いすゞ自動車は14日、2027年3月期に売上高4兆円を目指すと発表した。24年3月期比で18・1%増となる。公表済みの中期経営計画で、31年3月期までに計2兆6000億円を投じ売上高を同77・2%増の6兆円に引き上げる目標を掲げており、その達成の足がかりとする。足元はタイをはじめとする主力市場の低迷や、為替の円安など不透明な事業環境にある。電動化や自動運転といった新技術への対応も課題となる中、目標達成に向けたロードマップを示し着実な成長につなげる。

いすゞの売上高と営業利益

27年3月期の営業利益は24年3月期比22・8%増の3600億円、営業利益率は同0・3ポイント増の9・0%に目標を定めた。自己資本利益率(ROE)は同2・3ポイント増の15%を目指す。

国内の商用車(CV)販売は、運転手不足解消の一助として発売する普通免許で運転可能な小型トラック「エルフミオ」などの新型車が寄与。子会社のUDトラックスとの商品相互補完なども進め同37・0%増の10万台を目指す。海外CV販売は同10・2%増の26万台を計画。アフターサービス重視のビジネスモデルを推進しアジアなどの需要を取り込む。

一方、ピックアップトラック(LCV)は同0・8%増の36万台と微増にとどまる。主力のタイ市場で金融引き締め政策によりローンが組みにくくなり、足元の需要は「旺盛な時の半分以下に落ち込んだ」(南真介社長)状況にある。タイ向けは25年3月期の後半から緩やかな回復を見込むが、LCV全体として27年3月期の需要は24年3月期と同レベルと想定した。

南社長は今回設定した27年3月期の目標について「既存の商品や事業体制の延長線上で達成できる」と自信を見せる。今後3年間は生産・販売拠点、サービスインフラなど既存事業強化の投資を重視する。31年3月期にはCV、LCVの新車販売で合計年85万台以上を目指し、世界で現状比約2割増となる100万台の生産能力を整える方針だ。

一方で「(31年3月期の売上高目標である)6兆円には既存事業だけでは届かない」(同)とも認識。新たな収益源確保のため、31年3月期までの累計でイノベーションに1兆円を投じる。

27年3月期の投資額は研究開発費なども含め3200億円を計画。28年3月期―31年3月期の投資額も年平均で同規模を想定しているが、31年3月期に向けてイノベーション投資に比重を移す。自動運転、コネクテッドなどの技術を用いた新事業を創出し、30年代に売上高1兆円規模に育てる方針だ。

25年3月期連結業績予想は売上高で前期比1・1%減、営業利益で同11・3%減と減収減益を見込むが、南社長は「一時的な要因によるもの。成長シナリオに揺るぎはない」と語る。成長に向けた取り組みを着実に進めて経営基盤を盤石にし、世界で勝つ企業を目指す。


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