ダンディー鷹山とセクシー大下の“あぶ刑事”コンビが8年ぶりにスクリーンへ戻って来る『帰ってきた あぶない刑事』が5月24日より公開中。「あぶない刑事」のテレビドラマ第1シリーズが最初に放送されたのは1986年にさかのぼる。

■テレビシリーズから劇場版へと38年にわたって続いてきた「あぶない刑事」シリーズ

アクションとサスペンスを基調に横浜港署の刑事、鷹山敏樹(タカ)と大下勇次(ユージ)コンビの活躍を描く「あぶない刑事」。およそ刑事とは思えないファッショナブルなダブルのスーツを身にまとい、女性を口説き、コミカルな掛け合いをしながらどんな危機も乗り越えていくタカとユージが魅力的で、たちまち人気を獲得。

1987年に早くも映画版第1作『あぶない刑事』が公開され、大ヒットしたことから、88年には映画版第2作『またまたあぶない刑事』とテレビの第2シリーズ「もっとあぶない刑事」がお目見え。映画版第3作『もっともあぶない刑事』(89)も製作されるなど、1980年代後半の刑事ドラマを代表する作品として話題をさらった。

1990年代に入ると、第4作『あぶない刑事リターンズ』(96)を皮切りに、映画の前日談を描くテレビスペシャルと連動した第5作『あぶない刑事 フォーエバーTHE MOVIE』(98)、第6作『まだまだあぶない刑事』(05)、第7作『さらば あぶない刑事』(16)と映画版がシリーズを引き継ぎ、今回の第8作まで38年にわたって作品は続いてきた。

■舘ひろしと柴田恭兵、仲村トオル、浅野温子らによって作り上げられた笑いとアクションが満載の“あぶ刑事”ワールド

その魅力の中心はタカとユージを演じた舘ひろしと柴田恭兵にあって、男っぽくてどこか危険な匂いも漂う舘と、疾走する走りが軽快で人間的な優しさをにじませる柴田の、互いに被らない個性が相乗効果を上げ、独特のバディ感を生みだした。ハーレーダビッドソンに乗りながらショットガンを撃つタカに代表される、派手でスタイリッシュなアクションシーンも作品の見どころ。

また、タカとユージにこき使われる新米刑事の町田透役に、第1シリーズ出演時には前年の映画『ビー・バップ・ハイスクール』(85)でデビューしたばかりの仲村トオルが起用され、主役2人に付きまとう警察官の真山薫役で、当時はファッションリーダー的存在だった浅野温子も出演。この4人が中心となって、笑いとアクションが満載された“あぶ刑事”ワールドが形成されてきたのである。


■横浜に舞い戻ったタカ&ユージの前に娘が現れる!?

最新作では『さらば あぶない刑事』で横浜港署の刑事を定年退職し、ニュージーランドへ渡って探偵事務所を開設したタカとユージ。ところが、向こうの警官と問題を起こして探偵免許を剝奪され、古巣の横浜へ戻って探偵事務所を再開することに。ここに行方不明になった母親を探してほしいとやって来た依頼人の永峰彩夏(土屋太鳳)が、タカとユージの娘かもしれないとわかったことから、騒動が持ち上がっていく。

タカやユージを追いかけてニュージーランドへ行ったはずの薫や、いまも横浜港署の捜査課長をしている町田など、レギュラーキャラはもちろん健在。ほかにも吉瀬美智子や岸谷五朗、早乙女太一、西野七瀬がゲストとして顔をそろえた豪華なキャストになっている。

■ハーレーに乗ってショットガンを撃つタカと横浜の街を全力疾走するユージ

これまでの映画版では傭兵、麻薬や拳銃の密輸犯、テロリストなどを相手に、タカとユージがテレビドラマよりもスケールアップしたアクションを披露したが、今回は2人がすでに刑事ではないのがポイント。あくまで探偵として彩夏の母親探しをしながら、ある事件に関わっていく。それでは彼らのガンアクションは観られないのか!?と思った方はご安心を。タイトル通り“あぶない刑事”として、2人は拳銃を持つのである。

すでに70代を迎えた舘と柴田だが、タカはハーレーに乗ってショットガンを撃つし、ユージは横浜の街を全力疾走する。衰えを知らない彼らのヒーローぶりに喝采を送るファンは多いだろう。

■歳を重ねたからこそのタカ&ユージの新たな魅力

一方で、自分の娘かもしれない彩夏と少し距離を取って接するタカと、彼女に寄り添って話を聞くユージの、“父親”としてのアプローチの違いがおもしろい。かつてのエネルギッシュな雰囲気に、人生の年輪を感じさせる大人の男性としての魅力が今回の2人には備わっていて、舘と柴田の表現者として厚みが増している。ほかにも登場シーンからインパクト絶大な浅野や、いまや重鎮の役を振られることが多い仲村が、ここではタカとユージに頭が上がらない後輩の町田を、楽しそうに演じているのがうれしい。

また、昔からのファンは、テレビドラマ第1シリーズから出演しているベンガル(田中文男役)が、刑事を辞めて情報屋として登場し、同じく最初から出演している長谷部香苗が刑事課課長の秘書、山路瞳役で出ているのにも注目。長谷部は、シリーズを立ち上げた当初のメイン監督を務めた長谷部安春の娘だが、今回の映画を撮った原廣利監督も、第1シリーズで監督に昇進した原隆仁監督の息子。父から子へ受け継がれた作品のエッセンスが端々に感じられる、見応えのある作品になっている。


最近はNetflixで配信された鈴木亮平主演の『シティーハンター』が話題になったが、その原作漫画が発表されたのは1985〜91年。86年に誕生した「あぶない刑事」もそうだが、コンプライアンスなどの締め付けが厳しくなかった80年代に創造された、アクションヒーローの痛快な活躍を待望する機運が再び高まっている気がする。そういう意味でも今回の作品は、新たな“あぶ刑事”ブームの第一歩になるかもしれない。

文/金澤誠