この時期は、就職や転職で新たなスタートを切っている人も多いかもしれない。街には初々しい新入社員の姿が目立つが、X(旧Twitter)では「入社したばかりだが辞めてきた」「24卒ですが退職しました」などという内容の投稿も見かける。「退職代行」がトレンドにもあがっていた。
 そこで今回は、すぐに辞めた経験のある人たちに話を聞いてみた。

◆大学時代からバイトで月収40万円

 神奈川県で専業主婦をしている小川道子さん(29歳・仮名)は「いつも4月になると就職してすぐ辞めたことを思い出します」と話す。

 現在は5歳になる息子を育てながら「2人目の妊活中です!」と、充実している様子だが、結婚するまでは「すごくいい加減に生きていました」と苦笑する。

「大学在学中からキャバクラでバイトをしていました。そこまで売れっ子じゃなかったけど、週に2〜3回出れば、月40万円は稼げていたから調子に乗っていました」

 本来は就職を機に辞める予定だったというが——。

「就活が早く終わったので、最後にキャバで荒稼ぎしてから辞めよう!と思っていたんです。しかし、店にも『週末だけでもきてよ!』『週1出るだけでも月10万円はいくんだからもったいないよ』と説得されちゃって。辞めるのを辞めちゃったんです」

◆大手企業でバリキャリを目指すつもりが…

 小川さんの就職先は大手企業。週末キャバ嬢を続けながらもキャリアウーマンを目指すつもりだった。

「まぁ、とにかく仕事がつまらなくてつまらなくて。先輩に『頑張ったら30代には年収700万だよ』と教えてもらったんですが、少なくて絶望しました。今から8年頑張っても良くて年収700万って、あんまり夢がないなあって……」

 完全にキャバクラのバイトで金銭感覚が狂ってしまっていた道子さんは、この後さらに絶望することとなる。

「ほとんどが職場恋愛からの結婚か、もしくは同業他社との結婚ばかり。こっそり先輩が『30歳をこえて未婚のままだと、この会社はいづらいよ』と教えてくれました。あ〜、この職場にいたら、“人生の天井”がすぐ見えちゃうなあと萎えました」

 道子さんの息抜きは週末のキャバ出勤になり、この二重生活の期間は「売上も異常に良かった」と話す。

「だったらもうキャバ1本で稼いで、何か自分で事業でもしようかな!と思い立って、辞表を提出しました」

 上司や同期たちには引き止められたというが、なびかなかったそうだ。そして念願のキャバ嬢を専業にしてみた道子さんだったが、思わぬ結果に。

「売上がめっちゃ落ちたんです。週5出勤したから月収としては上がったけど、週1出勤の時の方がお客様の単価は高かったので効率が良かったんですよ」

 道子さんの客は、「現役女子大生」や「現役OL」だったことに付加価値を感じていたようで、専業キャバ嬢になった途端に冷たくなったという。

「お店はそこまで高級店じゃないから、お客さんはプロキャバ嬢を求めていなかったのかもしれません(苦笑)」

◆すぐに辞めて後悔

疲れきった主婦 その後は起業することもなく、マッチングアプリで出会った現在の旦那と結婚した。そして妊娠、出産、現在に至るわけだが、会社をすぐに辞めてしまったことを後悔しているようだ。

「結婚してからドラッグストアでバイトしていましたが、妊娠がわかって辞めました。キャバで微々たる貯金はできましたが、もしもあの会社を辞めていなければ、産休も育休も取れたんだな……と思うと、バカだったなあってしみじみ思います。

 あと、職場恋愛&結婚は夢がない、“人生の天井”が見えちゃうなんて思っていたけど、今の旦那の年収は500万円ぐらいなんです。あのまま辞めないで働いていたら私が旦那より稼いでいたかもしれないし、もう少し年収の高い人と結婚できていたかもしれない……と、たまに考えてしまいます」

◆「10年前に戻りたい」

 東京都在住で不動産屋勤務の増岡幸助さん(32歳・仮名)も「できることなら10年前に戻りたい」という。

「僕は大学を卒業して、ある会社の営業事務として就職しました。初年度の年収は300万台。僕的にはそれでぜんぜん満足していたんですが、卒業後のサークルの飲み会で同級生たちの年収を聞いたら、嫌になってしまったんです」

 彼らは不動産関係の営業をやっていて、「月収80万円をこえていると聞いた」そうだ。

「話を聞いてみると、固定給が当時の僕と同じくらいの給料だけど、インセンティブがすごい。ノルマはあるけど、ほとんどの人がこなせると言われて、翌週そいつの紹介で面接に行きました」

 ものすごい行動力。その甲斐あってか面接は合格。すぐに転職したという。しかし、その結果……。

◆転職先はブラック企業

男性たち「この時点で気がつくべきだった。さくっと転職させてくれる企業って、まともじゃない。実際に超ブラック企業でノルマはキツいし、不動産が売れてもインセンティブもぜんぜん少ない。同期は話を盛っていたんです。ただ、人を紹介で入社させて、一定期間働くと大きなバックが入るというのはありました」

 結局、入社して3ヶ月で体を壊して退職。精神的にもツラくなり、実家で1年療養したそうだ。現在も不動産業界で働いているが、「今もしんどい」と嘆く。

「考えても仕方がないけど、うまい話に乗らないで、あのまま働いていたらどれだけ楽だったか……って、今でも思います」

 現役グラドル兼ライターの筆者(吉沢さりぃ)は、そもそも就職したことがない。もしも普通に新卒で入社していたら「満員電車きつ……」「やっぱり髪の毛染めたい」あたりの理由で間違いなく4月に辞めていたと思う。

<取材・文/吉沢さりぃ>



【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。『bizSPA!フレッシュ』『BLOGOS』などでも執筆。X(旧Twitter):@sally_y0720