした。

 座りながら手を伸ばしてちょうど届きやすい高さになるところもさすがです。

 念のためですが、3列目シートにも座ってみました。

 今回、機能向上のために薄型化されており、いかにも座面が硬そうなので心配でしたが、とりあえず座り心地はそんなに硬いほどではなく、走行中の不快な突き上げなども多くありません。

 でもここは3人がけ。中央に座る人はちょうど座面の境い目に当たるため、ちょっとゴワゴワした違和感を覚えます。

 でも左側に2個、右側に1個と計3人分のカップホルダーも備わり、2列目のサイドテーブルにも手を伸ばそうと思えば届くので、それほど窮屈な感じはしませんでした。

足をかざすと開く「ハンズフリーパワースライドドア」がめちゃ便利!

 次にチェックしたのは乗降性です。

 まずパワースライドドアはオプションでハンズフリータイプになっており、子どもを抱えたりして両手が塞がっていても、足をかざすだけで自動で開け閉めが可能となっています。

 正しくは、前ドアの後端あたりに足をかざすと反応するので、ここはお間違えなきよう。

 開発者によると、スライドドアは手前にせり出してひらくので危険を回避するのと、ドアを開けてチャイルドシートに子どもを載せたりしている際などに誤作動しないため、ここはあえてそうしているそう。

 ともあれせっかくの便利装備ですから、間違えないようにしたいところです。

 ステップはそのままでも大人なら高いとは感じないですが、小さな子どもにはちょっと高め。

 でもオプションで「ユニバーサルステップ」がついており、スライドドアが開くと同時にシャッとサイドステップがせり出してきます。

 こうすると地上からの高さが20cmのところに足がかけられるので、子どもやお年寄りでも乗り降りがスムーズに。

 低い位置からつかむことができるロングアシストグリップもあって、子どもが握る低い位置は小さな手に合わせて細くなっているという配慮に感心しました。

 スライドドアが閉まり切るまで待たなくても車両から離れることができる、予約ロック機能は全車標準装備という太っ腹です。

 続いてウォークスルー性能をチェック。

 車内のウォークスルーは、2列目と3列目の移動とその左右が可能。シートが立派な分、幅はタイトですが大人でもなんとか通り抜けることはできました。

 運転席に行くにはセンターコンソールを乗り越えなければならないですが、行けないことはない、という感じです。

「パワーバックドア」の操作が横からできて便利!

 そして最後はラゲッジを見てみましょう。

 まずバックゲートの電動開閉操作がボディの横側に備わるスイッチでできるようになっており、好きな角度で止められることに感心します。

 バックゲートの真後ろに立って開けるのではなく、横に立ってスイッチ操作をするのは新感覚で、これなら後ろが壁のような狭い場所でも、少しだけ開けて荷物を出し入れすることができます。

 筆者はよくラゲッジのフロアに子どもを寝かせてオムツ替えなどをしていたので、そういう時の目隠しカーテン代わりにもなっていいなと感じました。

 ちなみにパワーバックドアでないタイプでも、途中の位置に保持できるフリーストップ機構が備わっています。

 さらに、3列目の跳ね上げ格納操作が片手でワンタッチに完了することにビックリ。

 一般的には背もたれを倒して、重い座面を引っ張り上げて、最後にストラップで固定するという重労働だったのに、軽いどころか左右同時にだってできるなんて夢のよう。

 これなら毎回の操作でもまったくストレスがありません。

 復帰の操作も、レバーを引くだけでカチッとフロアに固定されるところまで完了しました。

 ラゲッジは3列目使用時でも、普段の買い物袋くらいなら十分に積めるスペースはあり、ラゲッジアンダーボックスも細々した物を入れておくのにピッタリのスペースです。

 3列目を跳ね上げれば、張り出しが小さいので自転車など大きな荷物も積みやすいと思います。

 2列目シートを最前端にスライドすれば、フラットなフロアが広がりますが、車中泊にはちょっと大人は奥行きが足りなそうかなという印象でした。

 着替えや、座ってくつろぐスペースとしては十分に活躍すると思います。

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 こうしてノア/ヴォクシーを使ってみると、自分が快適であることだけでなく、誰かのために乗ることが多いのがミニバンなのだということを再認識。思いやりとおもてなし機能が満載のノア/ヴォクシーでした。