能登半島地震の被災地などでは、アーティストがライブを開き歌声を、エールを送っています。4月に金沢を訪れた「かりゆし58」のボーカル・前川真悟さんは飾らない思いで音楽を届け、笑顔になる時間を石川の人たちと分かち合いました。

沖縄を代表するロックバンド、「かりゆし58」のボーカル・前川真悟さん。

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母親への感謝を歌にした代表曲「アンマー」などが、世代を超えて愛されています。

前川さんは、石川県を拠点に活動する友人のミュージシャン・エイトMANとともに金沢でライブを開催することを企画しました。

かりゆし58・前川真悟さん「音楽に生きる人間はこんなときできることはないんじゃないかと思うぐらい」

前川さんとエイトMANの2人は2023年8月、石川県宝達志水町でのライブ出演で意気投合し、気の合う仲間に。

1月1日の地震直後、前川さんはエイトMANに電話をしました。

かりゆし58・前川真悟さん「友達だからですよね。友達のまちの出来事として『おい大丈夫かよ』という電話だし。うちの奥さんも宮城出身だから」

かりゆし58・前川真悟さんとエイトMAN

東日本大震災では、被災地の人たちの前向きさに心を打たれたという前川さん。

「友達が住む石川でもなにかをしたい」とエイトMANに呼びかけて企画したのが、金沢でのチャリティーライブです。

かりゆし58・前川真悟さん「いっしょにエイトMANくんと仲間たちと石川から生まれるなにかが育っていけるような、土台の1個になればいいな」

金沢でのライブの費用は、前川さんと沖縄のアーティストたちが全国各地でイベントを開き、カンパで集めました。

ライブには、石川県内に住む150人を無料で招待しました。

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珠洲市から金沢市に避難している人「いま金沢に逃げてきて、子ども4人です」
輪島市から訪れた人「いまはやっと水が復活した。楽しく音楽を聴きながらごはんを食べられたらな」

かりゆし58・前川真悟さん「誤解されたくないな。いい人とか、やってる動きが素晴らしいとか言われたら恥ずかしくてやれなくなるんで。もうきょう酔っぱらって遊んでくれたら、それが一番自慢」

「人は食が満たされることが基本」という前川さんの思いから、食べ物や飲み物もすべて無料でふるまわれます。

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みんながリラックスしたところで、ライブがスタート。前川さんのトークも軽快に進みます。

かりゆし58・前川真悟さん「遊び場へお帰りなさいませみなさま。きょうはみなさまと実験をしたい。」

「食べて飲んでいつもより大きな音で音楽を楽しんだら、人は幸せな気分になれるはず」そんな実験、粋な呼びかけに、会場はスタートから大盛り上がり。

かりゆし58・前川真悟さん「本当に楽しい瞬間にはお金なんかいらないよ」

続いて能登に寄り添うかのように歌ったのは、愛する人との別れを歌にした「電照菊」。

電照菊の光よ この暗闇を照らしてくれないか
大切な人がいつか 夜道に迷うことなく帰りつけるように
(「電照菊」歌詞の一部)

かりゆし58・前川真悟さん「人の痛みとか悲しみを理解するというのは、寂しいけれどそれはできないことだと思う。きょうも被災地に来たというよりかは友達の地元にごはんとBGMを届けに来た感じ。“楽しいうれしい”は分かち合いがしやすいから」

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ライブに訪れた人「最初から『電照菊』が一番聴きたかった歌だったので感極まって」「最高!」「気持ちいい」

祖父母が珠洲市出身のエイトMANは、これまでボランティア活動や被災地の若者たちをライブに招待するなど、能登を応援してきました。金沢のライブでは、エイトMANもお客さんとめいいっぱい楽しみます。

エイトMAN「きょうは強制的って言葉は一切ない。まじめな言葉も一切ない。音に揺られながら」

エイトMANも楽しく熱唱

「バンド活動では、人とのつながりを強く感じる」と話すエイトMAN。弟や義理の妹もステージで演奏します。

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かりゆし58・前川真悟さん「最高ですよ。音楽性も最高だけどそれを兄弟家族で音楽をやっているというのが、愛があって絆があって、いちばん僕が理想だと思う形。これがエイトMANのコアなんだなって、尊敬している音楽家の一人です。尊敬している人間です」

エイトMAN「うれしいですね。僕話すことないですわ」

珠洲市から訪れた人「地震があったからこそ出会えたみなさんなので、地震も前向きにとらえて」「こういう企画をしていただいたこと本当に感謝しています」

遅れる復旧、険しい道のり。そんな中で自分ができることは、歌うこと。

そして…震災以降、多くの人たちが改めて強く感じたのが「家族の絆」です。

前川さんもその思いは同じです。金沢でのライブの前のリハーサル、前川さんの一人息子・幸之真(ゆきのしん)さんも来ていました。

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かりゆし58・前川真悟さん「(息子は)一番自分を押し上げてくれる存在だけど、一番そことの時間を犠牲にするなりわいをしているので。支えてもらっているのに返せていない。もどかしくもいとおしい存在かな」

幸之真(さんは、小学校ではブラスバンド部に所属しています。夢は「お父さんといっしょにかりゆし58をやること」

息子の夢を金沢で。ライブ本番、ドラムの幸之真(ゆきのしん)さんをボーカルの父が紹介します。

そして、前川さんの母・正枝(まさえ)さんへの思いを歌にした名曲「アンマー」を愛する息子と一緒に披露します。

かりゆし58・前川真悟さん「(金沢は)息子にとって初ライブの町だし、うちの家族にとっても、被災者ではなく石川の友達がいるまち。友達に会いに行くっていう1本目の架け橋ができたので、それが僕にとっては最高にうれしいお土産です」

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アンマーよ アナタは私の
全てを許し 全てを信じ全てを包み込んで
惜しみもせずに何もかもを
私の上に注ぎ続けてきたのに
アンマーよ 私はそれでも
気付かずに 思いのまま過ごしてきたのでした
(「アンマー」歌詞の一部)

かりゆし58・前川真悟さん(ライブでのトーク)「おかげさまで初めて息子とセッションしています。シンプルな話、自分の横で好きな人、恋人、奥さんが笑っていたらたいていの男は幸せです。自分の隣で母ちゃんが笑っていたらだいたいの子どもは幸せです。女の人が笑っていたら世界は良くなります。きょうも女の人が笑っていられるひと時でありますように」

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金沢市から訪れた人「お母さんの家が能登で家も全壊に近くなって。1分1秒わからないじゃないですか。だから本当にきょううれしかったです。久々に笑いました」
珠洲市から訪れた人「子どもたちの楽しんでいる顔が一番の楽しみでした。今から珠洲に帰ります。地震も忘れるくらいのいい日になりました」

エイトMAN「もう最高の2文字しかないです」

かりゆし58・前川真悟さん「俺たちきょうやったことって好きなことやってるだけさ。ただただ音楽をこういうやり方したらこういうことが生まれたっていう。すべてのミュージシャンとすべての音楽好きと共有して、こんなのが増えたらいいね」

かざらない2人が能登へ、あたたかなエールを送ります。

かりゆし58・前川真悟さん「あなたのまちは最高です。あなたのまちが大好きです。あなたとまた会える日を心から楽しみにしています。石川に心から愛を込めて」

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