大相撲夏場所は、新小結の大の里がデビューから7場所目と史上最速で初優勝を果たしました。1年前の春には、有望な金の卵として注目を集めていた存在だった大の里。アマチュア時代を振り返ります。

大の里の本名は中村泰輝(なかむら だいき)。石川県津幡町出身で日本体育大学を2023年の春に卒業しました。中村選手は当時は193センチ、175キロの堂々とした体格でした。

※記事は、2023年3月、角界デビューを2か月後に控えた大学卒業前での取材をもとにしています。

中村泰輝選手「お相撲さんはアマチュア相撲と違ってチヤホヤされることが多いので、天狗にならないで常に「おかげさま」という気持ちで頑張るところがどれだけ自分を保てるか」

角界入りへの心構えをこう語る中村選手。その目線は2か月先です。

地元津幡町で小学1年生から相撲を始めましたが、「一から打ちこみたい」と中学、高校は親もとを離れ新潟県で過ごしました。

突き押し相撲を武器に、全国大会の常連校、海洋高校に進学後は、高校相撲金沢大会で卯辰山の土俵にも上がりました。

高校相撲金沢大会(2018年) 卯辰山の土俵にも上がる

日本体育大学に進学後は、突き押しにさらに磨きがかかり中村選手の相撲は一気に花開きます。

大学3年生、4年生の時に2年連続で全日本相撲選手権で優勝し、アマチュア横綱の称号を手にします。

このアマチュア横綱、穴水町出身で日本大学相撲部のキャプテンを務めた遠藤関も大学4年生の時に獲得しています。

日大時代の遠藤関(2013年) 4年時アマ横綱に

2022年12月の全日本相撲選手権を最後に実戦から離れている中村選手は、大学の稽古場で今調整を続けています。

中村泰輝選手「(この2か月)試合が完全に終わってちょっと落ち着いて少しの間ちょっとした引退ライフを楽しめたかなと思う。ちょっとは息抜きして同級生とお酒飲んだりおいしいものを食べに行ったり」

稽古場を案内する中村選手「普通じゃない日体大は。土俵が3面あって全部使っている。部員も(46人で)多いので日本一の好環境かな」

大学相撲で大活躍することができた理由のひとつに、中村選手は新入生の時の環境があったと話します。

中村泰輝選手「僕が1年生の時は先輩から逃れる憩いの場は学校。ごはん食べ終わって学校閉まるのが午後11時。(寮の)門限が午後11時。学校にみんな逃げてきてトレーニングをガンガンやって風呂に浸かって11時ギリギリに道場に帰って寝るのが日課。楽しさもありながら自分の稽古、トレーニングもできた。それがいかせたかな」

MRO

5月の夏場所でのデビューを明言している中村選手に、大相撲の世界に入るにあたってちょっと気になる疑問をぶつけてみました。

その① しこ名問題

力士になると名乗る「しこ名」ですが、重複することは認められていません。

これは親方の名前、年寄名称も含めてで、相撲協会の中では「中村親方」がいるため、デビューしてから本名で名乗るわけにはいきません。

ちなみに、金沢市出身の人気力士・炎鵬関も本名は中村さんなので、初土俵から炎鵬の四股名です。

高校時代の炎鵬(2012年) 本名は中村友哉

中村泰輝選手「石川県の力士は本名の方多い。本名力士でいきたいなと思いますし、中村はいけないですけど「泰輝」とかでいきたい願望もあるが。どうなるかわからない」

その② 入門前だけど髪切った?

中村選手の髪型、きちっと整えられています。

力士の象徴でもあるマゲを結うには、少しでも伸ばしておいた方がいいのではないかとも思えるのですが…

中村泰輝選手「伸ばしていたが、卒業式があるのでぼさぼさの状態だったので、監督に「切ってこい」と言われて。最後の床屋で行ってきました。最後で卒業式もあるので「派手過ぎずお願いします」」

アマチュア横綱などの実績があるため、中村選手はデビューすると、幕下10枚目格と呼ばれる地位からスタートです。

いきなり幕下で全勝優勝すれば、その次のカテゴリーで関取とよばれる「十両」に一気に昇進することが可能とされています。

遠藤関と同じか、それ以上の期待を受けてのデビューとなる中村選手。

どこの相撲部屋に所属するかが非常に気になるところです。

中村泰輝選手「腹は決めている。しっかりと監督と相談して公表していきたい。卒業式が3月15日、3月12日から春場所で(卒業式後)大阪場所にも行く部屋に帯同したい」

いよいよ本場所の土俵へ、新たな石川出身力士がどんな相撲で時代を作るのか、注目です。

中村泰輝選手「2か月短い時間だが、5月のデビューに間に合うようにがんばりたい。ひと場所で十両に上がるとかではなくてしっかり1日でも早く関取十両以上、上を目指してがんばりたい。修行してがんばります」